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嵐の夜に。

2017年訪店し、忘れられないレストランは数多くあれど、やはり「嵐の夜に」お邪魔したあのお店を語らないわけにはいかないだろうとおもいます

わたしは北欧の暮らしを伝えるNordic Tableという活動をしています。そのつながりで北欧まわりの催し物には足を運ぶことが多く。

2017年の初夏に開催されたNordic Lounge vol.02 〜食から考えるNordic Breakthrough〜Farmer's Market at UNU でフードを出しておられ、その味わいはもちろんですが、コンセプトやビジュアルが素晴らしく、ずうずうしくもご挨拶させていただきご縁ができた白金台のAEGという「ノルディック・ジャパニーズ・キュイジーヌ」レストラン。

シェフの辻村さんは、もともと音楽をやっていたそうです。
それがデンマーク人のご主人とタイで出会い(!)、料理の世界に飛び込み、デンマークの3ツ星レストラン「Geranium(ゼラニウム)」で働かれ、六本木のデンマーク料理店「カフェデイジー」を経て、今に至られたと。

ここまで聞いていてもすごいなあと唸っていたのですが。

すばらしかったです、物語のある料理。

素材と調理法とコンセプト。

カウンターをわたしたち3名のためにリザーブしてくださり、丁寧に素材の産地や調理法、こだわりや試行錯誤したこと、説明くださったおかげで、ひとつひとつ丁寧に心を配っておられることが伝わりました。

これ、ほぼ一人で全部やっているんですよ!

わたしはここまで、仕事や暮らしに魂をこめられているのか。

「ないものは、自分でつくればいいとおもって、ここまでやってきました」

「いくつになっても挑戦して、何度だって失敗していい」

お料理をいただきにきたはずが、泣きそうになりました。

料理、だけでなく、そこにいきつくまでにうまれた物語の数々。

北欧で経験したこだわりや試行錯誤したこと。
バイト経験しかないままいきなりお店をもつことになったこと。
47歳を過ぎて、もう一度、勉強をしたこと。
家族はロンドンとデンマークで暮らし、ご自身が単身で日本にいること。

まだデンマークに行ったことがない私にデンマークにいったら辻村さんが必ずいくお店の名前や、コペンハーゲン以外で一つ行くとしたらここ!という都市のことや、コペンハーゲンの便利なホテルのことまで、手帳がデンマーク情報でいっぱいになりました。

素晴らしい夜でした。

そしてここからが本題!嵐の夜。そう。台風直撃の日。予約がようやく取れたお店。辻村さんに会いたい一心でまったくもってキャンセルなんて考えていなかったわたし。そしてまさかの同行者2名も同じ志で、暴風雨のさなかピカピカの笑顔で現地に集まって。

わたしはこの二人のことは、一生好きだと心底おもいました。

どのお皿を出されても嬉しくて、私たちはおおはしゃぎして、無言で食べ終わるとかしましく感想を述べあい、ワインを飲み、デザートとコーヒーのあたりでは終わってしまうことが信じられずすこししょんぼりしながら。

ずっとずっと、この瞬間が続けばいいのに。

暴風雨が静まった帰り道、駅まで上機嫌で歩きながら、口笛を吹きそうになりました。わたしたちなら、なんだってできる。どんなことだって、かなえていける。

嵐の夜の物語です。

▼北欧初の三ツ星に輝いた『ゼラニウム』出身の女性シェフが創る、新北欧料理の『aeg エッグ』が話題(2016年11月02日)
https://www.gnavi.co.jp/dressing/trend/20397/


トリスと金麦と一人娘(2023 春から大学生になり、巣立ちます)をこよなく愛する48歳。ぜひどこかで一緒に飲みたいですね。