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【あっさじーん伝記】 雀荘出禁危機


 7月21日 月曜日、あさちゃんからぶっ飛んだお悩み相談が来た。

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 彼の41年間連敗の人生と比べたら、運ゲーの7連勝なんてどうということはない。

 そもそも、すごろくを操作して勝つとしたら、コースとして敷かれた牌を裏側から読んだ上でサイコロを操作しなければならない。手でサイコロを振るならまだしも、自動麻雀卓の場合はボタンを押してケースの中に閉じ込められたサイコロを遠心力でカラカラとまわす仕組みだ。ボタンを押す前の状態のサイコロの位置、出目、向きなどまで正確に操作できないとまったく意味がない。

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 はっきり言ってしまうが、あさちゃんが森くんや私と人間力の勝負をして勝てるわけがない。「負けないことを祈るか」というセリフがそれを物語っている。私達は人生でそんなこと思ったことは一度もないのである。

 彼にアドバイスしたように、すごろくの肝は人間力と「心をこめてコマを選ぶこと」だけだ。


 7月22日 火曜日。 この日の昼食は新宿三丁目の希望軒だ。


私 「あさちゃんツイッターでなにか言ってるよ」

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 仕事は休んでもセットだけは絶対に休んではいけません。
 彼と出会って学んだことのひとつは、こういう集まりにも社会への適合性や大人としての常識の有無が問われるということだ時間を守る、体調を管理する、これらは人として当たり前にできていないといけないことである。


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森 「すごろくが寝ながらでもできる?そんなことじゃ勝てないよ。気持ちがすごろくのほうに向いてない。やる前から負けてる。」
私 「寝ながらやってもいいけど永遠にスタート地点のままだね」


 ラーメンをすすり倒した我々はすぐさま店を出る。そして絶対にコマを忘れるであろうあさちゃんを待つため雀荘へ向かった。





 まずはゲシェンクから始める。


 以前の記事でも簡単に説明したように、ゲシェンクはルールが非常に簡単なカードゲームだ。

・カードに書かれた数字はそのままマイナス点。
・チップは1枚につき+1点。
・手番のプレイヤーは、表示されたカードを引き取るか、チップを1枚払ってパスできる。
・カードを回収すると、そのカードをパスするために払われたチップをすべて回収できる。
・チップを持っていない人は、カードを必ず引き取らなければならない。
1人のプレイヤーが連番の数字を引き取った場合は、一番小さい数字のみをカウントする(19と20を持っていたら19のほうだけカウントする。19,20、21、22と持っていた場合も19だけカウント)。


森 「もう13時だけどあさじさん来る気配ないやん」
私 「森くんのゲシェンクツイートを見て、これが終わるまでどこかで時間つぶしてる可能性まであるな」
森 「いやそれはまじである」


 13時半をまわったころ、「13時には着けると思います」と言っていたあさちゃんが遅れて到着。思ったよりは早い。

あさ 「着いて早々にすみませんが、コンビニにモンスターエナジーを買いに行ってきます」
森 「このお店にレッドブル売ってますよ」
あさ 「いや、300円は高いんでコンビニへ行きます」
森 「 灰 」

 期待値の鬼は健在である。

あさ 「あと、なにかほしいものがあれば買ってきますけど」

 これには驚きだ。あのあさちゃんが周りに気を使っている。これも雀荘メンバーの業務で学んだのかもしれない。遊図は人を成長させる素敵な雀荘です。これほどの能力向上が認められるなら、煽られまくったストレスで多少ガン疑惑が出ることを差し引いてもお釣りが出るくらいだ。


 モンスターを買って戻ってきたあさちゃんにすぐさまゲシェンクを勧める。しかし「ルールがよくわかりません」と意味不明な一点張り。

 前回の記事で書いたように、彼にはルールを理解してもらったはずなのだが、もう別の人格に変わってしまったのだろうか。

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 ルールも戦略もよくわからないというあさちゃんのために、数ゲームのあいだ観戦してもらうことになった。

私 「途中でわからないことあったらなんでも聞いてくださいね」
あさ 「ハイ」

 こうは言ってみたものの、ゲーム途中で彼のほうを見ると10回中10回の割合でツイッターを眺めていた。ここまで向き合う姿勢ゼロの人は見たことがない。

私 「どう?ルールは簡単だから1回やってみませんか?」
あさ 「いえ、ルールがよくわからないので結構です」

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1ゲーム後。
私 「どう?ルールは簡単だから1回やってみませんか?」
あさ 「いえ、戦略がよくわからないので結構です」

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さらに1ゲーム後。
私 「どう?ルールは簡単だから1回やってみませんか?」
あさ 「いえ、僕は結構です」

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 ツイッターいじってたら永遠にルールわからんだろ。



 しばらく経って稚児さんが休みたいというので、代わりにあさちゃんを交えて通常ありえないノーレートのゲシェンクを提案。

 が、彼はこれにもノーを突きつける。お金ないからできないというならまだしも、ノーレートの誘いを断るのなら「ノーレートは違法だからできません」くらい言ってくれないと到底納得することなんてできない。

 「ノーレートだからやろうよ」「チップとカードを使えばルールわかると思うよ」こんな誘い文句でようやく参加してくれることになった。

 我々が保育士よりも100倍わかりやすく説明させていただいたおかげで、なんとなくルールは理解できたと言い出すあさちゃん。
 しかし、ルールはわかっても戦略がわからないと駄々をこね、20のカードを回収した森くんのプレイにいちゃもんを付け始める。

