星見る独りの夜
ー今日も私は独りの夜を過ごすー
「星、綺麗だなぁ……」
窓から見える星は私を独りにする。あの深い夜の闇に瞬く星には届かない。手を伸ばしても届かないことを知っているのに、触れたくなるの。まるであの人みたいに……。
私にはもう長いこと付き合ってくれている彼氏がいる。薬指の指輪も何年そこにあるかわからない。日焼けしてしまって、はめられている指だけ白い線ができている。最初はすぐに既読がつく連絡も、寝てしまうまでしていた通話も、週一回のデートもなくなってしまった。よく言えば関係が落ち着いたということだと思うけど。
でも、物足りない。気持ちが沈んで動く気もしない。私は彼からもらった愛が日に日に崩れていく音が聞こえる。散らばる愛の破片を拾うのは、彼はそれを求めているのかな...?
本当は、好きなんかじゃなかった。私は私の音楽や本、服装の趣味を否定しない人と出会いたかったな。そんなの無理だって私は諦めちゃった。一緒に楽しんで、仲良く毎日話して、一人の時間もお互いに過ごせて、苦痛でない日々を過ごしたかったの。
ただ助けられたかった。助けてほしかったの。それだけのために、私は私の気持ちを偽って、彼を努力して好きになった。結果的に本当に好きになれたよ。でも、声もセンスも好きじゃない自分を大切にしてくれない人と付き合って、いろんないやなことも耐えて。本当、私、なにしてるのかなぁ。そんな自分が嫌になって、彼のことも嫌になってつらいことばかりで。いつも泣きたい気持ちでいる。自分のせいなのに。
私はベッドに横になったまま、カメラロールを見返した。
本当に好きだった頃、たくさん彼の写真を撮った。LINEで、好きだよと書かれた画像をたくさん保存していた。誕生日プレゼントは手作りのアルバムを作って渡した。呼ばれたらお互いに会いに行ったし、時間があればいつも一緒にいた。
彼は私のことを好きだと言ってくれる。愛していると言ってくれる。自分には君しかいないと言ってくれる。その言葉とは裏腹にひどいことばかりしてくる。意を決して別れを告げたこともあった。
それでも、彼は別れてくれない。私が彼を利用したからか、私が卑怯な女だと知っているからかもしれない。付き合っている意味あるのかな。……そんなのないのに。
「……愛されたい。なーんちゃって……へへ」
なにもかもからっぽみたい。私は無理矢理に抱かれる時に心の中で彼ではなくあの人の名前を呼ぶ。本当は、私はいつも声をかけてくれるあの人の方が好き。心から。でも、こんなことをしている私には好きになる権利がない。それなのに、どうしてもあの人の声が聞きたくなるの。
私は布団をぎゅっと抱きしめた。こんなことをしても、何もならないのに。
「寂しいよ……ねぇ……」
答えてくれる人はいない。私の声は一人の部屋に消えていく。
目を瞑るたびに、あの人の笑い声を思い出す。反対に私は悲しくなる。星は届かないから綺麗なのかな。近づいたらやがて私もこの身を焼かれるのかな。いっそ焼かれたらこの寂しさはなくなるのかも。
窓から見える星はどこまでも遠くに輝いて綺麗だった。