「父の車」 愛車遍歴(四輪編)その1
幼少期、父の車に乗せてもらう時はいつも胸がわくわくした。運転している父の膝の上に乗りハンドルを触らせてもらったのは、今よりもずっと取締りが緩かった昭和40年代の懐かしい記憶だ。父は見栄っ張りな性格だったせいか地方で新聞販売店を営む身にしては比較的高級な車に乗っていた。メタリックブルーの日産スカイライン2000GT(ケンメリ)や高級セダンの日産グロリアを乗り継ぎ、一時は当時地元ではまだ珍しかったアメ車にも乗っていた。その影響からか僕もミニカーとかラジコンとか、親にねだるおもちゃは自動車のものが多かったように思う。それから当時一世を風靡したスーパーカーブームの影響は大きい。カウンタック、ミウラ、512BB、ランチャ・ストラトスと、輝くばかりのスーパーカーたちに、あの頃の小学生男子児童のほぼ全員が憧れた。もちろん僕も例に外れることなく心を鷲づかみにされたうちの一人だ。スーパーカー辞典的な書籍も数多く出版されていて、文字通り目を皿のようにしては隅から隅まで読み耽った。そのような書籍には前途のスーパーカーの他に、フォルクスワーゲンビートルやゴルフ、BMW2002、MINI1000等のいわゆる大衆車も多数掲載されていて、きらびやかなスーパーカーと比べたらあきらかに地味な存在だけれど、それぞれに独特な個性を放っていた。そして実用性に優れていそうなそのフォルムを眺めるにつれて、しだいに「将来乗るならこっちかな...。」と子供らしからぬ思いを抱くようになるのだけれど、それは単に僕の好みの問題なのか、その頃から現実主義者だったのか、今となれば謎としか言えず、自分でもよくわからない。
つづく...