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カフェ出禁寸前事件 マグマ噴火編
【 前回 全財産6000円で雀荘へGO! ビンゴ編 】
場所は『珈琲貴族エジンバラ』。
本来は貴族たちの憩いの場であるが、今回は森先生の紹介ということで、あさあさのじんも特別に入店することができた。
森 「あさじんさん、ここは僕が奢りますよ。この3000円のブルーマウンテンなんてどうですか?感想聞きたい。」
あさ 「いや、さすがに迷惑かけてしまうので・・・」
森 「奢る側の僕が言い出してるんだから迷惑なわけないですよ。3000円のコーヒーなんて一生飲まないでしょ。これは良い機会ですよ」
あさ 「ぼぼぼ僕じゃ上手くレビューできませんし・・・そうだ!フィリアさんも、僕が珈琲に砂糖を4本くらい入れちゃうの知ってますよね??」
私 「5本でしょ。なんでそこ見栄張ったの」
あさ 「 灰 」
森 「5本はややきついな」
私 「砂糖5本入れたらさすがに缶コーヒーと変わらんよ」
あさ 「はい」
森 「それじゃパフェでもなんでも食べてください」
あさ 「うーん・・・それじゃこのパフェにします」
その豪華なパフェはすぐに届いた。1000円ほどするらしい。
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森 「あさじんさん、スマホいじってないではよ食べて」
あさ 「あ、はい」
森 「美味しい?」
あさ 「こんな豪華なパフェ食べたことありません」
森 「はい」
その後、あっさじーんさんは彼なりに競馬に向き合ってきたようで、森先生に質問をしまくっていた。
それに対し、森先生も無料で1時間以上コーチングしていた。
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森 「とりあえずあさじんさん、大事なのはきちんと自分で考えることですよ。
僕も最初は競馬予想を買って騙されたり、下手な人の理論を信じたりして、本当にたくさん負けました。
でも少なくとも千直に関しては、自分で考えて正しい導き方を見つけたから勝てるようになったんですよ。」
あさ 「はい」
森 「あさじんさんがやる気なら、いろいろ自分で調べて次のエリザベス女王杯の予想でもしてみるといいですよ。あさじんさんが望むなら考え方の添削をしてあげてもいいです」
あさ 「ほほほんとうですか!?・・・がんばります!!」
森 「気合いれてください」
こういうやりとり事自体、普通の人はツテがないと教わることができない。これはあまりにも恵まれた環境なのである。
あさじんさんもそれを理解し始めたのか、「本来なら俺が森さんに奢らなければいけないのにな・・・お金さえあれば・・・」と漏らすほどになった。早くnoteを書けという話であるが、これでも素晴らしい成長といえる。
一通りの無料相談が終わると、あっさじーんがトイレに篭りに行き、同時にここで平沢先生が離脱した。
森 「あさじんさん遅すぎない?トイレから逃げたか?」
私 「15分くらい籠もってる。。。。もうじき19時半になるね。そういえばそろそろMリーグ始まるんじゃないかな?」
森 「どうだろう?やるんじゃないかな」
私 「3人で魂を込めて応援しますか?」
森 「勝負だろうが・・・!!」
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*
魂を込めて応援するとは、お気持ちを精一杯のせて応援するということだ。
よく巷で行なわれているお気持ち乗せ応援は、1000気持ちポイントの総馬身などという用語の設定が使われているかもしれない。
4着の選手を応援した人は1着まで3馬身なので3000KP、2着まで2000KP、3着まで1000KP、合計6000KPを表明するかもしれない。
総馬身なので各々で計算すると、つまりは順位戦の6000-2000-2000-6000KPということになるかもしれない。あくまで推測だ。
3人の場合は相手が少ないため、同じKPでも表明するポイントは少なくなる。1,2,3着の場合、3着のサポーターは合計3馬身で済む。
と、ここでアクシデントが発生。
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森 「あれっ??もう南場やん!」
私 「まじ??勘違いしてた。どうしよう」
私が19時半から開始されると思ってチャンネルをつけると、すでに南1局になってしまっていた。いくらなんでも2回戦まで待つことはできない。
森 「これどうする?」
私 「幸い、点差がほとんど開いていないからハンデはつける必要なさそうだね」
森 「確かに。ってかこれ誰選んでも同じだな」
森先生との協議の結果、あさじんさんには点数を見ないでもらい、その代わり最初に選んでもらおうということになった。選択権があるというのはでかい。
