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【あっさじーん伝記】 復活の日
世間はコロナの影響で半ば世紀末のようになってしまった。
フランスやイタリアでは外出禁止令が発令され、日本でも「どうやら人混みは本当にやばそう」という意識が浸透してきた。
どこへ行ってもマスクは売り切れ、悪質な転売によって通貨のように取引される事態に対し、政府はマスク等の日用品の高値転売を法律で禁止するほどになった。
けれども政府の禁止令などというのは実はほとんど効果はなく、今度は別商品をメインに据えてマスクとセットで売るという「抱き合わせ商法」が流行り、完全に脱法ハーブと警察のいたちごっこのようになってしまっている。
いつまで経っても終わりの見えない戦いに市民たちは疲弊し、自粛ムードによって飲食店の売上も大幅に落ち込んでいく。負のスパイラルだ。
しかし、こういった情報もテレビや新聞、ネットニュースなどから得るものであって、自分の関心のないことには一切興味を示さず1ミリも記憶にとどめない人もいるだろう。
私の知り合いにも一人いる。彼はどこまで現状を理解しているのだろうか?人混みなどのいわゆる「3密」からきちんと離れているだろうか?私は彼がどういった対処をしているのか気になった。
そう、その彼とは、
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もちろん、あさあさのじんである。
*
2020年3月31日
私は、絶対にコロナを深刻にとらえていないであろうあさじんさんに「気をつけてね」と勧告した。すると、それはいつもどおりパーフェクトスルーされ、一瞬で別の話題にチェンジされてしまった。
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これはあさじんさん、森くん、私の3人からなるLINEグループ『珈琲貴族エジンバラ』でのやりとりだ。
名前の由来はあさじんさんがラージャンのように激昂したときの喫茶店の店名なのだが、あの事件は私と森くんの浅はかなイジリのせいで、彼のなかのマグマを噴火させてしまったことが原因である。もう二度とあのような失礼をはたらかないという反省のお気持ち150%によって、このグループは名付けられた。
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普通、お金を貸してほしいときは 金額、使い道、利息、返済期限、返済方法などを先に借主側から細かく説明するものだが、 こちらから質問しないと答えてくれないというこの構図をアコムやレイクの人が見たらラージャンのように激昂するか、アルバトリオンのように龍属性の咆哮をすると思う。
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詳しい内容を聞いていくと、どうやら知人のスロプロにノウハウを伝授してもらってガチで稼ごうとしているらしい。
世の中そんな甘いものではないことは彼が一番よく知っているはずなのだが、麻痺しているのかコロナの影響なのか、謎の自信と「ここは行くしかねぇ」というチキンレース的な自暴自棄さを感じたのがいささか不安になった。
通常は融資としての申し入れであれば、こんな雑な計画は断るべきなのだが、前述のように森くんと私にも彼に幸せになってもらいたいという気持ちはまだ残っている。あさじんさんの話す内容が実現してwin-winの関係になれるならそんな素晴らしいことはない。
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森くんがすかさずGODを勧めているのはご愛敬だ。
私はスロットのことはよくわからないので、なんだか面白そうという理由で条件付きで貸してもいいと伝えることにした。
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いくつか面倒な条件はあるとはいえ、無利子で1年以内に返済すれば良いのならあまり悪くないのではないだろうか。
翌日、4月1日。
彼はツイッターでいつもの勝負前のダウナー状態になった。
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彼のダウナーに対しては無数のリプライが届いた。
「絶対に無理だからやめとけ」
「コロナのこの時期から始めるとか正気か?」
「これからどんどん難易度上がっていくよ」など数々の事実が寄せられ、ダウナーはさらに奥地へと落ちていった。
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私もいつも迷惑かけれているからまったく気にしない。
が、彼がしょんぼりしていると私も悲しいので、本当に頑張ってほしい。
*
4月4日
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「コロナ気を付けてね」という私の助言はまったく耳に入っていなかった。とはいえ、これだけ若者が出歩いているのだから、メディアと全くつながりがないあさじんさんがコロナに危機感を覚えないのは自然といえるかもしれない。
私とあさちゃんのじゃれ合いは続く。
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この日、私がさんざん「コロナ気を付けてね」とサブリミナルのように言った甲斐あってか、ようやく危険性や世界の情勢を認識しはじめた。ここまでに6日かかったが、なんとかコロナに感染する前に聞き入れてもらえたようだ。
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少なくとも私の記憶では依存症が治ったという話はまったく聞いていない。
彼は仕事の合間に足しげく雀荘へ通っていたが、SEKIROやダークソウルなどのゲームにドハマリしてその機会を消費していただけだ。これも細かく言えば私の福祉のおかげなのだから、国は私にいくらか介護費を出してもいいと思う。
ただ、彼のなかで「依存症をなおしたい」という気持ちがあったことは事実であるはずだ。それほどまでに麻雀にはなにか強い魔力があるということは言うまでもない。
4月7日
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決戦の日が近づいてきた。
ただ、彼はやることなすこと裏目に出る特性を持っているので、まだまだ不安でいっぱいだ。
