バーチャルピューロランドにみんなが集まった日々――「SANRIO Virtual Festival 2023」事前期間のおもいで
「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」はめちゃくちゃ楽しくて、どこから振り返ろうか迷っているのですが、やっぱり今回最大のアップデートである事前期間から振り返ってみたいと思います。
事前期間について
「SANRIO Virtual Festival 2023 in Sanrio Puroland」は、1月21日~1月22日の2日間に渡り開催された音楽フェスです。会場は「VRChat」で、「ピューロランドの地下に広がる音楽空間」を舞台に、リアルアーティスト、バーチャルアーティスト、気鋭のクリエイター、アンダーグラウンドなDJフロア、バーチャルパレードなど、様々な音楽体験が展開されました。
フェスの開催期間は1月21日~1月22日でしたが、その一週間ほど前から会場がオープンされ、毎日パレードが実施されたほか、VRChatで有名なイベントとのコラボなどが行われました。
わかりやすく言えば「サンリオの作ったVR空間が一週間近く公開されて、ユーザーも巻き込んだイベントが毎日開催されていた」って感じです。今回からの施策なのですが、これがすごい画期的でよかったので、その「よかったよ!」という気持ちを伝えるのが、この記事です。
腕章
実はMoguLiveがオフィシャルパートナーメディアになったことで、公式腕章というものももらっていて、ちょくちょくこれをつけて事前期間のバーチャルピューロランドをめぐっていました。
とはいえ「現地突撃取材!そのへんの人インタビュー!」みたいなのは根本的に苦手なので、ぬるっとイベントとかが行われている場に行き、キャイキャイしていただけなんすよね。つまるところ、なにもしていない。つまり以下のテキストは、ただのいち参加者の感想戦です。
Tresure Hunt
1月13日(土)の開幕日には、「VRChatワールド探索部」の方で「オープニングセレモニーを見る部」が設立されたので、ぬるっと参加してきました。あれやあれやと40人くらいは参加していた気がします。とてもにぎやか。前回のフェスはだいたいぼっちだったので、なおさらにぎやかに感じました。
パレード、ほんとにすごかったね……
「パレード」とは銘打っているものの、その本質を可能な限り言語化するならば「イマーシブ・インタラクティブ・ミュージカル」ともいうべきですかね。基底現実のパレードが提供する「世界観」の中に入っていくような感覚で、従来のエンタメから一線を画するすさまじいコンテンツでした。
そしてパレードのテーマに「音楽は音楽、全部なかよくできる」というもの。これだけ聞くと「サンリオっぽい」と思うし、人によってはナメてかかると思うんですよ。
すさまじく骨太でしたね。なにせ出てくるのが「ノイズミュージックの精霊」。ゴリッゴリのノイズサウンドと、「やべえパーティクルライブ始まった?」と錯覚する演出が、このパレードをかの0b4k3さんが手掛けていたことを思い出させるわけです。
そんな精霊さんが叩きつけるノイズを、キティちゃんたちは肯定しました。「私たちが寄り添えばいいわ!」と叫び、ノイズミュージックとのセッションを始めます。シナモロール、ポムポムプリン、キキララ、クロミとともに紡がれる歌は、精霊さんの心をも開きます。
「音楽はどんなものでも尊いものである」というメッセージ、言うだけならかんたんなんですよね。だけどもこのパレードは「世界観」そのものに連れ込んだ上で、本気のサウンドと演出とともに、それを叩きつけてきました。説得力がハンパない。
後に聞いたのですが、サンリオはそもそも社訓として「みんななかよく」を掲げているらしいのです。「なかよくしよう!」というメッセージの発信者として、これ以上の適役はいないでしょう。
最初に見終わったとき、「カンペキだわ」という言葉が口をついて出たのをおぼえてます。あまりにもサンリオらしく、しかしこれまでのサンリオを大きく越える、すさまじいコンテンツから今回のフェスは始まりました。冗談抜きで、この初日でフェスが終わったんじゃないかって思ってしまうほどに、満足感がすごかったです。
おしえて!写真の撮り方!