・
・
・
あさ 「すみません、戻りました」
森 「遅すぎっす。あさじんさん、Mリーグっす」
あさ 「え??」
私 「魂乗せて応援しますよ。1馬身500気持ちポイントくらいでやりましょう。1-2-4着で-2500KPくらいのお遊び。」
あさ 「え?!い、いや!僕はやめておきます・・・」
私 「南1、東家から和久津、白鳥、前原、内川。トップとラスの点差は16400点。はよ。」
あさ 「え?い、いや、点数わかりませんし」
スっと森先生がストップウォッチを差し出す。30秒からカウントダウンが始まっている。
私 「和久津の親番。南家の白鳥からリーチかかっちゃった。あさじんさん、はよ。南1終わっちゃうよ」
あさ 「いや、しかし、鐘が」
私 「表明はいつでもいいです。こういう遊びに付き合ってくれないなら、私が時間を削って日常のアドバイスしているのは意味ないからやめますよ」
何事もギブアンドテイクだ。
日常生活やギャンブルの方針など、週に10回以上の相談を受けているが、私はすべて無償で教えている。
それもこれも、彼にヒューマンになってほしいからである。
あさ 「いや、うーん・・・」
あさ 「うーん・・・うーん・・・じゃあ白鳥プロで」
点数を見せると、彼は「おおっ!!白鳥プロ選んでよかった!!」と安心していた。
次に私と森先生がじゃんけんを行ない、勝った私に選択権が与えられた。
私 「しかしこれすごく悩ましいな」
森 「まじで誰でもある。白鳥さん残ってたら白鳥さんしかなかったけど」
私 「じゃあアマゾネスさんで」
森 「恐いとこいくねw」
あさ 「ええっ?wwマジですか??www」
私 「やや危ないがアドバンテージを信じます」
森 「僕は前原プロで」
これで三人の応援先が決まった。
あさじんさんが選択した白鳥プロは、南1のリーチは空振りに終わるも、前原プロとの二人聴牌により500点のプラスとなった。
南2局。
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北家のアマゾネス和久津プロが2-5sで聴牌。
手が安いので、牌をエレベーターライン上でツモ切る「テンパってますよアピール」で牽制。ここまで来ると降りる牌などほぼない。
しかし西家の内川プロは、器用に和久津プロの現バリドラ8s単騎で聴牌していた。
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私 「和久津さん、不要牌を音速でツモ切ってる。めちゃめちゃ不安だ・・・」
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その後8sをツモり、当然のように0.1秒でツモ切り。これが内川プロのダマ満貫に放銃。
あさ 「え?ドラの8s切るんですか?w」
私 「切らないでほしいよ」
南3局。
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私 「え?」
森 「ん??」
疑問手があるとつい癖で反応してしまうが、キリがないので追求はしない。
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親の前原プロが白を仕掛けてすぐに6-9mの1500点を聴牌。
これに待ッテマシタ!とばかりにアマゾネスさんが9m放銃。
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森 「めちゃめちゃばらまくやん」
私 「非常にきつい」
アドバンテージは一瞬で消え去った。
南3-1。
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前原プロがこのパラパラチャーハンのような配牌を見事に仕上げ、
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ドラ対子落としでベタ降りしていた白鳥プロを御用。6100点の移動。
森 「前原さん強すぎワロタ」
私 「いや、白鳥さんこれはマジできついね」
森 「確かにきつい」
あさ 「・・・・・・」
アマゾネスの無間放銃で安心していたあさじんさんだが、これにより完全に真顔になっていた。私でも真顔になる。
南3-2。
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和久津プロが当然の白ポン。加点して2着でオーラスを迎えれば最高だ。
しかし進撃の前原がこの仕掛けをほぼ無視してこのシャンテン。
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森 「前原さんまじで勢いあるわ。これ東を引いて即リーもある」
この予言がすぐに的中する。