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その前に「コロナ気を付けてね」を完全に無視していることはどう考えているのだろうか?公式の声明が待たれる。
パチ屋へ行く行かないは置いておいて、そもそもこの日は「緊急事態宣言」が発出されるのだが、その影響でパチ屋や雀荘などは基本的に営業休止要請が出されるだろう。反り立つ壁はどんどん高くなっていく。
その後、前日に立てておいたフラグを華麗に回収したあさちゃん。
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本当に病院に行った方がいいです。
4月10日。
この日の交流はツイッターのじゃれ合いから始まった。
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森くんと私の二段ロケットが決まった。わずか3秒差だ。
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彼とはもう4年ほどの付き合いになる。だいたいこういえばこう返してくるなと想像できる。今回のようなガトリング砲にも、「はい」「わかりました」の2択だろうと決めつけていた。
しかしそんな私に対し、彼は予想外のレシーブを返してきた。
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なんといきなりのお祭り宣言。楽しくなってきた。任天堂の公式発表であるニンテンドーダイレクトで「いまこの瞬間からプレイできます!」と告知されたときのような気分だ。
このときばかりは、なぜかあさじんさんのことがカッコ良く見えた。お世辞ではなく事実である。
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私と森くんは個人LINEでとても盛り上がった。
コロナ関係だけは気を付けていただきたいが、これでもパチ屋の前までは行ったのだ。充分に進展したと言えるだろう。
喜ぶ私たちに、あさちゃんは続けて予想外なパンチを打ち込んできた。
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パチ屋は空いていなかった。それは彼のせいではなく不運なのだが、それならすぐ座学に移るのがベストだろう。麻雀はあまりよくない。
彼は麻雀依存症だ。ここでなにを言っても仕方がないかもしれないが、ただ私たちも、期待を上げられた状態からジェットコースターのように落とされたのでは納得がいかない。
運のいいことに、新宿界隈はほぼすべての雀荘に私と通じている友人がいる。フィリカスネットワークを使っていろいろ訊いてみたところ、新宿西口ZOOにいるとの情報が手に入った。
私は遺憾の意を込めて軽いジャブを打ってみた。
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私のネットワークは雀荘だけに留まらない。すべてのネットワークをフルパワーで使ったところ、西新宿で働く王(ワン)君 から連絡が入った。
「ササキサン、コレ、アサジインサンジャナイノ?」
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「こんな負のオーラ放ってるのあさじんさん以外にいるわけねーだろ!」というツッコミと共にお礼を返した。
王君は「お役に立ててなによりだワン」と喜んでいた。
ジャブがあまり入っていなかったようなので、次はボディーブローだ。
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渾身のボディブローはあまり効かなかったのだが、事態は急変した。
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なんと、ひろーくんとコラボするらしい!
ひろー君とは今をときめくYoutuber 麻雀警察のことだ。
私のテンションは一気に大気圏に突入した。
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あさじんさんは見かけによらず天邪鬼なところがあるので、「別になんでもいいけど」といえば自分でそれまでの自分を否定するのだ。
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その後、いろいろな情報網を駆使したところ、無事撮影は成功したとの連絡が入った。ひろーくんの用意した専用のスタジオで、カメラやライトなども本格的なものを使って撮影。そしてどうやら彼の得意な「激辛料理」を食べる動画が出来上がったらしい。
有料でも観たいところだが、おそらく「麻雀警察とのコラボ」というような形でYoutubeにて無料で観られるだろう。
あさじんさんには無限大のポテンシャルがある。動画は麻雀Youtuber界のエポックメイキングとなりうるだろう。
彼の活動はきっと、コロナで落ち込んだこの空気を明るく変えてくれる存在になるだろうし、そうならなければならない。
そしてそれは、同時に彼にとっても日本にとっても復活の日になるに違いない、そうなってほしい、と私は願わずにはいられなかった。
*
追記
あさちゃんから「動画撮りました」と連絡が来たとき、普通に考えて編集に時間をかけても2日後にはアップされるだろうと思った。そのため私はショパンのエチュード第4番を弾くくらいの速度で記事を書き上げたのだが、動画投稿の兆しは13日現在まったくない。
いろいろ情報を集めた結果、動画の素材はほぼ完ぺきに撮れているようだ。彼が激辛料理を食べて突発性パニック障害のようにのたうち回ったあと、まな板の上の鯉のようになっている状態も確認できた。動画が完成したら面白いことは間違いないだろう。
問題は、その動画の編集を誰に頼むかで悩んでいたということだ。
○場所と機材を提供してくれた麻雀警察。
○動画撮る機会と与えてくれて実際に撮影してくれたTくん&Nくん。
○さまざまな革新的アイデアで企画をすでに用意してくれているHさん。
この3グループによる壮絶なあさじ争奪戦が行なわれ、ASJ原石が誰のもとで輝くかで時間がかかっていた。
今回の動画に関しては、動画データそのものをTくん&Nくんチームが所有しているため、彼らのもとで編集されて公開につながる可能性がもっとも高いと考えられる。いずれにしても面白い動画になれば、編集者、主演、そして動画を待ち望む皆様の全員がwin-win-winの関係になり、素晴らしいことこの上ない。
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