1月15日(日)、Mogura主催のプレミアムツアーが開催されました。このツアーに自分は急遽同伴することになり、後ろから見守りながらツアー参加者のみなさまへの案内などをしておりました。とはいえ、メインガイドのGugenka・三上昌史さんがすごく手慣れていたので、特に自分の出番はなかったです。よかった。
記念撮影:公式フォトグラファーイベント
そのツアーが終わった後、えこちんさん、rocksuchさん、柚葉さんの公式フォトグラファー3人衆による、初心者向けに写真を撮る時の話をゆるっとするイベントに顔を出してきました。
会場はほぼほぼフルインスタンス。大きな内容は3名の写真を撮るときのコツ、をざっくり話した後、ピューロビレッジを実際に撮影してみようということで、各々自由にカメラを手に取る時間となっていました。
自分もVRChatで「意識した撮影」をやるようになってそこそこ経つのですが、「いきなり撮るよりも、ワールド全体を観察してみるとよい」というコツは、意外と自分の中で無意識的なものだった(そして再現性がなかった)観点で、「学び~!」となってました。こういう知見はちゃんと聞くに越したことはないですね。
イベントのあとは、ネミアちゃんをばっちりサンリオ色に染めてきたあまねこさんといっしょに「実践」に赴いたりしていました。彼が撮影した写真の一部は公式フォトコンに応募されたはず。図らずもアバターが姉妹っぽくなり、いろいろポージングするのたのしかったですね。
ちなみに一人でも撮っていた。このために仕込んだ推しコーデリアアリスでございます。たのしい~~~~~!!!!!! かわいい~~~~~!!!!!
余談なんですが、公式フォトグラファー3人衆はこのタイプの活動をする際には3人とも薄荷ちゃんになっているとのこと。ただ、一見すると「これ薄荷ちゃん!?」となるくらいには個性出ていて、普通に気づきにくい。さすがはVRChatアバター界のイーブイ……
ASOBIENTに遊びにいく
1月16日(月)の夜、何気なくソーシャル欄を見たら「K.ᴗ. AmbientflowさんとキヌさんがいるB4」という異様なスポットを発見し、半ば本能だけでJoin。行き先ではK.ᴗ.さんが定期配信を実施していました。
サンリオVfesは今回、事前期間の間、ガイドラインさえ守っていれば「B4フロアで自由にイベントを開いていい」という驚きの施策を実施していました。どんなイベントが開かれていたかは「#VFesFree」というハッシュタグから追えるようになっています。K.ᴗ.の配信も、この施策に合わせて実施された言わば「出張回」でした。
完全になにも知らずに訪れてしまったのですが、奏でられるアンビエントサウンドがとても心地よく、耳の奥からじっくりと癒やされていました。そして配信されているすぐそばでキヌさんと「VFesFree、最高じゃん……」みたいな雑談していた気がします。恐ろしいほど贅沢なことをさせていただいていた。あとよく見たらYuki Hataさんもいましたね。B4出演者が2人もいた。
そしてなんか雑談していたらK.ᴗ.に声掛けしていただき、恐れ多くも配信にお邪魔させていただきました。ヌケヌケと現れるあやしいやつ! マジでお邪魔しました!
ちなみにK.ᴗ.さんがどんなことをされているかは、Gizmodeのこの記事が参考になります。
マイメロ、VRC学園、YSSライブ
1月18日(水)は公式・非公式イベントが複数開催されていました。すでにフェスは始まっていた?
まず最初は、その日突如告知されたクロミに関するイベント。事前に指定された会場インスタンスはきっかり80人に届いていました。えげちい!
イベントの内容は、この日誕生日を迎えるマイメロディを、クロミがドッキリでお祝いしようとする……スペシャルムービーの放送でした。キャラクターの誕生日と連動した粋なイベント。動画は比較的短めだったのであっさり終わり、しばらく「かわいかったねぇ~」などとおしゃべりしていたら……
まさかのマイメロ降臨。会場は一気に阿鼻叫喚となりました。眼前でニッコリするマイメロを前に限界化する人々が続出。僕もいざ対面したとき、"オーラ"を感じたのは疑いない事実です。こうした突発キャラグリーティングが、フェス期間中はしばしば発生していたみたいです。
次に、公式イベントである「私立VRC学園」の特別講義へ。学園、もっと早く知ってたらぜひ参加してみたかったイベントのひとつです。
この日の講師は桜羽ことねさんで、テーマは「VRChatアイドルについて」。桜羽ことねさんは実は日産のVRChat取材などでちょくちょくお会いする機会があり、イベントアテンダーとしての姿はよく知っていたのですが、おそらくメインであろうアイドルとしての姿を知らなかったんですよね。ステージに立っている姿だけで「あっ、舞台に立てる人だ」と一発で伝わりました。ほんとにオーラが出るんですよ。「舞台に立てる人」って。
そして活動内容の一例を見て、日産などでアテンダーとして活躍されている理由もわかったりしました。それもアイドル活動。しかし活動内容が多岐に渡っているのは、シングルタスクな身として見習いたいな~!って思ったり。
桜羽ことねさんがなぜVRChatでアイドルを始めたのかを、物語調に語るパートもありました。より詳しいその経緯は上掲の記事でも書かれています。武者さんありがとう……!
