
「あたらしい日常」
「ドンッ」
突然、ドアを強く叩かれた。
暗い自室で、机に突っ伏して息を殺す。
「勝手に外出したら花瓶で殴るって伝えてたよな」
扉の前に立つ義父の罵声が聞こえる。
カーテンから明かりが差し込み、両手を見る。
頭皮を掻き毟る癖が原因なのか、
爪の間が赤黒くなっていた。
CDプレーヤーの電源を入れる。
罵声は止まず、ベッドで作ったバリケードを抉じ開けようと、ドアノブが錆びた音を立てながらガチャガチャと激しく音を立てながら動いている。
「近所に変な目で見られちゃうからやめて」
母親が義父に泣き縋る声が聞こえた。
義父が激昂し、ゴンっと鈍い音が鳴る。
ギャーという母親の金切り声が家中に響いた。
CDの音量を最大にする。
音楽しか聞こえない。