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全財産0円で2ピン東風4-7へGO!

【 前回 カフェ出禁寸前事件 マグマ噴火編

あさ 「実は、Sさんから高レートセットのお誘いがありまして」

マグマが噴火した日の夜、彼から麻雀セットについての相談を受けた。

聞くところによると、レートは2ピン東風のウマ4-7
祝儀は赤5枚、青1枚、白ポッチ1枚が含まれ、それぞれの祝儀は一発ポッチ赤裏オープン立直に祝儀1枚ずつ、青に祝儀2枚。
祝儀は2000円、4000円。
連勝・連敗チップが採用されており、2連勝(連敗)で2枚オールから2→3→5→7→10枚と増えていく。
これらを考慮すると歌舞伎町のメジャーなピン東の5倍ほど動くことが考えられる。
ラスを1回引くと2万~3万程度のマイナスになり、連敗となるとそれ以上だ。
4着1回で家賃が吹き飛ぶと考えると、これでも彼にとっては十分に”超高レート”ということになる。

私 「あさじんさんにしては、なかなかガッツあるレートですね」
あさ 「交通費や時給は出ないが、Sさんが言うには面子の平均レベルが俺の実力より低いみたいなんですよね。スジがわからない人もいるらしくて」

スジがわからない人が本当にいたとしても、すでに淘汰されてその場にいないことは明白である。

あさ 「それに、10割自腹じゃなくて何割か乗ってくれるみたいなこと言ってました。だから実質レートはかなり低くなるんじゃないかな」
私 「国民健康保険みたいですね。経済的に厳しいなら自腹1割くらいならなんとかなると思いますよ」
あさ 「わかりました。9割乗ってもらうよう提案します

その後、S氏から「9割乗るくらいなら自分で打つよ。5割だったらいいよ」と返事が返ってきた。なにも言い返せないほどの正論だ。
S氏はあさじんさんにセットの代打ちを頼んでいるのではない。
厚意で彼の勝ちやすい場を紹介してくれたのだ。

私のもとに、すぐにS氏から連絡が来る。

S氏 「フィリア君の許可が降りないから、彼はセットに来ないみたいです」
私 「ええ??相談は受けましたが『セットに行くな』などとは一言も言っていないのですが・・・」

私 「とのことなんですけど、どうして私のせいにしたんですか?」
あさ 「すみません、5割は自腹でやれと言われて、断るための方便でそのようにお伝えしてしまいました」
私 「そんなすぐバレる嘘をついても仕方ないでしょう。経済的に厳しいならその旨を伝えれば、Sさんは理解してくれますよ」
あさ 「  」

彼の悪い癖だが、自分が非難されたときや頼み事をするときに、その場にいない人のせいにしてしまうことがよくある。これは矯正しなければならない。
経済的に終わっているのは仕方ないとしても、人格的に終わったら真の意味で終わってしまうからだ。


その後。

私 「あさじんさんは真ゼロ財産状態なので、2ピンセットを5割で打つのも経済的に厳しいようです」
S氏 「そうみたいだね。実は、この面子は確かにあさじん君が勝てそうなレベルではあるんだけど、即清算されないのが難点なんだよね。そういう意味でも、彼にとっては厳しいかも。」
私 「差し出がましい提案で申し訳ないのですが、彼が勝ったらSさんが立て替えるということはできませんか?本当にお手持ちがないらしいのです。無理そうでしたら私が出しても構いませんが・・・。」
S氏 「うーん・・・まあそこまで言うならわかったよ。僕も可哀想だと思っているから、彼が勝ったら僕が建て替えて現金を渡すことにするよ」
私 「ありがとうございます」
S氏 「ここまでしてやっても、彼は感謝しなそうだよね」
私 「それね」

根回しは完了だ。
あとはあさじんさんをやる気にさせるだけである。

あさ 「どうやら、勝ってたらSさんが即金で払ってくれて、負けたらツケでいいそうです」
私 「素晴らしい条件ですね」
あさ 「最初のほうはSさんが打って、途中から俺が交代する手筈になるそうです」
私 「それならそんなたくさん打たないから、トータル10万以上負けることは少ないでしょうね。リスク低めです」
あさ 「でも、0-1-4-5みたいな着順ならやばくないですか?レートは2ピンの4-7ですよ?」
私 「そういう激下ブレのことを考えたらキリがありません。勝ってお金貰えて、負けて立て替えてくれるなんて最強ですよ。負けたら日雇いでちゃんと返せばいいんですよ」

あさ 「・・・やってみるか」

やる気になってくれた。
私は、彼に破滅してほしいという気持ちは一切なく、本当に心の底から勝ってほしいなと思った
彼のセット相手は私の知らない方ばかりなので、それならばあさじんさんが勝ってお金を増やすほうが幸せである。

