俺独自のゲームワールド[俺独ゲー]2-6
「うぇっ!?殺戮の魔人エルガゴームに襲われたけど時空の魔人に助けられた!?」
ケイゴ(キースも)はハマリングの街にある病院の病室でミランにそう告げられた。
「そうなのよ。」
「時空の魔人って…!ハマリングの街に入る前に俺会ったぞ!」
「えっ!俺様が門で捕まる前にかよ!」
「そうなの?だから言ってたのね。あんたに時空の魔人さんから伝言よ。「君に期待しているから、もっと強くなってくれよ。」ってね。」
「期待!?マジで?なんで?」
「そこまでは聞いてないわよ。」
俺が時空の魔人に期待される理由あるか?唯一可能性あるのは俺のスキル[奪取]だ。このスキルは魔人の力を奪ったり、他人のスキルを使うことができるものだ。(たぶん。)このスキルの事を時空の魔人が知っているのなら俺の強さに期待するのも納得できる。でもなんで俺の能力を知ってるんだ?
「謎は深まるばかりだ…」
「まあでも俺様もケイゴも助かったから良かったな!ありがとなミラン!」
「と、当然でしょ!(改めて言われると照れるぅーー!!)」
すると病室のドアが開いた。
「タニグチケイゴさんとキース・カローンさん。明日になったらお二人とも退院できますよ。」
看護師さんが病室に入ってきてそう伝えた。
「そうですか!ありがとうございます!」
「はい。それでは。」
看護師さんが去り、キースが笑顔で言った。
「やっぱり病院に常駐している回復魔法使いの魔法はすごいなー!まだ3日間しか入院してないのに。」
「それってやっぱりすごいの?」
「そうよ、一般の魔法使いや僧侶が使う回復魔法だった場合、あんた達2人の傷はせいぜい1ヶ月は治ってから動けるようになるのに時間がかかるの。つまりこの街の回復魔法使いの人は優秀。この病院は優秀って事。」
「そうなのか。」
「あんた本当に何も知らないわねー。」
ミランが少し引いた目で見てくる。これは、呆れられてるな。でもしょうがないだろう。
まだこの世界に来てから1か月も経ってないのだ。そりゃあ情報処理能力とIQと戦闘能力がある奴だったらまだしも俺は分析能力と手数があるだけだからなぁ。自分で言うのも何だが。
「あっ!そうそう。あんた達この前クエストに向かってる時に「他の冒険者らしいクエスト受けたいなぁ〜」って言ってたでしょ?2人が寝てる間に見つけて来たわよ。」
そう言ってミランは紙を取り出した。
・マナラ洞窟でのコウモリモンスターの駆除
※おまけで鉱石を採っても良し
「おおぉーーー!!いいなぁ!この世界でどんな鉱石が採れるかも知りたいし、戦闘もできるのか!楽しそうだな!」
「確かに面白そうだ!って[この世界]ってなんだよ?まるで他の世界知ってるみたいな…」
キースが鋭い指摘をしてきた。なんでそんな所に気がつくんだよっ。
「?」
ミランはまだ勘付いていないようだ。
「(ギクっ)うぇっ!?いや、比喩表現だよ…!ほらよく言うじゃん!この世界で最強になってやる!とか!」
「お、おう。確かにな。じゃ、ミランありがとな!明日退院するから宿に戻っててくれ。」
「わかったわ。お大事に。」
ミランは病室を出て行った。キースが「よーし、明日は冒険日和って言ってたし早めに寝よっかなぁー」と呟いている。キースはそこまで気にしていないようだが、こことは違う別の世界から来た事はこの2人に隠したままにする。もし仮に俺が別の世界から来た事を理解してくれたとして、彼らがゲームの世界の[キャラクター]とわかった時どういう気持ちになるだろうか。自分はプログラムされたキャラクターで、本当の[自分]という生き物は存在しない事を知った時どうだろうか。その現実を2人に伝える事はできない。というより、したくはない。彼らは彼らでこの世界で自分という自我を持って生きているのだから。
俺はキースにおやすみを言って病室で眠りに落ちた。
その時にはキースはいびきを立てていたが。
――次の日――
「よーし、ケイゴ。退院できたし宿に戻って荷物整理したらミランの言ってたクエストに行くぞー!」
「おぉーー!」
「ではお気をつけて。」
病院の人に見送られながら宿に向かう。すると、
病院を出てすぐに街の人達が駆けつけてきた。
「英雄ケイゴ様!退院おめでとうございます!お怪我は完治したのですね!良かったです!」
