#星にねがいを 幼馴染トリオ

#星にねがいを  幼馴染トリオ。
 夕暮れの、小学校からの帰り道。
 ヒヨの提案でちょっと遠回りして、卒園した幼稚園によってみることに。

 薄暗がりの中、園の柵の向こうから覗き込んでいると、懐かしい先生たちが「遊んでいっていいよ」と中に入れてくれた。

 園庭に飛び込み、キョロキョロするヒヨ。
 ランドセルをベンチに置いて、さっそく砂場に飛び込んだり、鉄棒でぐるぐる回ったり。

ヒヨ「なっつかしいねぇ。幼稚園生にもどったみたい!」
冴子「ほんとね。でもほら、見て。鉄棒の一番高いの、手が届くかどうかだったのに、もうこんなよ」
 冴子が笑いながら、自分の胸下の位置にある鉄棒をなでる。
真「確かに、遊具が小さく見える。こんなだったっけ」

 と、冴子がヒヨと真を見比べて、ふふっと笑う。
冴子「相馬は急に背が伸びたから、よけいよね。幼稚園の時はわたしが一番高くて、相馬はヒヨと同じくらいだったじゃない?」
真「…………うん」
ヒヨ「そうだったっけ? って、なんで真ちゃんだけ伸びて、わたしチビっちゃいままなんだろ? 真ちゃんずるいー!」
冴子「まぁまぁ。相馬はがんばったのよね」
真「………………」
 含みのある目で見られて、真はジトッと半眼に。
 鉄棒から逆さまにぶら下がったヒヨは、「ほえ?」と首を傾ける。

 が、逆さまの視界の向こうに見えたものに、あっと瞳を輝かせる。
 しゅたんっと着地して、
「ねぇ、すべり台! 超特急新幹線ごっこやろ!」
「「ええっ?」」
 ためらう二人の袖をひき、すべり台へ直行。

 向かい合うジャンボすべり台は、幅3メートル、高低差3メートルの幼稚園名物。
「ほいほいっ、のぼってのぼって!」
 ぐいぐい二人の背を押し、階段をのぼらせる。
「ちょ、わたしすべり台なんてひさしぶりすぎよ」
 ちょっと困った顔の冴子。
 その背中に抱きついたヒヨは、真をふり向き、
「真ちゃん、ほらっ。新幹線連結ー!」
「――え。オレも……?」
 当惑顔の真が、じりりと後ずさる。
 その顔が、薄闇の中でも赤く見える。

 ヒヨはきょとんと目をしばたたく。
 ――そして。
「さぁわたしに抱きついてこい」と言ったも同然と気づき、自分もぼんっと瞬間沸騰。

「あっ、ご、ごめんね真ちゃんっ。高学年になって、そんなのイヤだよねぇ。アハ、アハハハッ」
「べつにイヤとかじゃなくて……」
 とたんにぎこちなくなるヒヨと真。

 そんな二人を見比べた冴子、ふうっと息をつき。
 ガシッと二人の肩を掴んで座らせ、片手を繋がせる。さらに冴子はヒヨの反対の手をつかむ。
「横並びでいくわよ」
 心の準備をする間もなく、冴子の「せーのっ」の掛け声で、三人は一気に斜面をすべり降りる!

「うどわわわわわっ⁉︎」

 成長した体重のぶん+容赦ない角度のすべり台に、三人はマサツテイコー少なめのジューリョクカソクドで、思いのほか加速!

「あ~~、今日もよく昼寝したビヨォ。ヒヨ、今日の昼メシなにビ、」

 すべり台の途中に現れたビヨスケ、三人のスライディングキックに吹っ飛ばされ、夕空に輝く一番星となる。

 ズサッと着地した三人。
 下の砂場の砂が舞い上がり、三人の顔を真っ白にする。

「「「………………」」」

 砂まみれの顔を見合わせて、目をぱちぱち。

 ぶふっとヒヨが一番にふき出した後、冴子も真もふき出し、三人そろって大笑い。
「着地の衝撃も、小さい頃とはちがうな」
「なんにも変わってない気がしてたけど、ちゃんと成長してたのね。わたしたち」
 真と冴子の言葉に、ヒヨもうんうんうなずく。
 が、何かしゃべろうとして、ぶえええと舌を出した。
「口の中、砂まみれだぁ」
「そろそろ帰って、お風呂ね」
 三人はまだ笑いの残るまま、立ち上がる。

 先生に挨拶して園庭を出て行こうとして、ヒヨはふと立ち止まった。
 先を歩く二人の後ろ姿が、幼稚園時代にいつも見ていた二人の背中より、ずっと大きく、頼もしくなっている。
 どんどん大人になっていくおさななじみたちを、ふいに実感してしまった。

「「ヒヨ?」」

 二人は同時にふり返る。
 ヒヨを見つめる、その優しい笑み。
 自分に向けてくれるこの笑顔は、二人とも、あのころのままだ。

 ヒヨは嬉しくなって、にぱっと笑う。

「なんでもない! か~えろっ♪」
 大好きなおさななじみ二人を追っかけて、ヒヨはその腕に飛びついた。


~了~



一番星「 ~了~ じゃねぇビヨ! オレさまを地上に戻せビヨォォ!」


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