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全財産6000円で雀荘へGO! ビンゴ編
【 前回 全財産3000円で中華へGO! 】
メルボルンカップを倒した我々4人は、ビンゴという完全実力ゲームをやるために歌舞伎町へ向かった。
目的地は禍々しいゼブラ牌が使える居心地のいい雀荘である。
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メルボルンカップで5000円勝ちになったあっさじーんさんだが、いままで高額を打ちすぎて麻痺してしまったのか、あまり喜んでいるようには見えない。いつものように60°の前屈みでスマホをいじりながら負のオーラを出していた。他人の目には背後霊のように映っていたに違いない。
森 「せっかく当てたのに、あさじんさん全然喜んでくれてないな」
私 「うーん、たしかに」
森 「競馬のレートがバグりすぎて麻痺しちゃったのかな?俺は悲しい。爆裂して彼が喜ぶ姿を見たいだけなのに」
私 「全財産2倍になったら普通嬉しいけどな」
森 「しかも払い戻し6069円なのに6070円とられたし」
普通は乗せてもらっているのだから、的中したら払い戻しの端数を切ってあげるくらいのことをしてもバチは当たらないだろう。
私も的中時には、森先生から24400円貰うところを20000円にする等、千円単位で切って森先生にお布施したこともある。彼が歳下ということもあるので当たり前のことだ。
後に背後霊に「森くんはいつも端数を切り上げてくれてるんだよ」と伝えると、「え?!そうだったんですか?!」と驚きと感謝を示していた。普通は自分で払い戻し金額を計算するものだが、お金にルーズな人間は全て人任せなのである。こうはなってはいけない。
私 「場代は私が払うからいいよ、って言ってもあまり喜んでくれなかったのも悲しい」
森 「もう完全に麻痺してるだろ」
そんな話をして歩いていると、すぐに目的地へ到着。
店員さんに促されて席に着く。
卓の設定は配牌とドラをオフだけ。種目はビンゴだ。
ルールを説明する。
簡単に言うと宴会などで行われるビンゴゲームのように、縦・横・斜めの列を完成させることを目的とするゲームだ。
このビンゴの表を麻雀牌で作る。
各人が適当に4×4マスの壁牌をすべて表にして作り、さらにドラを6枚めくって準備完了だ。
ビンゴ表は斜めが存在すればいいので5×5なども可能だが、4人の場合は枚数が不足するので4×4をお勧めする。また、ドラの数も取り決めによって自由である。
ここで、表になっている牌64枚とドラ6枚の合計70枚の中から、すでに1種4枚すべて見えているものがあれば当選とみなして裏返す。
ここからゲームがスタートする。
一番手を決め、残りの山から適当に牌をツモって河に切る。切った牌と同じものがビンゴ表にある人は同じ牌を裏返せる。
例えば、あさじんさんが9sをツモって私の表に9sがあれば「9sナイスゥ!」と言って自分の9sを裏返す。
これを反時計回りの順で繰り返していき、3列完成させた人はノルマクリア。クリアしてもゲームもツモ番も続行され、ラスが決まるまで4人で牌を叩きつけ続ける。
いち早くクリアしてしまえば、ラスの心配がない上にクリア列の本数も増えていくのでお得だ。
サイドボーナスとして、赤を引いた人は1点オール、金は2点オール、ゼブラは3点オール、色牌を引いたときに同じ牌種がビンゴ表にあれば追加で各1点。
また、ポッチは好きな牌を指定して牌を裏返せる。
そしてこのゲームの特徴は、ラスが全てを支払うという天鳳にかなり近い性質を持っているところだ。
違うところと言えばビンゴは運が排除された完全実力ゲームという根幹の部分である。
悲しみのラスが確定すると、1〜3着の各々が完成した列の本数を宣言する。3本は3点、4本以上は本数×2点、パーフェクトクリアならば30点をラスから貰える。1〜3着の間でウマなどの差はない。
列の清算を終えたら次はビンゴ表の表裏を入れ替えて、当選した牌のうちのドラを抜き出す。ドラ1枚につき1点、赤は1、金は2、ゼブラは3点だ。ドラが4枚に金1枚あれば「追加6」と言い放てばよい。
ドラを支払ったところで1セットのゲームが終了する。これを時間の許す限り延々と繰り返す。
さすがにルール自体はかなり単純なので、あさじんさんも私もすぐに飲み込むことが出来そうだ。
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あさ 「えーと・・・一本、二本・・・あと一本か」
平沢 「これ斜め完成してますね」
あさ 「あ!ほほほんとだ!なんか斜めは気付きづらいんだよなぁ」
私 「斜めは二本しかないけど気付きづらいんだねぇ」
あさ 「・・・・・・」
森 「あさじんさんいいペースじゃないすか。飲み込みも早いですよ」
あさ 「はい」
私 「お気持ちはいくらにします?だいたい1戦で30点くらい動くから1点50KPとか?」
あさ 「い、いや!高すぎます!せめて30くらいじゃないと」
私 「私はなんでもいいですよ」
森 「それじゃ1点30KPくらいにしようか」
付加価値は1点につき30気持ちポイントに決定した。
ルールを理解した方の中には「こんなのただの作業ゲーじゃないか」と思われる方もいるだろう。しかしこのゲームはもっと高尚で、情緒的な面も持ち合わせている。
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私の手牌である。8pで3ラインが完成だ。対するあさじんはあと2種ほどでクリア。
