すみっこ女子だった頃のはなし
弾丸日帰りひとり旅(通称”サク旅”)番外篇です。
29年ぶりに元・同級生だった、キラキラ男子に会ってまいりました。
クラスのすみっこ女子だったわたし。そりゃ緊張しましたよ。にもかかわらず3店舗訪問で、髪は乱れ、汗はかき、化粧は完全に落ち、ありえないほどの「荒れた」姿に。
いさぎよく覚悟を決め、おくったメッセージ。
「先に伝えますがわたしバックパッカーみたいな恰好です」
・・・中学生の頃に自分に伝えたい。あんた、29年後にはその過剰すぎる自意識、完全に捨ててるよって。
ほどなく、再会。
ビンテージ家具を修理するしごとをしていると。
転校してから今に至るまでのざっとした話を聞いて、心斎橋界隈をぐるっと歩き、彼の長年の仕事場のひとつにお邪魔させてもらいました。
彼の大学時代の友人がオーナーのこのお店には、主にデンマークの家具が集められていて、張地見本や照明、洋書、絵画をみながら3人で歓談。
次の待ち合わせの時間がせまっていたこともあり、後ろ髪をひかれながら御堂筋線で「本町」に移動。
大人になって、よかった。
クラスのすみっこ女子だったわたし。男子とうまく話せなくて、ひっこみすぎたり過剰すぎたり、「普通」に接することができなかった。片思いは成就するはずもなく、ドラマや音楽や小説の中の恋愛をうらやましくおもいながらも現実とのギャップにため息をついていた。可愛い同級生、綺麗な同級生がまぶしかった。どうしたら両想いになれるのか、真剣に知りたかった。
図書館や教室で勉強して、本を読んで、あこがれだけを募らせていた思春期。
コンプレックスのかたまりでした。
いつも誰かの真似をしては撃沈し、勝手に嫉妬しては苦しみ、髪型や服装や趣味をころころ変えるものの、何一つうまくいかずもがいてもがいて自分がちっとも好きになれませんでした。
きらきらしている人がうらやましかった。
なんであの人はあんなに楽しそうなんだろう。
なんであの人はなんでも持っているんだろう。
どうしてわたしはいつもうまくいかないんだろう。
ぐるぐるぐるぐる負のオーラ。
そう、写真を撮られるのも大嫌いでした。笑っている写真はいつもどこかぎこちなくて。
変化のきっかけは大学進学を機に上京してはじめた一人暮らし。
親とはなれたことで、いままで禁止されていたことを片っ端からやりました。実家がとても厳しく門限もあったし、行動にも制限があったから、帰宅時間も起床時間も自由なんて!背中に大きな翼がはえた気持ちでした。
高校までの勉強と違って、大学での授業や実習は選択の余地があって自由に学問を味わうことが許されていて。思いつくまま気の向くまま講義にでていたら3年間で4年分の単位を取得してしまい、最終年次は卒論のためのたったひとコマに!
映画をつくるサークルにちょっと参加したら、同級生や大学生だけでなく、プロのカメラマン、役者、ディレクター、お店のオーナーなど、幅広いジャンルの方と芋づる式に知り合う機会に恵まれ、びっくりするくらい世界が広がりました。
地元にはなかったおもしろそうな場所にも積極的に行きました。小劇場で行われていたお芝居に夢中になりダンスもはじめて週4日スタジオに通いました。今は亡き中島らもさんのファンクラブにも入って、らもさんとチークダンスを踊るという名誉なことも。
若い世代の方には想像つかないかもですが、昔は情報を取りにいくのは現場しかなくて、毎週「ぴあ」を買ってはどこにいくか真剣にチェックしていたものです。お金を出して買っている情報誌だったからすみからすみまで読んで、雑学を増やしたものです。
当然お金が必要です。一人暮らしにあたり、実家から仕送りを受けていましたが、はじめてバイトをしました。いいことばかりとはいかず、厳しい目にもあいましたが、社会にもまれてずいぶんとタフになりました。
こうして好きなものができて忙しくなるたびに、わたしは変わっていきました。その頃の自分の写真をみつけたんですが、顔はパンパンだし、にきびはあるし、変な格好はしているし、化粧はへたくそなんだけど。
いい顔、してるんですよね。
高校時代や中学時代のほうが肌もきれいですっきりしているのに、大学時代のわたしのほうが何倍も味のある表情。自信にあふれているんです。勢いがあって。
ここだったんだと気付きました。わたしのコンプレックス。
本気で自分の顔や身体や個性が嫌いだったんじゃない。自信がもてなかっただけ。自分がよくわかっていなくて、価値がみつけられなかったんです。
好きなものが増えると自然となりたい方向性がわかって、自分が好きになりました。はあちゅうさん(作家・ブロガー)もおっしゃっていますが、コンプレックスは自分の中にあるからスルーしたらもったいなくて、自分を見直すきっかけにかえたら、世界が変わります。
そしてどの部分を活かすか、編集力をつかって、自分をプレゼンしたら、きっとコンプレックスが魅力になる。
すみっこ女子だったわたしに、かつてのキラキラ男子だった同級生が大阪で言ってくれた言葉は、がんばってきた自分への最大の賛辞でした。
「また、会おう!」
【おまけ:番外編の番外話】
びっくりしたんですが、キラキラ男子の記憶の中でわたしが「2年間クラスが一緒(※1年間しか一緒じゃない)」で「仲良かった(※隣の席になった時にしか話していないし、みんなはあだ名でよんでいたけどわたしはそんな気やすいことができなくて苗字にくん付けで呼んでいたし、必要以上のことは恥ずかしくて話せなかった」ことになっていて、つくづく人気者というのは世界をポジティブ変換する天才なんだとおもいました・・・記憶を完全に上書き修正されてて、そのくせ当時話してくれたサッカーの外国人選手のエピソードとかまるっと忘れてて(わたしはちゃんと覚えている)どこまでも潔かった。生まれ変わったらこっち側の人間になりたい・・・