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【あっさじーん伝記】 遊図名物・超同卓希望

前回の話


 イキリ暴走機関車のあさじんがこんな発言をしていた。

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 これに対する私の返信が以下。

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 「訳あって勤務に入れない」と書いたが、この訳とは実は「遊図へ遊びにいくから」である。

 この返信によりフィリアは来ないだろうと余裕こいているはずのあさちゃんにドッキリをしかけるため、かもしん氏、稚児さんの二人を誘って遊図に突撃することにした。

 彼にはどんなときも気を緩めず初心を忘れずに仕事をしてほしい。そういう願いを込めて、基本的に私や森くんがいくときは内緒にしている。

 しかも、今回はセットの利用ではなくフリーの超同卓希望である。超同卓希望とは「お客さんが来ても抜けさせないぞ」という強い同卓希望のことだ。遊図のあさじん勤務時限定のオプションである。



 8月7日 金曜日 13時20分

 開店してまもなく遊図へ着弾。かもしん氏はすでに待ち席で待機していた。


私 「あさじんさんこんちは!それじゃやりますか!」
あさ 「・・・・・・」

 他にお客さんはおらず、かもしん氏、私、あさじん、メンバーTMくんの4人でフリー卓を立てることになった。澤田さんと高橋くんは離れたところから眺めている。

澤田 「あさじんくんは幸せものだねぇ!開店と同時に2人も来てくれるなんて!羨ましいなぁオイ!!」


あさ 「・・・・・・高橋くん、あの、ひまなら打ちません?」

高橋 「僕はもう帰るところなんで」
澤田 「高橋くんが入るとしてもきみが抜けちゃダメでしょ。きみに会いに2人が来てくれたんだから。気持ちを蔑ろにしちゃダメ」
私 「あさじんさん、素晴らしいもてなしをありがとうございます」
あさ 「 灰 」

 もうひとりのメンバーさんであるTMくんを加えても、この空間は完全に「あさじん1人 VS 残る5人」の構図が出来上がっている。これこそが遊図名物・超同卓希望だ。その団結力は固く、ここにお客さんが来店したらサンマ卓を立てるまである。


 さっそくゲームが始まる。

私 「今日はもう少ししたら稚児さんも来ます。森くんは予定あって来れないみたいです」

それを聞いた澤田さんが、別卓の掃除をしながらチャチャをいれてくる。

澤田 「森は来ないんだってよぉ!あさじんくん良かったなァ!あいつは本当にひどいやつだな!20歳も年上のキミに対して生意気すぎるよな!!森はホントわるい!!僕だけはキミの味方だからよぉオイ!」


私 「あさじんさんあの人こそ敵だから気をつけてね」
あさ 「・・・・・・」

 私のギャグを完全にスルーし、彼は自らの体に電気を流して体を震わせた。

あさ 「・・・・・・あっ!!!!」
かも 「どうしました?」
あさ 「澤田さんっ!澤田さんっ!」

 あさじんはそう言って指で丸をつくり、ドリンクサーバーの近くにいる澤田さんに合図した。

澤田 「ん?なに?」
あさ 「おかねっおかねっ」
澤田 「ああ、給料?わかった」
あさ 「はい。ああ、いや!!お客さんの前で生々しい話はよくないです」
澤田 「きみが言い出したんだろ」
あさ 「 灰 」

私 「まあセット卓みたいなものですから、気にしなくていいですよ」
あさ 「ハイ」
私 「でも場の雰囲気に気を使えるのは偉いですね」
あさ 「ハイ」

 彼が壊れたロボットのように同じトーンで繰り返すこの「ハイ」は、返事としてのハイではない。モノを渡すときのハイと同じイントネーションだ。

 一見すると会話になっているようにもみえるが、実は返事としては全く成立していない。こちらがキャッチボールのつもりで投げたボールをただ下に叩き落としているだけなのだ。ここまで人の話を聞いてなさそうな「ハイ」は出くわしたことがない。遊図で彼の接客を受けた際は是非、これに注目して楽しんでいただきたい。