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山から10枚同時にツモっても12%しかツモれないはずの東を一発でツモって聴牌。当然のリーチ。
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「当選おめでとうございます」と言わんばかりにアマゾネスが御用。7700は8300。絶望的だ。
あさ 「え?wなんでいま6s切ったんですか?www」
私 「こっちが聞きたいよ」
あっさじーんさんがまた安心しだした。一喜一憂している。
南3-3。
アマゾネスさんがドラの西と9pのくっつきの向聴形に。
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これが手なりで進み、5-8sの聴牌。
三色が崩れる残念な入り目だが、親が人質に取られても当然のリーチだ。
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これに対し、下家の白鳥プロが無慈悲にも一発で5sを掴む。
当然ツモ切り。3900は4800の放銃。
あさじんさんの顔が曇っていく。
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オーラス。
前原プロが戦車のように喰い仕掛けでリードするが、和久津プロが手をコネコネしてチートイの9m単騎を聴牌。
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ややきついが、私のためにドラの6sを前原プロの仕掛けにプッシュ。
これが功を奏して内川プロの9mをキャッチ。
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着順は
1着 前原プロ(森)+1500KP
2着 和久津プロ(私)+1000KP
そして 4着 白鳥プロ(あさじん)-2500KP となった。
とそのとき・・・・・・。
「ガシャン!!!」
鈍い破裂音が店内に響き渡り、貴族の空間が一瞬で凍りついた。
音の発信源は私の目の前だ。
あさあさのじんがドッスンのような表情で握り拳をテーブルに叩きつけていた。
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通路を挟んだ向かいの女性は、イヤホンを外しながら目を丸くしている。
にぎやかだった他の貴族たちも、会話をやめてこちらをポカーンと見つめていた。
珈琲貴族で奴隷の発狂を見るとは思いもよらなかったのだろう。
あさ 「ふざけやがって・・・!!!」
破裂音は彼のマグマが噴火した音だったのだ。
あまりの出来事に、私の口からは「アンビリバボー・・・」と謎の言葉が漏れてしまった。
私 「・・・え??どうしました?」
あさ 「ふざけやがって・・・!!」
あさ 「許さねえからな・・・!!」
私 「えええ〜、さっきまで普通に見てたやん。ラスったからキレてるんですか?」
あさ 「そ、そもそも!!最初の時点で点数わからないのは不公平だろうが!!!!」
あさ 「だから俺はやりたくねえって言ったんだよ!もう二度とやらねえからな!!!!」
森 「ええ?いきなりどしたん」
あさ 「もう二度とやらねえから!!!!」
激昂したラージャンのように怒涛の連撃を繰り広げてきた。
1000気持ちポイントで許さないと言われたのは生まれて初めてである。
許されないのは構わないが、それよりも彼の怒号によって壊れたこの店の雰囲気のほうが心配だ。
2名の店員さんが恐る恐るこちらへ近づいてくる。
森 「あ、大丈夫っす」
店員 「は、はい」
その店員さんはすぐにオープンキッチンのほうへ戻り「OKでーす!」と伝えていた。
あまりOKではない。
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私は店の天井で輝くシャンデリアを細目で眺めながら、あっさじーんさんが職場の上司を噴火させてグーで殴られた話を思い出していた。
彼の無意識の失礼な発言や態度が積み重なって、ついに怒りが爆発した上司から殴られてクビを宣告されたのだ。
どちらか一方だけでも辛いのに、殴られた上でクビを宣告されるのはさすがに可哀想である。
彼いわく、キレる上司をさえぎり、正論をどストレートにぶつけたのが最後の怒らせポイントだったらしい。
当然のことだが、怒っている人に正論をぶつけても火に油だ。
まずは謝罪して相手に落ち着いてもらってから、こちらの意見を遠回しに伝えるほうがリスクが小さいのである。私はこれを小学3年の頃、キレるメンヘラ担任のおかげで身につけていた。
そんなことをぼんやり考えていたところ、視界の端であさじんさんが顔を伏せたことに私は気がついた。
なにやら頭を抱えて俯いている。怒鳴ったせいで頭が痛いのだろうか?