あさ 「森さん、これは20のカードにチップ5枚乗ってるからマイナス15点ですよ?」
森 「期待値の鬼じゃん。でもね、これがあとあと効いてくるんですよ」
あさ 「なんでマイナス15点なのに回収するのか、まったく理解できない・・・」

 天井を向いて期待値計算をするあさちゃんに私が解説する。

私 「この瞬間はマイナス15点ですけど、チップを増やすことで要らないカードをパスできますし、19や21のカードが出たときにノーリスクでチップだけ回収できますから、良いプレイだと思いますよ」

 あさちゃんは森くんの20のカードを見つめ続け、私の話はまったく耳に入っていなかった。無駄骨である。

 その後。誰もいらない34のカードが表示される。こうなると押しつけ合いになり、チップをあまり持っていないプレイヤーがとても不利になる。

あさ 「あ、あの・・・・・・」
私 「なんでしょうか?」
あさ 「チ、チップがないです・・・・・・」
森 「もう全部使っちゃったんですか?給付金と一緒やん」

 結局、チップパンクで無限にカードを押し付けられてマイナス85点でフィニッシュ。他3人は20~40点でまとまったので、総馬身だとするとマイナス160ポイントあたりになり、1点30気持ちポイントだとすると4800の負けだ。

 あさちゃんは「森さんはあんなにカードをたくさん取ったのになんでこんな小さいスコアになるのか、全然わからない・・・」と首をかしげ続け、それ以降は一切参加することがなかった。

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あさ    「やっぱりルールが微妙なゲームで3〜4000KPも動くゲームなんてできんわ。四麻ならまだしも」
私    「じゃピンで四麻やりますか」
あさ    「いえ」
私 「じゃ言うなよ」
あさ 「 灰 」

 あさちゃんに永遠にツイッターをいじらせているのは可哀想なので、ここで彼のためにすごろくへ移行。彼の参戦が決まった。

 レートは彼に合わせて1点5気持ちポイント(KP)だ。

 「あさじんさん、コマは持ってきていますか?」

 警察官が事件の関係者にアリバイを訊くように、すごろくをやるときには一応この質問をしている。あくまで形式上のものだ。答えはわかり切っている。

あさ 「あっ!忘れてt
私 「知ってます」

あさ 「じゃ、このモンスターのフタを使います!」

 神聖なゲームのコマにウルトラカフェインドリンクのフタを使うなんて言語道断。この時点で負けは確定したも同然だ。

あさ 「夜勤のためにここを16時に出ないといけないので、2ゲームくらいだけになります」
森 「ちゃ」

 2ゲーム限りの参戦となった。なにしに来たのだろう?



 五反田決戦のときにドラを35枚にしたのが気に入らなかったらしく、あさちゃんの「さすがに多すぎる」というクレームが通って20枚まで下がった。

 しかしそんなことはお構いなし。あさちゃんは一発目から唯一のWドラの3sを引いて3は6は12オール払い。絶好調だ。

あさ 「はぁ・・・」

 その後も予定どおり草(ソウズ=マイナス)を踏みまくって点棒をばらまいたあさちゃん。まるでサイコロ操作をして意図的に草むしりしているように思えた。1戦目は当然のマイナスで終える。


 そして2戦目の第1投。
 私が透視能力とサイコロ操作能力を発揮し、8の目を出して金5pの50点オールを掘り当てる。黄金郷の発見だ。

 それに続こうとするあさちゃんが、同じく8の目を出そうと雄叫びをあげる。

あさ 「ゲロッッッッッッッ!!!!!!!!」


あさ 「はぁ~・・・出ないか」
私 「ゲロでたら困ります」


 その後、ドラドラの發を引いて次回2倍→4倍→8倍のチャンスが来たあさちゃん。6の目を出して9pを引けば9点×8倍=72点オールもらいになる。

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 気合が頂点に達したあさちゃん。すごろくはこうでなくてはいけない。

あさ 「ホイッッ!!ホイッッ!!・・・ホエェ」


 最期に力なく点棒を叩きつけているのも完璧なマナーだ。ちなみに結果は東を引いて8回休みとなった。

 彼は以前こう話してくれた。

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 冷静さを失っているかどうかは客観的なことなので皆様の判断におまかせしますが、個人的にはこれが冷静ならチンパンジーも常に冷静ということになると思います。

 トリップによって急激に血圧が上がり、8回休みで急激に下がった影響もあり、その後のあさちゃんは意気消沈しながら草をむしり続けていた。


 お気持ち表明タイム。あさちゃんのスコアは-513で 2565気持ちポイント負け。

あさ 「最初からすごろくやってたら俺が勝ってたなw」


 まるでゲシェンクで負けてすごろくで勝ったかのような捨て台詞を吐き、どこか爽やかな表情で仕事へ向かった。


 あさちゃんが消えると、1卓だけ立っていたメンバー3入りのフリー卓が割れ、お客さんとメンバーさんがこちらやってきた。全員森くんの友達だ。

「さっき、来い!来い!って叫んでたのすごかったね」
「フリーの途中なのにみんなこっちのほう見ちゃったよ」
「今日は人少ないからまだセーフだったけどね」

 彼のスター性が皆を振り向かせたのだ。しかしお客さんがたくさんいたら出禁もありえたかもしれない。



  その後、あさちゃんから本日の感想が届けられる。


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 そりゃそうです。


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 セットは休んでも仕事だけは絶対に休んではいけません。
 彼と出会って学んだことのひとつは、きちんと出勤することで社会への適合性や大人としての常識の有無を示せるということだ。時間を守る、精神を管理する、これらは人として当たり前にできていないといけないことである。




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フィリップ
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