そして次は、YSSの#VFesFreeイベント。これも定期開催されているライブ配信「HacoLive」の出張版。おもしろいのは、YSSはフェス当時にもB3に出演予定なのに、#VFesFreeとして非公式ライブもやっていること。マジですごいし、このフットワークがVRChatアーティストの魅力になるなーと再実感しました。
YSSの生ライブを見たのも初めてでした。YSSの楽曲には「透き通るようにきれいで、だけどもノリノリになれる」という印象があり、自分にとっていい感じのペースで揺れていることができるのはライブのようでもクラブのようだなと感じました。つまり、めちゃくちゃ心地よい。
しかし中にはデスボ入りの楽曲もあり、そのときには「みんなでモッシュしてみよっか!」の一言で、観客全員によるモッシュがおっ始まりました。世界で一番楽しいシャトルランでしたね。
そしてライブ後は、ライブ参加者に「いっしょにパレード観に行きませんか!」という声かけが。いいんですか!?
YSSのお二人を中心に、多くの人とまたパレードが見れました。行く人によってまた印象が異なることもおもしろかったですし、なにより「このあとB3で見るであろうアーティスト」といっしょにパレードを見る、という体験がすごく新鮮でした。こういうことがすぐにできるのもVRChatのいいとこですよね!
裏側を聞く
そしてフェス開催前日の1月20日(金)は、私立VRC学園特別講義のトリである、サンリオ・町田雄史さんによる「Sanrio Virtual Festival開催秘話」。まさにこのフェスを作り上げた人によるプレゼンです。
開催経緯、構想、技術的な裏側、そして熱意。語り口からも、このイベントにかける思いが伝わってきました。「熱量」を込めて、「好き」を共有できる場を作る。各所で大きな話題となったフェスがなぜできたのか、おのずと伝わる講義でした。こういうお話を聞く機会をオープンに提供するのも、めっちゃいいですよね。
講義が終わったあとも、参加者と非常に近い距離感でお話しされていたのが印象的です。あと、このあともパレードに行ってきたのですが、そこで偶然町田さんと再開。そこでもアツいお話しを聞くことができ、他の人とともについつい日付が変わるまで話し込んでしまう始末(相手は超多忙な社会人やぞ!)。非常に思い出深い「フェス前日」になりました。
「あつまるイベント」から「あつまる場」へ
フェス一週間前からワールドを開放し、著名なイベントとコラボし、一部フロアはユーザーに「使っていいよ!」とオープンにする。なかなか企業主導イベントではできることはないです。
少なくとも現実であれば、ピューロランドでラジオ体操をやったり、アーティストが路上ライブを行うことは難しいものでしょう。しかし、そういったことも割とやりやすいのが、オンラインで常にアクセスできるソーシャルVR/メリットのメリットです。これをプレスリリースに書く企業こそ多いですが、実践できている企業はとても少ない。
今回、ふらふらと事前期間を渡り歩いていて思ったのは、バーチャルピューロランドが「イベント会場」から「みんなが集まる場所」に変わったな、ということ。フェスの存在を知っている人はもちろんですが、「あっ、土日にやるんだ、おもしろそう~」と初めて気づく人も見かけたんですよね。後者を招き、認知してもらい、フェス参加(≒チケット購入)のきっかけを作りだす施策として有効そうです。
数回イベントが開かれた後、ゴーストタウンとなり、話題にも上がらなくなるメタバースはめずらしくありません。その最大の要因に「あつまる場所になっていないから」が挙げられると思います。人がいない場所に、人はやってきません。やってくるのは廃墟を愛するひとくらいでしょう。
サンリオVfesは、前回の話題性も大きかったですが、「オープンにする」「一部は自由に使ってよくする」という施策で、VRChat民に対する距離感を一気に縮めてきたように思います。なにより、イベントにために作られた素晴らしい空間を開放することで、「テーマパークでイベントを開く」という現実離れした体験を提供しました。こんなの楽しくないわけがない。こうしてどうやって遊ぼうか、みんなで盛り上がる熱気が生まれるのです。
ソーシャルVR/メタバースの活用事例として、あらゆる組織が見本にするべき、と断言できる。そのくらい、今回のフェス事前期間には大きな意義がありました。ぜひ各所で後続が生まれるといいなって、写真をふりかえりながらしみじみ感じています。
おまけ:貼りたいだけの写真
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