「僕は普通ですよ」①

「美味しい蕎麦が食べたいです」

ある日、異常者から連絡がきた。

私「いい店知ってます。しお君も誘って3人で美味しい蕎麦屋に行きましょう」

しお君とは、あさじん一級介護士の資格を持っている元・遊図メンバーであり、ツイート数と頻度は常軌を逸しているが、現実世界ではハキハキと明るく感じの良い青年である。

私「27日の18時半からどうですか?しお君も来れます」
あさ「27日は町田Z◯◯の勤務があるので厳しいです、今月は無理そうなので来月でいかがでしょうか」
私「そうしましょう」

その後、人格が変わった異常者から「やっぱり27日は17時早上がりで無理矢理ねじ込みます」と連絡が入った。
私はすぐに蕎麦屋に電話し、27日の予約を確定した。

最近の彼は金なしの影響で異常度合いが非常に加速している。とても楽しみなイベントである。

そんな折、古くからtwitterで交流のあるmasasioさんが、池袋でラーメン店をオープンするという噂を聞きつけた。例の2人を誘い、25日に訪問する旨をお店にお伝えしたが、「大人2名、異常者1名です」と言ったら断られそうなので、大変申し訳ないが隠させていただいた。

6月21日
特級介護士である私は「そろそろ"アレ"が来るころかな」と思っていた。アレとはつまり、ドタキャンである。

ピコン、とLINEが鳴る。

あさ「もしよろしければ、しお君と2人か、僕の代わりにどなたかもう一人を誘ってくれませんか?」

私「お店も予約してますし、金はなんとかするから必ずきてください。交通費だけ持ってきたら良いから」
あさ「それが足りなそうなんです、残りの金を洗濯代に使うと交通費が足りなくなり、交通費に使うと洗ってない服か冬服を着ていくことになる

外食しまくり・映画観まくりの人間の言葉とはとても思えない。

あさ「25日にZ◯◯の給与が入るが、朝9時に振り込まれていれば昼飯には間に合うから池袋に行けると思うのだが・・・。実は想定外の出費が2万円もあったんです。今日の午前中にいきなり1万円の集金がありまして」
私「集金ってなんですか?なにか送りつけられたんですか?」

世の中には「送りつけ商法」というものがある。
注文していない商品を勝手に送りつけ、受取人が断らなければ買ったものとみなして代金を一方的に請求する商法のことだ。現在では特定商取引法が改正され、一方的に送りつけられたものは処分してOKということになっている。
もしかするとあさじんさんもこの詐欺に遭ったのではないか?と心配して聞いてみたところ、

あさ 「コンタクトレンズの代引き料金です」

私「自分で買ったもの??」
あさ「はい」
私「それは想定できるだろ」
あさ「本当はあと10日ほどあとに納品されるはずだったのに、早く発送されてしまったんですよ」
私「一般人的には全く想定外じゃないから」

あさ「それに、確定申告ツールの使用料で勝手に1万円引き落とされてしまったことも判明しまして」
私「それ勝手にじゃなくて忘れてただけだよね」
あさ「灰」

私「必要ならお金は貸しますから、25日も27日も必ず来てくださいね」
あさ「ワカリマシタ」

とても心配である。

6月25日(火)

予定通り3人ともラーメン店に集まることができた。

私「あさじんさん、お金大丈夫でした?」
あさ「腹が減ったな・・・」
私「もしギリギリだったなら、27日の交通費がなくなる恐れがありますから貸しますよ」
あさ「金がなくて土日月と自炊のカレーを1食ずつしか食ってないからな」

日本語を喋ってはいるが、内容は1ミリも噛み合っていない。本当に恐ろしい。
私は彼の肩を叩いて目を覚まさせた。
届いたラーメンを食べて意識を取り戻した彼は、唐突に別の話を始める。

あさ「実は僕、中華料理はニガテなんですよね」
私「プレオープンのラーメン店でなんてこと言うんだよ。いまラーメン食べてるじゃん」
あさ「なにいってるんですか、ラーメンは中華じゃないだろ笑」
私「そうなんだ。餃子も好きじゃなかった?」
あさ「餃子を食べられない人なんていないだろw 餃子も小籠包も大好きですよ。僕をバカにしてるんですか?」