かも 「ロンゴッパー、ツモ61オール、ツモ42オール、5万点DEATH」

 第1ゲームはかもしん氏が東発親番で一生アガり続け、東1局2本場で5万点終了。あさじんは席順2着でマイナスとなった。

あさ 「ハイ!ラストデス!ご優勝はかもしんさんです!」

 あさちゃんはメンバーとしての仕事を一生懸命こなした。

卓に入ったお客様にはおしぼりを用意し、
ゲーム前には「本走ですよろしくお願いします」
南入時には「ハイ!南入です!」
ラス前には「ラス前です!みなさま最後まで頑張ってください!」

 基本的なことだが、基本をしっかりやるというのは「自分は仕事に一生懸命です」というアピールになる。これは大切で本当に素晴らしいと思う。どうしてここまで持ち上げるかというと、これ以降の話はヤバいアクションだらけになるからに他ならない。



 第2ゲームはメンバーTMくんに変わって三鷹の王 澤田さんが本走。あさじんに対する煽りの距離が物理的に近くなった。

 ゲームが始まるとすぐにかもしん氏がセンニセンの3枚をツモり、小銭がなくなったあさじんが澤田さんに5000円札を差し出す。

あさ 「すみません、両替おねがいします」
澤田 「はいよ、細かいの込み?」
あさ 「え、えーと、4000円4枚とぉ・・・」
澤田 「いや増えすぎでしょ」
あさ 「あ、5000円札4枚とぉ」
澤田 「もっと増えてるじゃん。どんな概念よ」
あさ 「あっあっ」

 あさじんは受け取った1000円札4枚と小銭を確かめ、そそくさとポケットに放り込む。

かも 「あの、チップ3枚ください」
あさ 「あっ!」
かも 「なんで両替したの」
あさ 「 灰 」


 彼は前日にこんなツイートをしていた。

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 おそらくあさじん以外の人間が目の前で同じような接客をしたら、彼は「なんでこんなふざけた接客なんだ」と憤ることだろう。

 彼に悪意や怠慢が見られるわけではないけれど、誰がどうみてもふざけている。というかギリギリ接客と言って良いか、もしくは少し下回る程度のレベルになっている。

 いままでの彼の接客を、これまでのようにnoteで文字に書き起こして当人に見せても、記憶がないのか自覚がないのか、やはりピンと来ないようだ。

 イキリ発言と実際の接客レベルの凄まじい解離現象はおそらく、自分を客観的に見れない+記憶がないということが原因だと考えられる。


 彼のふざけた接客は続く。



あさ 「そういえばかもしんさん、ゲシェンクってやってます?」
かも 「この間の1回きりです」
あさ 「この間ってなんですか?」

かも 「ん?」
私 「ん?」
あさ 「えっ?僕とじゃないですよね?」

 私、あさじん、かもしん氏、かなでちゃんの4人でゲシェンクをやったのは7月27日。たった11日前の出来事である。


かも 「あさじんさんとやりました」
あさ 「えっ!?!?!?ほ、ほんとに僕だった?!」
かも 「4人しかいないんだから間違えないでしょ」
私 「やりましたね」

全員 「・・・・・・」

あさ 「・・・ほんとうに僕?」
かも 「町田ZOOですごろくとゲシェンクやったでしょ」
あさ 「・・・あっ!!思い出した!!えっともうひとりは・・・えーと・・・ああ、なんだっけ・・・あ!かなでさんだ!!」
私 「大正解です。スバラシイDEATH。」
あさ 「いやぁ、ほ、ほんとに病院行かないとやばいな」
私 「あんまりぶっ飛んでるとnoteに書けないからほどほどにね」
あさ 「 灰 」

 リアルに「身に覚えがありません」状態だった。おそらく嘘発見器にかけてもメーターは動かないほどだと思う。記憶の奥底のタンスの引き出しのさらに奥に鍵付きでしまいこまれているに違いない。

あさ 「しかしお客さん来ませんね」
かも 「来ないと困るんですか?」
あさ 「た、立ち番の仕事があるので」
私 「逃げようとしてるだけでしょ」
あさ 「ソ、ソンナコトナイデス!」
澤田 「洗い物は僕がやっておくから、きみは来てくれたお客さんを大切にしなさい」
あさ 「 灰 」

