第16話 賭博破戒録ASJ
仮想通貨のビットコイン(通称BTC)が賑わっていたころ。
私はいつものように、あさあさのじんを介護していた。
「仮想通貨なんだから元手はいらない」のであれば、「仮想通貨だから勝っても儲からない」のである。
私は(幼稚園児みたいだな)と微笑んだ。
「いつも介護大変ですね」と言ってくれる方は多いが、このように私も”癒やし”を貰っているのである。
*
我々は数々の最先端ゲームを行なってきた。
符計算の要らない麻雀風パズル・・・東天紅。
スピードアップした麻雀風パズル・・・マイティ東天紅。
ほぼパチスロ・・・マイティーフィーバー。
全てはシナプス不全であるあっさじーんさんの脳の活性化のためだ。
ここまでくると太古の麻雀(一発赤裏ナシの四麻)なんてする気が起こらない。
そろそろマイティフィーバー(以下MF)も飽きてきた頃。
私は日吉方面からさらに最先端の三麻を仕入れてきた。
名を「司(つかさどり)」と言う。
特徴を簡単に説明すると、MF東天紅に
「發=ソウズマイティ」
「中=ピンズマイティ」の2つを加えたものだ。
司という名前はそれぞれソウズ・ピンズを司っているからというのがその由来らしい。気が狂っているとしか思えない。
大多数の方が想像できるように、マイティ牌が4枚から12枚に増えるため、テンパイ速度はかなり上がる。ただし、
上図のような牌姿ではソウズマイティが固定されるため、147p南 待ちになる。イメージほど待ちは膨れ上がらないのだ。
この高度に複雑化されたじゃんけん大会を、あっさじーんさんが気に入らないことがあるだろうか?いやない。
*
私 「司やるっしょ?」
あさ 「やりたいです。あ、でも鐘が
私 「とりあえず歌舞伎町の◯◯に12時ね!16時まで!」
あさ 「はい」
場所は歌舞伎町、時間は16時までにした。セット後にそのまま放流すればピン東へ行くだろうと思ったからである。
爆勝ちしても爆負けしても面白い。
三人目は体重115kg(当時)のひらさわ先生を招致した。
私 「あさじんさんと司やるよ!」
平沢 「あい」
ついでに東京に遊びに来ていたS君も誘い、四麻ベースで司をやることになった。
仕事もこれくらいスムーズだといいなと思った。
*
マイティフィーバーでも、白がたくさんあると40秒近く長考するあっさじーんさんだが、發中マイティになるとどうなってしまうのか?
パニックをおこして大爆発したりしないか心配であった。
マイティ牌が3倍になり、鬼長考も3倍近い頻度でおこる恐れがあるので、私はあらかじめ本を持参していた。
あっさじーんは初っ端からナイストリップをし始めた。
あさ 「おおおっ!!!!!これはっ!!!!!」
興奮しながら競泳の飛び込みのように卓縁に手をかけた。
平沢 「あさじんさん、ちょっと声のボリュームを・・・」
あさ 「ええっ?!あ、すいません」
ピン東で働く平沢先生が、メンバーとしてきちんと対応してくれた。
ここはフリー卓とセット卓をあわせても5卓ほどのお店だ。
変に騒ぐと出禁になってしまう。これ以上の粗相はよろしくない。
しかし、ここから事件が起こる。
絶好調で親番を迎えたあさあさのじん。
南ポン。
東をマイティ含みでポン、打6s。
北ポン、打6p。
異常事態である。
あさじんの呼吸も荒くなっている。誰が見てもほぼ確実に四喜和だ。
そして、次のツモ番。
大長考し・・・打西。
西は私の手の内に2枚ある。暗刻からの切り出しはない。
S君が1sを切ると、彼から「ロン!!」の声。
手牌を見ると134s白の1245s待ちの親満であった。
平沢 「あれ?どうして西切ったんですか?」
あさ 「えっ?」
平沢 「1s切れば25s西待ちの役満ですよ」
あさ 「ああっ!!??おわあああああああああ!!!!!!!!」
あさじんは出禁咆哮を放った。
私 「あさじんさん、控えめにね」
あさ 「ああっ!?さっきまで小四喜だとわかってたのに!なんで西切ってんだ!!??」
小四喜のことはわかっていたらしい。
あさじんさんが ”数分ごとに人格が入れ替わる” ということを知らないS君は、お笑いのライブを見に来たかのようにゲラゲラ笑っていた。
平沢 「あさじんさん、病院いくんだねぇ」
私 「早く気付いて、認知症。それは脳の疾患です。」
あさ 「灰」
配牌・ツモ・運、すべてが揃っていたのに、あさあさのじんには "何か” が足りなかった。
彼はこの役満を逃してから流れを完全に失い、1200pt=6,000気持ちポイントを表明することになった。
*
私 「あさじんさん、今日は調子悪かったですね。いつもなら小四喜をちゃんと覚えてたのにね」
あさ 「そうですね・・・。なんか打ち足りないなぁ。サンマでセット続けたりなんかは・・・?」
カチャンッ と、あさじんが私の敷いたレールに乗る音がした。
私 「今日は私も含め二人残れないので、すみません」
あさ 「はぁ、そうですか。残念だなぁ」
残念と言いながら闘志のオーラを残したあさじんは、そのまま駅と反対方向 ーーー 歌舞伎町の奥地へと向かって行った。
その夜。
【 第17話 マグナムトルネード 】