先ほどの噴火上司の話を思い出したついでに、ちょうど良いので実践してみようとした。
私 「あさじんさんに先に選択させたとはいえ、点数を伏せたのは不公平でしたね。みんなでじゃんけんするべきでした。申し訳ないです」
あさ 「・・・・・・」
私 「・・・・・・(^ω^)?」
あさ 「はぁ・・・・・・」
私 「え?」
あさ 「すみません・・・こんなことで怒ってどうするんだ・・・」
森 「ええっ?」
あさ 「普段ならこんな程度のことで怒らないのに・・・金欠と、これからの不安で冷静になれないんです」
(マジで追い詰められてるやつやん)という顔で森先生が私を見る。
あさじんさんの後方の女性もまったく同じ顔でこちらを見ていた。
森 「え?そんなにですか?最初に言った通り、表明はいつでもいいんですよ」
あさ 「ありがとうございます。12月中には表明させていただこうと思います。。。はぁ」
思ったよりだいぶ早く怒りをおさめてくれたようだ。
普通の噴火は爆発が起こった後もしばらくの間は被害が続く。そう考えると彼の爆発は差し詰め、噴出花火といったところか。
私 「たぶん疲れてるんですよ。あまり睡眠も取れてないようだし、体調も良くないって言ってたし、それに金欠ですし」
あさ 「・・・灰」
後になって彼にヒアリングを行なったところ、職場の経営状況が悪く、今月以降は彼の給料がどんどん減っていくらしい。
どう考えても危ない職場なので早く転職したほうがいいだろう。
彼を雇ってもいいという方は、本人に連絡してみるときっと喜びます。
*
あさ 「あの・・・」
帰り際、あさじんさんが店員さんに話しかけようとしていた。
「奴隷なのに珈琲貴族で暴れてすみません」と謝ろうとしているのかと耳を澄ましていると、
あさ 「パフェっていくらですか?」
店員 「1050円でございます」
あさ 「森さん、1050円お渡しします」
森 「え??いやいや、奢りますよ」
あさ 「いや、本当にいいんです」
彼は「迷惑をかけてしまったので」と奢られる予定だった自分のパフェ代 1,050円を自腹で払っていた。
たとえ相手のほうが悪くても、自分に少しでも悪い部分があればとにかく謝罪をして誠意を示す。
大人としては当然のことだが、出来ない人はとてもたくさんいるのだ。
誠意を示すために全財産の半分を差し出せる人がどこに居ようか。
彼の予想外の素晴らしい対応に、私は涙を禁じ得なかった。
帰り際に彼が言う。
あさ 「今日は騒いですみませんでした」
私 「いえいえ、私達のほうこそ軽率な提案をしてしまいました。あさじんさんは悪くないですよ。何も気にしないでください。」
あさ 「やはり金欠や将来の不安が原因だと思います。note書かなきゃな・・・」
私 「そうだぞ」
森 「僕はあさじんさんのnoteを期待してますよ。本当に書いてくださいね」
あさ 「はい」
*
その後。
平沢 「あの後どうだった?」
私 「Mリーグ外ウマであさじん山が噴火した」
森 「キレ方が2500万負けた人のキレ方だった。2500万負けてようやく許されるレベルのブチギレ」
平沢 「やばいね」
森 「あれやって出禁にならないの競馬場だけだからね」
私 「普通の人にはちょっと刺激が強すぎるかも」
森 「最高の体験だったけど、エジンバラ出禁はきついから次からはドトールだね」
森先生は最後まで笑っていた。
【次回予告】
競馬、ビンゴ、外ウマで真・破産になってしまったあさあさのじん。
起死回生の2ピン東4-7 赤5青1のセットに参加することを決意。
彼はこの先、生き残ることができるのか・・・?!
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