私が言いたい言葉を先に言われてしまった。

私「そうだよね、餃子食べられない人はいないよね。それじゃ中華の何が嫌いなのかな?」
あさ「・・・ン?このスープは・・・!」

顔は正面のまま、目だけ真上を向くいつものややグロい表情を始めた。これをしているときは何かを真剣に計算しているときである。白マイティ東天紅でもしばしば見られる。

私は再び肩パンして彼を目覚めさせる。

あさ「ほら、中華料理でよく出てくる野菜あるじゃないですか、あれが嫌いなんです。なんかチーサイみたいな」
小さいのはおめえの脳みそだろという言葉をグッと飲み込み「八宝菜ですか?」と聞くと「それだそれ!」と指差していただけた。確かにキクラゲやエビなど彼の嫌いな食べ物が詰め込まれている。

あさ「ところで、このメニューの担々麺ってなんですか?」

私「担々麺は挽肉やザーサイ、ゴマが使われたピリ辛のラーメンですよ。あさじんさん好きそうなのに食べたことないですか?」
あさ「いや、担々麺とラーメンは違うのかと聞いてます」

日本語なのにまた奇跡的に噛み合っていない。

しお「ラーメンという大きな括りの中に、担々麺も含まれてます」
あさ「そうじゃなくて、この!この麺が違うのかってこと!前に俺がタンタンメンを頼んでタンタンが入ってなかったってツイートしたろ!」

しお君の優しいフォローも謎の言語で切り捨てる。
以前、タンメンを頼んだ彼はその写真をアップし、「タンメンって書いてあったのに、タンメンが入っていないのだが」と生活保護申請をスルーパスできそうな名言を残していた。


私は過去の記憶を掘り起こして介護する。

私「それはタンメンのことですね。タンメンは野菜と塩のラーメン、そのとき間違えたのはワンタンが入ったワンタンメン、これはタンタンメンです」
しお「ラーメンという括りの中に、タンメン、ワンタンメン、タンタンメンがあるんです」

予想どおり彼は完全にフリーズしていたので、「すみません、なかったことで良いですよ」といつもの彼の言葉を借りて話を終わらせた。再起動した彼はまた白目をむいて熟考し始める。

あさ「うーん・・・あの、このお店について僕がアドバイスしたいのですが」
私「あなた素人なんだから何も言わない方がいいよ」
あさ「灰」

いつもの超減点法によってイチャモンをつけようとするのを必死で制止する。
お金の話が全く進んでいないので、私たち3人はカフェに移動することにした。


ルノアールへ。

私「お金大丈夫でした?」
あさ「うーん・・・かなり厳しいですがなんとか27日は行けると思います」
私「そういうギリギリの勝負はしてほしくないです。必ず来てほしいので30日に返してもらえるなら無利子で貸しますよ」
あさ「うーん・・・しかしなぁ」
私「なんですか?」

あさ「・・・わかるだろ??」

突然、異常者は腕組みをしてドヤ顔を始めた。

私「しお君わかる?」
しお「わかりません」

あさ「ほら!ほら!察してくれよ!ほら!」

以前きみ選手が撮った写真と全く同じ構図でこちらを見る異常者。


私「もしかして、すでに9.5万借りているから後ろめたいんですか?」

この9.5万とは、私があさじんさんへ以前貸したお金で、元々はあさじんさんと澤田さんの間の借金である。
あさじんさんの遊図での成績はアウトオーバーではなかったものの、給料から負け分がすべて引かれると生活が立ち行かなくなるため、澤田さんの温情で給料のほぼ100%を受け取り、負け分は負債として残っていた。普通に考えたら借金だが、本人はこれは借金ではありませんと言い張っている。

そして5月に貸主の澤田さんが天国へ行ってしまったため、債権は澤田さんの奥様へ移った。これから多忙が予想される奥様に対してたった9.5万を超分割払いにしようとしていたので、気の毒に感じた私が立て替えたのだった。ちなみに債権は私に移り、9.5万は19回の超絶分割払いとなった。