先頭に立っていた青年が俺に向かってそう言ってきた。
「?あ、ああ。ありがとう。でもそんな英雄扱いしたり敬語使わなくていいよ。英雄英雄言われると緊張しちゃうから。」
「ケイゴには敬語(ケイゴ)使うなってか。ぶふっ。」
「キース、ちょっと黙ってろ。」
「そ、そうですか。ではケイゴさん。また冒険にでかけるんですか?」
「そうだよ。近くの洞窟で鉱石を採集するんだ。」
「近くの洞窟って、もしやマナラ洞窟でしょうか?」
青年が眉を狭めて困った表情をする。
「確かそうだけど…何かあるの?」
すると、青年の後ろにいた人達が口々に言い出す。
「あそこに入った友達が帰ってこないのよ。」
「あの洞窟は古い洞窟だから危険じゃぞ。」
「モンスターも凶暴だしな。」
「えっ?そんなにやばい感じなの?」
そして青年が思い出したように言った。
「あっ!でも少し前に王都騎士団の方々が調査をして安全な洞窟だと報告があったそうです!」
「そうなんだ。それなら安心だな。」
その話を聞いて安心したのか、街の人々は去って行った。何なんだ一体。
「なあ、王都騎士団ってなんだ?」
「王都騎士団っていうのは魔人に対抗する為に結成された王都に駐屯している騎士団だ。確か全部で10隊あって、それぞれが魔人に対抗できるように特訓してるらしいぜ。」
「へぇーそんなのがあるんだ。」
「で、魔人が倒されたり、死んだりしたら騎士団が新しい魔人を決定して新聞として流すんだよ。新しい魔人現る!みたいな感じでな。」
「あ、だから魔人がやられたら新しい魔人が補充されるのか…あれ?そういえばジライゲンの代わりはまだ補充されてないの?」
「それなら、朝の新聞に載ってたぜ。これこれ!
[筋肉の魔人、アンドルフ・ベッシュ]!大地の魔人に代わり、レベルが高い者に見境なく襲いかかる狂人!危険人物の為、出会ったら即撤退すべき!」
「…!こいつか…どんな奴かは会ってみないと分からないけど、やばそうだな。あれ?でも魔人の情報ってあんまり公になってないんじゃないの?ゼンじいが言ってた感じだと。」
確かゼンじいが言うには異名で呼ばれることがほとんどで本名は明かされないとか言っていた。
「いや、こいつは王都エザーサンにあるコロシアムの優勝者だから名前が割れてたんだとよ。」
「ふーん?じゃあ何で時空の魔人の名前は割れてるんだ?ゼンじい知ってたけど。確か、カラルト・バルクライ。」
「カラルト・バルクライは俺でも知ってるぜ?時空教っていう宗教の教祖だからな。よくニュースでもでてるし。」
「あの人教祖なんだ?そうは見えなかったな。」
あの爽やかな青年が宗教の教祖とは思えないが、ニュースでも出るくらい知ってる人は知ってるらしい。というかこの世界ニュースあるんだ…
そんな話をしていたら宿に帰ってきた。
「さーて!遅くなったなーただいまー!」
宿の部屋をキースが勢いよく開けると紫色の煙が中から一気に出てきた。
「ぶふぉっ!!何だ!?ごほっごほっ!」
「敵の襲撃か!?」
「あ、おかえり。魔法薬作ってたの。見てみて!じゃーーん!私特製の[カチカチ液]ーー!」
「[カチカチ液]ーー!じゃねーよ!ちょっと待て!ごほっ!一回この煙をごほごほっ!外に出せ!」
「この液体はね〜どんな液体にかけても固体に変化させることができるのよ!だから湯船にためたお湯に混ぜればドッキリができるの!ぐふふふ…(コツン)あいたっ!」
「そんな事言ってないで窓開けろ!!」
「ごめんなさい」
キースが窓を開けるために窓に近づいていくと、
「あっ!ちょっとそこには薬品が!」
「えっ?」
ガシャン、ドバーー。
「あ!!」
――
「さーーて!じゃんじゃん掘るぞ!」
「「おーーー!」」
「コウモリきたぞーーーー!」
「「やーーー!」」
「また掘るぞーーー!」
「「おーーー!」」
「コウモリきたぞーーーー!」
「「やーーー!」」
今、俺たちは本来行く予定だったマナラ洞窟に来ていた。鉱石をとりながらコウモリを倒している。
キースがぶちまけた薬品によって、溶かされた宿の部屋の穴の修理代のために。
「金を集めろーー!!!」
「「ごめんなさいーー!!!」」
ミランは床にたくさん薬品を置いていたことに謝り、キースは床にぶちまけてしまったことに謝っていた。
もうほんとに勘弁してくれ。
2-6 完