 第2ゲームは若年性アルツハイマー疑惑のあるあさじんがラスを引き、約2500気持ちポイントを表明。


 お金の価値は絶対的なものだと言われているが、私が思うに、同じ2500円をもらうにしても払う人によってその素晴らしさは変わるのではないかと思う。

 たとえばお金持ちが負けて払う2500円よりも、妖怪カネナシのあさじんが1度ラスって冷や汗をかきながら払う2500円のほうが何十倍も価値がある。おそらく同意していただける方も多いのではないかと思う。端的にいうとメッチャキモチェ~~〜ということだ。



 2着4着といい成績で繋いできたあさじん。ちょうど第2ゲームが終わったタイミングで稚児さんが登場。ここでもあさじんは卓を抜けようと画策する。

あさ 「あ、あの、稚児さんが入るなら僕は抜けますっ!ハイッ!」
澤田 「稚児さんはきみに会いにきているんだよ?何度も言うようだけど、自分に会いに来てくれた人は大切にしてな」
あさ 「 ハイ・・・ 」


 超同卓希望の呪縛は続く。
 なぜか稚児さんに対してルール説明が行われていなかったので、私が代わりにして差し上げることにした。本当ならあさじんの仕事である。

私 「フリーのご来店は初めてですか?」
稚児 「実はよくわからないんだ。教えてもらえると助かります」
私 「ゲーム中なので簡易的に説明しますと、点5東南1-2、赤3に青5ピンが1枚。0点でトビ、トビは300円。5万点終了、永久ポッチが1枚で祝儀なし。そんな感じです」
稚児 「ありがとう」
私 「あと、レンホーは役満です」

 ルー説をサボって理牌していたあさじんが、これを聞いていきなり会話に入ってくる。

あさ 「え?レンホーが役満?違いますよ?」


私 「たしかレンホーは役満だったと思います」
あさ 「そんなはずは・・・TMくん!レンホーって役満なの?」

別卓で打っていたTMくんが高らかに教えてくれた。

TM 「はい。役満です。」
あさ 「・・・・・・」


 客にルール説明をさせた上にイチャモン。これがワールドクラスの接客です。

 彼は前日にこんなツイートをしていた。

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 従業員としての職務を怠り、至らない点を客にサポートされるというのは彼の言う「平均的な接客レベル」を大きく下回っているのではないかと思う。

 しかし、もしかしたらこれは彼の優しさなのでは?とも思った。私・森・あさじんの地獄の三人番を開催したときのために、「きみたちはこれくらいしか頑張らなくていいよ」とハードルを下げまくってくれているのかもしれない。


 第3ゲームを稚児さんへの8000点放銃でスタートさせたあさじんは東2局で親番を迎える。と同時にお客さんが来店。この地獄の同卓希望から抜け出す唯一のチャンスが訪れた。

 だが、17000点持ちでお客様にお譲りするわけにはいかない。この一局で7700点でも和了することができれば、24700点親番2回で譲渡することができる、という彼の思考がマスク越しにダダ漏れてきた。

あさ 「スー、ハー、・・・チッチーアガラナキャッ・・・」

かも 「漏れてるよ」

 遠路はるばる彼に会いに来た身としては、たった2ゲームで彼を抜けさせるわけにはいかないのだ。私は彼の親番を気合で蹴りに行った。

私 「 ンチャモ、1326」
あさ 「 灰 」

 我々の超同卓希望は無事延長した。客がゴリ押しで延長させる、キャバ嬢顔負けの人気ぶりである。



 第4ゲームのオーラス。彼は接客の真髄をみせてくれた。

ドラ 西
親番 稚児 40200点 ①
南家 かも 18600点 ③
西家 あさ 13200点 ④
北家 私  28000点 ②

 あさちゃんは早々に白と6mをポン。5m7pと並べて河が濃くなりテンパイ気配。条件は3900直撃 or 5200ツモ。しきりに点差ボタンを押していることから満貫はないと見える。