あさ 「僕が5割というのはリスクが高すぎるので、Sさん5割、俺3割、フィリアさん2割くらいの比率で乗っていただけませんか?
私 「え??まあ別にいいですよ。でもこの間お貸ししたお金はちゃんと返してくださいね。負けたときにSさんへの支払いがあるからこちらに返済できないというのは困ります」
あさ 「あ!そういえばフィリアさんへの返済が済んでいないことを考慮していなかった」
私 「優先的に考慮しろよ」
あさ 「今回はパスしておきます」

「今回はパス」ってこういうときに使う人いるんだ、と思った。
10月に森先生と競艇へ行ったときもそうだが、彼は定期的に私への返済を忘れてしまうことがあるらしい。困ったことだ。

私 「でもこんな良い条件はめったにないですよ。詳しい面子レベルはわかりませんが、どうやらそんな強くはないらしいですし。こんな美味しい話はあまりないのに残念ですね」
あさ 「改めて考えるとリスクがデカすぎるわ」
私 「リターンのほうがデカイですよ。借金なんて10万も20万も大して変わりません。いま全財産マイナスなんだから。
あさ 「良いことを思いついたのですが、フィリアさんが行きません?で、僕がフィリアさんに1割乗るみたいな

セットに行くべきか教えてくれと言ったり、2割乗ってくれと言ったり、挙句の果てに「お前が行け」。
傍若無人すぎて麻雀警察に通報する寸前だった。

私 「私が打つならあさじんさんに1割乗せる意味がまったくない」
あさ 「よく考えたらそうだ(^ω^;)」
私 「よく考えなくてもそうだろ」
あさ 「 灰 」
あさ 「とりあえずフィリアさんにはまだ返済が終わっていないので、いずれにしても俺とSさんの分配でやります」
私 「頑張ってください。応援してますよ。」



決戦前日、11月8日(金)。

あさ 「明日の面子が辛そうなので、とりあえずセットの参加は見送ろうと思います」

弱気な発言と共に、S氏とのやり取りをスクショで送ってきた。

S氏 「面子はピンの4-7になった。例の、このレートで◯00万円負けている人が来る可能性が高い」
あさ 「スジもわからない人が来るわけではないんですか?」
S氏 「その人は今日来る予定だったが、セットは流れた。明日は来ない。」

スジもわからない人とは別に、ピンの4-7で◯00万円負けている人もいるらしい(ちなみに◯は素数である)。

あさ 「こういうワケなんです。やるならスジもわからない人を狙うべきかと」
私 「言いたいことはわかります。しかしそんなことを選べる立場でないことはわかってますよね。こういうセットは気に入られることが大事です。面子を選んでるような人は嫌われて呼ばれなくなります」
あさ 「わかりました。麻雀においてはフィリアさんの方が詳しいですし、とりあえず明日は参加することにします

麻雀以外でもあなたのほうが詳しいことがあるなら教えてくれ、と思った。

あさ 「ところで、今回は特殊なルールだと思うのですが、どう打てばいいのでしょうか?」

通常、こういう質問には無料では答えないことにしている。
しかし、彼が人生で初めて鉄火場に参加するのを応援したいというのもあり、私は無料でアドバイスをすることにした。
詳しいアドバイス内容は割愛するが、祝儀牌が増えているため平均打点が上がり、それにともなって押し引きが少し変わるという基礎的な話だ。

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私 「 気合をいれろ!!あさじん!!! 

私はあさじんが居るであろう神奈川県に向かって叫んだ。
はるか南方から、「はい」という返事が聞こえた気がした。



決戦当日 朝6時。

あさ 「Sさんから連絡が来ない・・・どうしたらいいんでしょうか?」

彼の住むボロアパートから決戦の地まで2時間近くかかる。
早めに連絡を受けないと、この貴重なチャンスが失われてしまう。
私がそわそわしていると「いまSさんから連絡があって、ようやく面子と連絡を取れたから今から来いですと(笑)」とメッセージが届いた。

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彼にとって人生初の鉄火場だ。
思えば私も、人生で初めて高レートを打ったときは緊張していた。
さすがに「負けたらどうしよう」とまでは思わなかったが、手の神経に意識が行き渡らないような、変な違和感が生じるのは誰でもあることだ。
こういうときは彼を勇気づけて落ち着かせることが一番だ。

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「やりすぎかな?」と思うくらいに応援することが大事だ
当の本人からは連絡はなく、既読すらつかない。集中しているのだろう。
そこでS氏へ連絡してみることにした。

私 「あさじんさんの調子はいかがですか?」
S氏 「結局、ピンの4-7になって全額自腹でやるって」
私 「気合はいってますね!」
S氏 「いま2連ラス濃厚。通用してない。」
私 「やはりマネープレッシャーですかね?」
S氏 「顔のせいかも」
私 「服のせいかもしれません」

