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【あっさじーん伝記】 思ひ出の味
【 前回 あけおめクラッシュ 】
あけおめクラッシュの記事を更新したあと、あさちゃんから怒りのお便りが送られてきた。
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私が彼に「遊図には行きません」と伝えたことにはある背景があった。
2019年11月、澤田氏の紹介でピン東2-5セットに挑戦したあさちゃんは、1、2回目は順調に勝ったものの3度目の勝負で大敗を喫した。
もちろんカネナシ状態で即清算できなかったあさちゃんは、当初の予定どおり澤田氏に立て替えてもらう事になり、その一部は「遊図で働いて返してね」という話になったのである。
しかし、遊図で働けば、ほぼパパラッチである私と森氏が突撃することは火を見るよりも明らかなので、あさちゃんは出勤をかなり渋っていた。
そこで彼に出勤を前向きに検討してもらうための魔法の言葉が「遊図には行きません」だったのである。実際、11-12月は本当に忙しくて遊びに行く時間がなかったというのもある。
行かないと言ったのに来てるじゃないか!と怒るあさちゃんであるが、表面上は「僕は森さんとフィリアさんを嫌っていません」「来るのは構いません」と言っている以上、何の問題もないはずだ。
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普段のセットも、雀荘の出勤も、別の雀荘のゲストもドタキャンしているあさあさのじん。その彼の口から「誠意」という言葉が出てくるのはとても意外に感じる方も多いだろう。
私の場合は1発目の「誠意」の文字からゲシュタルト崩壊してしまって理解できなかった。
ちなみに画像最下部の私から送ったメッセージに返答はなかったが、いったい彼の誠意はどこへ行ってしまったのでしょうか。
「せめて返答はするのが最低限の誠意かと思いますが」という彼のセリフをソックリそのままリターンしたいお気持ちに駆られた。
*
その後。
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1月11日(土)
持病の椎間板ヘルニアが悪化し、「どう考えても絶対無理」なので出勤は当日キャンセルに。
澤田 「あさじんくん来れなくなっちゃった。代わりの従業員を探しているけど、当日朝に言われると厳しいよね。苦戦しています」
私 「当日に言われるのは迷惑ですよね」
森 「普通に仮病だろ」
私 「でもこのヘルニアはガチっぽい気がします。単勝1.5倍」
森 「いや全然嘘だろ」
私 「普段から嘘つきすぎてるから、こういう本当にヤバイ痛みが出勤当日に来るのがいかにも彼らしい。現代のオオカミ少年。私は彼を信じています」
森 「確かにそれはあるな」
澤田 「たぶんホント」
澤田 「でも迷惑」
私 「今回はマジだと思うけど、これで味をしめて次回に仮病を使う可能性はある。単勝2倍」
森 「あるな」
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さっきまでの苦しみが嘘だったように、急にツイートをし始めた。
事実でもこういうことを書いちゃうから信用をなくすのである。
*
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1月18日(土)
2日前に普通にセットしていたので、どうやら腰は良くなったと思いきや・・・
出勤当日になって彼から「歩くのがやっとなので、大事を取らせていただきます」と連絡が入ったらしい。
澤田 「困った」
森 「普通にセットしてて動けないはないよな」
私 「これは仮病もあるな」
森 「絶対俺らが行くと思って避けてるだろ」
私 「今回は行かないのにね」
澤田 「本当に困りました」
結局、澤田氏の全力の仕事捌きによって事なきを得た。
その夜、我々を避けていることを裏付けるようなメッセージが彼から入る。
あさ 「僕の出勤をツイートするのはやめてくれませんか?なんでプロでも女性でもないのに告知するんですか」
澤田 「なぜ嫌なの?ドタキャンする可能性が高いから?」
あさ 「誰も来てほしくない」
澤田 「君のことを知ってる人には来てほしくないという意味?」
あさ 「フィリアや森みたいに狙い撃ちしてくるやつがいると収入的に困ります」
澤田 「意味不明です」
客商売の店に出勤して「誰も来てほしくない」とオーナーに言うのはメチャクチャである。
しかしおかげで、パパラッチフィリカスやスナイパー森に来てほしくないという彼の真意がわかった。
澤田 「テンゴで強い人と数回同卓したくらいじゃ、収支なんて大して変わらないのにね」
私 「麻雀を理解してない人ほどこういうこと言いますね」
森 「あさじんさんとできるギャンブルなんてたかが知れてるし、巻き上げる気なんて1ミリもないよ」
私 「そもそもカネナシだしね」
森 「はよnote書けって話」
理解はできないが、「収入的に困る」というのなら彼との同卓は避けるようにしようと思った。私と森くんはいまでも、彼のお金が増えーることを望んでいるからである。