 かもしん氏が切った6pに、あさじんが2秒ほど溜める。

 そして

あさ 「・・・・・・ロ、ロン!」

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あさ 「えーと、えーと」
稚児 「5200ですね」
あさ 「ハイ、すみません捲れるか計算してて」
かも 「5200なくても捲くってるね」
あさ 「 灰 」

 素晴らしいタメロンである。参考にすることは一生ないが、とてもタメになった。


 その後、ご高齢の常連客が来店し、あさじんが抜けることになった。こちらのお客様はご高齢にも関わらず麻雀が柔らかで、7巡目カン6mの2600点を即リー、風流なコロナ(567)三色、オーラス和了トップでカン2pの1300点を即リーとバイタリティ溢れる闘牌でトップをもぎ取っていった。

 あさじんが逆連対を引きまくった席でも素晴らしいトップを取ったのを目の当たりにし、やはり麻雀は席でなく腕なんだなと実感させられた。

 お歳を召されてもこういう麻雀を打てる方は、根本的に考え方が柔軟で本質をよく理解されていることが多い。それを証明するかのように、従業員であるあさじんよりも気を効かせ「俺はあっちの◯◯さんと打ちたいからさっ、あさじんくん入りなよっ」と別卓へ移動。

 すかさず澤田さんが「じゃあさじんくん入ろうか!」と促し、店主、メンバー、常連客のトリプルコンビネーションによって超同卓希望はさらに延長されることになった。

 私・かもしん・稚児の超同卓希望は5ゲームほど続き、あさちゃんの戦績は24434。とてもファビュラスな結果で幕を閉じた。

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 自己都合でセットをとりやめるときは「無しです」ではなく「無しにしてください」と書くのが良いと思います。


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 18時に遊図を出て近場の飲み屋で呑んでいると、澤田さんから連絡が入る。

澤田 「もしお時間あれば、うちで鍋しませんか?あさじんくんも呼ぼうと思っています」
私 「かもしん氏と稚児さんは予定あるみたいですが、私は構いませんよ」
澤田 「あさじんくんにいま声をかけているんだけど、全然ノリ気じゃないんだよね。体調悪いから帰るとしか言わない。食事代は全部ぼくが出すって言ってるんだけどね

 あまり語られていないが、澤田さんはありえない頻度であさじんに飯を奢っている。しかしこれがあさじんから語られることはない。

 なぜなら、あさじ式スーパー減点法により普段の煽りのマイナスが大きすぎることと、他の同僚も同じように奢ってもらっているため自分が奢られることに特別感を感じないからである。


 前にとんでもないレスポンスを受けたのをいまでも鮮明に覚えている。

私 「あさじんさん、無料で住居を貸してくれるなんて滅多にないことですよ。澤田さんに感謝はないんですか?」
あさ 「感謝はしていますよ。ただ、メンバーのNくんも僕と同じように無料で借りているんですよね」
私 「Nくんは関係ないでしょ」
あさ 「いや、なんというか感謝の気持ちが薄れません?」
私 「薄れません。どうしようもない。」


澤田 「とにかく、ぼくが言っても全然きかないから、説得してもらえませんか?」
私 「わかりました。代わってください」

 数秒ののち、スマホからペッパーくんのようなカタコトが流れてきた。

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「キョウハ オツカレサマデシタ ソレデハ ボクハ コレニテ 」


 私 「ん?もしもーし、あさじんさんですか?誰?もしもーし」

「コエガ トオイデス ソレデハ 」


 こちらの声を聞き取ろうとする気が1ミリも感じられず、いつもの比ではないくらい会話になっていない。これはキャッチボールではなく正真正銘、本物の壁打ちだ


 今度はあさじん本人にメッセージを送ってみると15分後に返信があった。

あさ 「すみません、ちょっと本当に体調が悪いので今回はご遠慮します」


 いつもの「体調が悪いです」がウソだったと白状してるような口ぶりだ。ウソばかりついているとこういうときに信用されずとても困ります。

 今月の彼の誕生日にはオオカミ少年というありがたい本をプレゼントしようと思います。


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フィリップ
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