どうやら負けているようなので、私は応援を続行することにした。
私の念が届いたのか、少し復活して微プラスになったようだ。

S氏 「いま8回戦終了でちょい浮きです
私 「おお、頑張っていますね」
S氏 「十分戦えてる。負けても立て替えてやるってのが安心材料なのかもしれません」
S氏 「いま4-5万勝ち彼が勝っていてみんなイラついてるw
私 「最初はあまり打たないと言っていたのに、勝ってるせいで逆に熱続行してるんですかね」
S氏 「でも今回は全然大丈夫そう。めっちゃ集中して打ってるよ」
私 「安心しました。次回はありそうですか?嫌われてもう呼ばれないなんてことになったら悲しいです」
S氏 「嫌われてはいません。バカにはされてるけど」
私 「いつもどおりですね。安心しました」
S氏 「『彼はちょっと人と違うところがあるので、いろいろ多めに見てください』って言ってあるから」
私 「同卓者が理解のある方で助かりましたね」


私は応援を続けた。

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それこそ迷惑メールのように送り続けるのがコツだ。

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改めて見返してみると、まさにあさじん応援団である。
しかし彼を応援する気持ちは本物だ。
(※応援に使用した便利なスタンプ情報は、本記事の下部に記載致します※)

私は死闘を終えたあさじんさんに感想を訊いた。

私 「どうでしたか?」
あさ 「いやぁ・・・まじで疲れました。今日は運が良かったけど、面子レベルは低くないように感じます」
私 「ピンの4-7で◯00万負けてる人は、始めは下手ではなかったのかもしれません。しかし、負けが込むとズブズブとおかしくなるものです。非情だけど、勝負の世界ならそういう人を集中的に狙ったほういいですよ」

あっさじーんは「スジも知らない人と打ちたい」と言っていたが、このレートで2ヶ月打って◯00万円負けるのはなかなか悲惨だ。むしろその人がスジ知らないんじゃね?という感じだ。


あさ 「たしかに、彼は今日もずいぶんとラスを引いてたなぁ。いやぁしかし疲れた」
私 「お疲れ様です。またセットがあるかもしれないので、ゆっくり休むといいですよ」
あさ 「わかりました」

「ありがとうございました」というワードは最後まで1ミリも顔を出さなかった
しかし、そんな言葉がなくても彼の勝利だけで私は幸せである



翌日 日曜日。

あさ 「明日の昼にまたセットがあるらしい。正直いって、長期的に勝ち越せるかあやしい

また弱気になっている。これは良くない。
実際にあさじんさんのほうが強いか弱いかは大した問題ではない。
大事なことは「勝てる」と思い込んで突撃することである。

私 「大丈夫。この前だって20ゲーム以上打ってプラスだったんだから。冷静に打てば大崩れすることはないと思いますよ。麻雀の知識はあるんですから、落ち着いてパフォーマンスを100%に近づければ有利な勝負が出来ます。」
あさ 「わかりました。今回も参加します
私 「頑張ってください。よく食べて、よく水分摂って、よく寝てください」
あさ 「はい」

あさじんさんが100%のパフォーマンスを出しているところは見たことがないが、こうして勇気づけることが大切なのだ
勝負中の彼は熱中していて連絡を取れないため、その場にいるS氏にライングループ『 ASA-GSOMIA 』で実況してもらうようお願いした。

ASA-GSOMIAとは、あさじん情報包括保護協定のことである。
メンバーはS氏、おなじみの森先生、そして専属介護士の私だ。
彼のリアルタイムな情報を、GPS衛星よりも速いスピードで得ることのできる画期的なシステムである。

私 「彼が勝った場合の立て替えの件ですが、今回も引き続きお願いしてよろしいでしょうか」
S氏 「了解」
私 「ありがとうございます」
S氏 「でも彼は感謝しなそうだよね」
私 「それね」

今回も根回しは完璧だ。



あさじん人生2回目の鉄火場 当日。

S氏 「あさじんくんが遅れていて、こんなメッセージが来たんだけど・・・」

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S氏 「彼のヤバさが集約されています」
私 「気が狂っています」
森 「病気」
私 「小田急の快速は10分置きに出てるので、それで1時間遅れることはないですね」
S氏 「どうしてすぐバレる嘘をつくんだろうね」
私 「その場しのぎがモットーだからです」


その後、数時間おきにS氏から
「あさじん君、連ラス。今日はやばいかもしれない。心配だ。」
「あさじん君、4、2着。神妙な顔をしている」
「(添付写真)トんで点箱から点棒を出すあさじん君」
「本日初トップ。ちょっとリラックスできたかな」
とニュース速報のようにリアルタイム情報を知らせていただいた。


結局、その日のあっさじーんは、2万負け→トントン→微勝ちと紆余曲折したものの、最後の東風でマルAトップを取ってなんと38000円勝ち
初戦とあわせて6万円のプラスだ。

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その後、私はその日が終わるまで彼を褒め続けた。
家に帰るまでが応援なのである。

あさ 「皆さん強いので今でこそギリギリのラインだが、もっと弱い人が来てくれたら嬉しいですね」
彼は謙虚にそう語っていた。

こうして、彼の超高レートは出だし最高でスタートすることとなった。


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フィリップ
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