3着ならおよそ300KPほどのプラス、ラスれば1000KPほどのマイナス。
ラス争いをするあっさじーんのツモ番。
生か死か、般若のような顔で指先に力を込める彼。すぐに真顔に戻り、8pが叩き切られた。
私 「―――8pロン!ナイスゥ!ラスト。」
あさ 「・・・灰」
こんな麻雀のような光景もある。
しかし彼も負けてばかりではない。
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音速で3列クリアし、さらに列を増やしたあさじんさんの手牌だ。
5pを的中させればパーフェクトで30点、さらにドラ加点で35点ほどになるだろう。
決して貨幣ではないが、現在の貨幣価値に換算すると1050円ほどにはなるかもしれない。全財産の16%と言ったら相当な大金である。
先ほど以上に手に力がこもるあさじん。
そして・・・
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あさ 「ツォ!!!!!!パ、パパパパ、パーフェクトです!!!!」
画像は使いまわしだが、親指で5pを叩きつけながら全く同じ挙動をしていた。
森 「900KPでこんなに喜んでくれるなら低レートでも楽しいな。ってかさっき競馬当てたのもっと喜んでくれよ」
私 「それね」
あさ 「ささささ、さんじゅってんですっ!!」
私 「おめでとう〜」
点数申告が終わり、あさじんの持ち点が+40点ほどになっていた。
この辺りから30秒に1回の頻度で時計を見るようになってきた。勝ち逃げをキメようとしているのだ。
あさ 「あの・・・時間を決めませんか?」
森 「え?どういうこと?」
あさ 「延々とやっていたらキリがないですし、4時までにしませんか?」
森 「4時ってあと20分やん。もしかして1時間だけやって勝ってるから帰るつもりですか?」
あさ 「い、いや!!じゃあ5時まででどうですか?」
私 「始発までってこと?望むところですよ」
森 「いや明日の夕方5時までってことでしょ」
あさ 「本当に死んでしまいます」
平沢 「じゃあ18時くらいまでにしましょうかね!」
眠さに限界が近づいている平沢先生が慌てて話を終わらせた。
平沢先生は夜番 to 中華 to セットでこの後に夜番が控えているのだ。
結果。
18時を迎える前にあさあさのじんのギブアップがかかり、ゲームは終了した。
森 +1600KP
平沢 +1700KP
私 +900KP
あさじん -4200KP
あさ 「・・・・・・」
私 「お手持ちきついでしょうし、表明は今度でいいですよ」
森 「僕も今度でいいですが、23時まで暇なのでなにかしましょう」
あさ 「いや、気になるのですぐ表明します」
森 「いいんですか?ちゃす」
あさ 「あの・・・澤田さんに呼ばれたので行かないと」
私 「え?なにしに行くんですか?」
あさ 「セットの面子が足りないみたいなんです」
森 「お金ないのにいくんですか?」
あさ 「え?!あっ!時給がもらえるかもしれないので・・・」
森 「あさじんさんまた僕に嘘つくつもりですか?」
あさ 「い、いや、交通費とかも出そうですし」
澤田さんに確認すると、交通費は出してもいいが時給は出ないとのこと。
よくよく話を聞くと、レートはピン以上、澤田さんが参加しないため、収支は数割乗ってあげてもいいという条件らしく、財政的に困難を極めるのでセットへの参加は断念した。
私 「澤田さんから連絡があって、セット立たなそうだから一緒に飯でもどう?行ってもいいか?だって」
あさ 「拒否」
私 「わかりました」
私 「澤田さんにそのまま伝えたら、いろいろ気にかけてあげてるのにそれはひどいって悲しんでるよ」
あさ 「なんでそのまま伝えるんですか!!もっと上手い言い方があるじゃないですか!!」
私 「拒否って言ってたから・・・。具体的にどんな上手い言い方があるんですか?」
あさ 「・・・・・・」
私 「・・・・・・」
あさ 「・・・森さんとフィリアさんと大事な話があって、澤田さんには訊かれたくないから、とか」
私 「それ意味まったく同じだよね」
あさ 「・・・・・・そういえばそうだな」
私 「そう言わなくてもそうだろ」
あさ 「 灰 」
私 「どうせだからもうちょっと遊びませんか?四麻とか」
あさ 「もう本当に手持ちがきついんです」
森 「すごろくとかどう?」
あさ 「もう本当に手持ちがきついんです」
私 「サンマ設定面倒くさいし、四麻にして三人でお気持ち表明し合うのはどう?あさじんさんは打つだけ」
あさ 「もう本当に手持ちがきついんです」
あさじんが壊れたロボットになってしまったので、結局、牌を使ったゲームは続行不可能。彼の場代は私が出す予定だったが、平沢・森の両氏も多めに出してくれた。
凄まじく帰りたいオーラを放っていたあさじんだが、森先生の「お茶行きませんか?あさじんさんの分は僕が出しますよ」という言葉に「それなら・・・」と受け入れてくれた。
我々は雀荘を後にし、次の目的地『珈琲貴族 エジンバラ』へと向かった。
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19時からは、いま話題の麻雀放送が開始されるのだ。喫茶店ならば皆でお気持ちをこめて応援することができる。これに乗らない手はないのである。
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【 次回 カフェ出禁寸前事件 マグマ噴火編 】
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