次の出勤は22日(水)。我々はスナイパーライフルの照準をこの日に合わせた。
*
2020年1月19日(金)
私 「22日空いたのですごろくやりましょ」
森 「コール」
私 「澤田さんもどうですか?」
澤田 「従業員二人が12時半にちゃんと出勤してくれたら参加できるよ」
私 「ランチもしましょう」
この従業員二人とはKくんとあさちゃんである。Kくんはサボらないので、あさちゃんが今月3度目のドタキャンをカマさない限りはすごろくは開始できそうだ。
もう一人は稚児さんが来てくださることになり、あとはあさちゃんの出勤次第となった。
*
2020年1月22日(水) 12時半
私 「もしもし、ただいま3人で三鷹に到着いたしました。ランチいきませんか?」
澤田 「今さっき、あさじん君から『体調が悪い』という連絡だけ来ました。ただ、体調が悪いから出勤できないのか、出勤はできるのか書かれていないのでわかりません」
私 「体調だけ報告されるの本当に寸止めって感じですね」
澤田 「とりあえず先行っててよ。彼が来たのを確認しないと動けないから」
私は以前、『人を動かす』という記事を書いたが、「人を動かさない」とはこういうことなんだな、と思った。
従業員二人が無事勤務できそうということで、澤田氏が合流。
澤田 「なんとか大丈夫そうだよ」
私 「よかったです。あさちゃんもちゃんと来てるんですね」
澤田 「たぶん。でもさっき電話して『仕事だいじょうぶそう?』って聞いたらすぐ切られたw」
森 「めちゃくちゃや」
私 「まあ・・・出勤してるならよかったですね・・・」
森 「そういや稚児さん、それなに持ってるの?」
稚児 「これは『二人静』だよ。以前フィリアさんのnoteを読んで、あさじんさんが好物って書いてあったから差し入れで持ってきた」
森 「ばけばけのもん」
二人静とは、創業380年の歴史を持つ名古屋の老舗御菓子所「両口屋是清(りょうぐちやこれきよ)」の干菓子のことだ。
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新宿にある中華料理店『だるま』のニンニク炒飯を食べたとき、あさじんさんは「5点満点で2.8点」と評価していた。
そこで「じゃあ人生で一番美味しかったものはなんだったの?」と訊いて返ってきた答えがこの『二人静』なのである。
( 参考:4万ベット編 )
私 「気の利き方がハンパじゃないっす」
稚児 「みんなの分もあるから食べよう」
私 「ばけばけのもん」
稚児 「あさじんさんから簡単に評価落とされそうだから、こういうので気をつけないとね」
森 「いや稚児さん、二人静を渡して評価がプラス100になったとするじゃないですか。でも僕とフィリア君のツレだとわかったらあさじ式スーパー減点法で-50と-50引かれて0になるんですよ」
稚児 「・・・まじ?」
私 「これはまじっす」
プラス評価の上限は100まで、マイナス評価の上限は無限。これがあさじ式スーパー減点法である。
天鳳でたとえると五十段坂(配分 90-45-0-780)くらいのキツさである。1つのミスも許されないのだ。
森くんに並んで遊図へ入店すると、あさちゃんは表情を一瞬曇らせ、ペッパーくんと同じくらい平たい抑揚で「イラッシャイマセ」と挨拶してくれた。
あさじさんこんにちは!と挨拶したら俺の顔見てめちゃくちゃ表情曇らせたあと「イラッシャイマセ」と返されました。ほぼペッパーくん
— きみ@ (@kimi3906) January 22, 2020
しかし、稚児さんの渡した『二人静』のパワーが想像以上に強かったようで、いつもの真顔はすぐにほぐれ、モナリザのようなアルカイック・スマイルで接客を始めた。
あさ 「セットはこちらの卓をお使いください」
私 「あさじんさん、明けましておめでとう」
あさ 「はい」
私 「!!」
前回はパーフェクトスルーだったが、なんと今回はきちんと挨拶していただけた。クラスのいじめられっ子が無視のいじめから解放されたときはこんな気分なんだろう。
席に着くと稚児さんがお土産の二人静を分けてくれた。
稚児 「よかったら二人も食べてみてよ」
私&森 「ありがとうございます。いただきます」
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私&森 「・・・・・・」
詳しい感想は控えるが、上品な砂糖のかたまりという印象だった。
私 「あさじんさん味はどう?」
あさ 「ああ・・・昔を思い出します・・・。あれ?でも昔と少し味が違うような」
私 「最近食べてなかったの?」
あさ 「最後に食べたのは20年以上前です」
私 「全然食べてないやん」
味覚と記憶は私たちが思っている以上に密接に結びついている。特に幼少期や青年期のような、高い記憶力をもつ時期に食べたものはなかなか忘れられないものだ。また、好きな人、好きな友人たちと食べたものもより美味しく感じるものだ。
おそらく、彼は彼の人生のなかでもとびきり幸せだったころに食べたものを「美味しいもの」と認識していて、味自体はたいして問題ではないんじゃないかと考えられる。
のちに本人もこう述べている。
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とても情緒的で素晴らしい文章だが、当事者になったときのことを想像するとゾッとする。