あさ「9.5万??ソンナコトじゃない!!ほら!ほら!」

私の心配は一蹴され、とんでもないリレイズもくらう。

あさ「金ない状態でお金を持ったら、フリーに行っちゃうだろ!」

彼が度を超えた異常者であることを忘れていた。そうでした、彼はお金を持ったらフリーに行っちゃうんでした。

私「私としたことが失念してました。町田Z◯◯で勤務をはじめてからz00のフリーには行かなくなったと言っていたので。お金持ったらやっぱり行っちゃいますか、Zooに」
あさ「いや、フェアリーですよ」

彼は女にも飢えているのだった。
そういえば、ラーメン店で私たちはテーブル席に案内されたのだが、彼は近くを女性が通るたびにハイエナのような鋭い眼光で見つめ「いまの人、名前はなんで言うんですかね」と呟いていた

あさ「いや、でもこんなに金ないのに人の金でフリーに行ったら異常者だよな、流石に行きません」
私「フリーは行っても良いけど、面白いので行ったらちゃんと教えてください。あと27日は確実に来てほしいので1万円貸しますよ」
あさ「いや、もう想定外の出費はないので、僕の計算が正しければ数千円残るはずです」
私「あなたの計算まったく信用できないよ。ここから家までの交通費も考えてますか?」
あさ「ん?あっ!!いや、しかしそれでも大丈夫です。1000円ちょっと残るから蕎麦屋にも行けます。帰りの交通費はないかもしれませんが」
私「27日のZooは電車で行くんですよね?」
あさ「なに?ズーって?」
私「27日はZooの勤務を早上がりしてくるって言ってたやん」
あさ「あ!!!忘れてた!!やばい!!勤務を忘れるなんてやばいな・・・蕎麦屋で酒飲むならバイク使えないから・・・あ!!バス代もかかるが・・・いやギリギリ残るか・・・。はぁ、27日はギリギリまでゲームをやる予定だったのに」

あさ「いや、しかしもうこれ以上の出費は流石にないはず。数百円ですがギリギリ余裕あります」
私「金には余裕を持って、100%来れるようにしてほしいんですよ。一度行くと言ってドタキャンするのはいくら異常者でも許されませんよ」
あさ「いやでも、やむを得ない欠席というのは誰にでもあると思いますよ、身内の不幸とか、家が燃えたりしたら行けないじゃないですか」

また中学生みたいなことを言い出した。クラスに一人は必ずいた、屁理屈しか話さない馬鹿である。

私「超イレギュラーなことなら仕方ないですよ。交通費が足りなくて来れないって人間として終わっているので、無利子で1万円貸すので必ず来てください。30日に返してくれたら良いです」
あさ「ワカリマシタ。でもこの1万円を持ってバックレだけは絶対にしないので安心してください。僕はバックレはしたことないですから」
私「いやあなた前にバックレてましたよ」

あさ「そ、そんなことあったっけ?まったく記憶にないんだが」

都合の悪いことはすべて忘れてしまう、彼の悪い癖である。

あさ「はぁ・・・28日にnoteの金が入るのに、なんで27日なんだよ。27日はタイミングが悪すぎますよ」
私「あなたがZOOを早上がりして無理矢理ねじ込むって言ったんですよ」
あさ「そうだっけ?」

想定外の出費がここでもかさみ、結局は1万円をお貸しすることになった。

私「あさじんさん、そんなにお金ないんなら好きなもの食べてお腹満たしてください、二人ともご馳走しますよ」
しお「ありがとうございます!」

1万円を握りしめた途端にあさちゃんは元気になり、メニュー表にかじりついた。

あさ「ハムトーストが良いです。ケーキは・・・これしかないのか。しおくん、プリンはいかが?
私「なんでお金出さないあなたが勧めてるの?」
あさ「あっ!!そういえばそうだな笑」
私「もしかしてプリン食べたいけど自分だけだと気まずいから巻き込もうとしてますか?食べても良いですよ」
あさ「high」

その後、あさじんさんの博打依存の緩和のため、私たち3人は麻雀CUBEへ。

その帰り際。

私「あれ、あさじんさん帰らないの?」
あさ「いや、ここで働くかもしれないからな。ルールを確認してから帰ろうと思います、お二人は先に帰ってください、ここで解散です

絶対にフリー打つんだろうなと思った。
その後。



いいなと思ったら応援しよう!

フィリップ
このノートがあなたにとって有意義なものであったらとても幸いです。