*
澤田氏が急用ができたので、残った三人でビンゴゲームをしていると、珍しくあさちゃんのほうから声をかけてきた。
あさ 「あのぉー、すいません、澤田さんから連絡ありまして、えーと、現在フリーが満卓でして、えぇー、もう少ししたらフリーを伸ばすことになるかもしれないんですが、あのぉー、そのときはこちらの卓を使いたいので、ぇー、別のお店に移動していただけないでしょうか?」
私 「いやだ!ぜったいどかない!」
私が自動卓にへばりつくと、あさちゃんは「そうですか」と戻って行った。
あさちゃんの無駄に長い説明を、森くんがめちゃくちゃわかりやすい13文字に要約してツイートする。
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戻ってきた澤田氏が卓に着き、すごろくの準備を始めていると、森くんがあさちゃんの反論に気づく。
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森 「めちゃめちゃ怒ってるやん」
あさ 「・・・・・・」
はっきりいって言い方の問題だけなので作り話はしていないが、彼にとってはこういう些細な違いも気に障るのだろう。しかし、彼自身は明らかに作り話をすることがある。
むかし私は有料で彼に麻雀を教えていた。
数か月ほど受講したころに「金欠で厳しいので、しばらく受講はお休みさせていただきます」と連絡があった。もちろん強要はしないので当然受け入れることにしたが、ツイッター上で彼と彼のフォロワーのNさんがそれについてやりとりしているのを見かけた。
N 「もうフィリアさんから麻雀を教えてもらっていないんですか?」
あさ 「『お前にはもう教えてやらねーよ』と言われてしまいました(笑)」
N 「そうだったんですか」
あまりにも作り話すぎて当時は笑ってしまったが、いま考えてみると、自己愛性パーソナリティ障害などで記憶を改ざんしていたのだろうと思う。
それをわかっているのかいないのか、澤田氏の彼に対する接し方はとてもやさしい。このときも120デシベルくらいの声量で、隣で卓掃をする彼を擁護した。
澤田 「悪いのはすべて森くんだよなぁ!僕にはよーくわかってるよ!きみはそんな悪いやつじゃないよなぁ!!」
あさ 「・・・・・・」
澤田 「悪いのはすべて森とフィリア!僕だけはきみの味方だからよぉ!」
うるさすぎて選挙カーかと思った。
*
私 「それにしても、セットで負けてもここで働かせてもらって返せるなんて恵まれていますね」
澤田 「最初に約束していたからね。それにこっちも手伝ってもらって助かってるんだよ。やる気はあるから。」
私 「win-winの関係ってやつですね。ご飯も奢ってもらえて、普通に考えたらかなり良い境遇ですよ。まぁそこはスーパー減点法があるから評価されないかもしれないですが」
澤田 「雇ってるからにはそういうとこも責任持たないといけないからね」
経営者として素晴らしい責任感だ。従業員は企業の資産で、これを大切にしないと経営は成り立たない。
そんな素晴らしく高い意識をもつ澤田氏が、3メートルほど離れたところで立っているあさちゃんに声をかけた。
澤田 「おーい、あさじんくん、お腹空いてないかい?」
あさ 「・・・・・・」
澤田 「・・・・・・」
私&森&稚児 「・・・・・・」
澤田 「おーい」
あさ 「・・・・・・」
K 「あさじんさん、澤田さんが呼んでるよ」
あさ 「・・・・・・」
K 「ねえ、無視は良くないよ」
あさ 「・・・どうせ遠回しに買い物に行かせる気なんだからいいんですよ」
澤田氏は口をあんぐり空けながら固まっていた。
私 「あれは資産じゃなくて負債だな」
澤田 「・・・・・・」
あさちゃんは経営者に負けないくらい、太く固い神木のような高い意識を披露してくれた。サービス精神旺盛なのである。
*
私に用事があったこともあり、この日のすごろくは17時過ぎでお開きとなった。
すごろくセットのため、今回はあさちゃんと麻雀することができなかったのが心残りである。しかし、今回は帰り際もきちんと挨拶してくれた。
私 「あさじんさん、それじゃ頑張ってね」
あさ 「アリガトウゴザイマシタ、マタオネガイシマス」
その夜。あさちゃんからいつもの定型文が送られてきた。
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森 「俺のところにも送られてきた。コピペするなとお伝えください」
私 「 灰 」
澤田 「すごく不思議なんだけど、あさじんくんの嫌い度合いは、なぜか森くん>フィリア君なんだよね」
森 「スーパー減点法に競馬予想は不向き。1レースはずれたら0になりますからね。きついですよ」
澤田 「なるほどね」
私 「これでいいんだよ これで」
あさちゃんと森くんの深い亀裂が解消する日は来るのだろうか。そして、私にとっての「思ひ出の味」であるだるまのニンニク炒飯を、またあさちゃんと一緒に食べられる日は来るのだろうか。
これからが楽しみである。
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