突然大手ジャンルにハマった姉に、ライトなアニオタと装いつつ舞台挨拶上映を観に行った話

姉から映画に誘われた。

姉が突然変異した時の話はこちら↓

(この時と変わらず、私は姉にも家族にも二次創作して本を出すような重度のオタクである事は隠している)

誘われたのは、
ワールドツアー上映「鬼滅の刃」上弦集結、そして刀鍛冶の里へ
姉はキメツのお友達を作る気はないらしく、「ムビチケ買ったから行こう!」と誘って来た。
確かに今回のムビチケは絵柄が2枚続きで二枚あるが、
私なら確実に自分で二回行く。

予約時

いつでも良かったのだが、早く観たそうな姉の気持ちを汲んで公開最初の土曜日に行くことにした。
その日は各劇場で舞台挨拶のライビュ付き上映があり、まずその予約が先に解禁された。これはライビュ回の予約であって、通常上映はまだどの映画館も上映スケジュールが出ていない。

よくわかってない姉から連絡が来る。
「同じ日に通常上映はあると思うんだけど……これから出るのかな~?」
私は全く調べていなかったのだが、上映自体はその前日から開始だったんですね……。
土曜日の予約画面を開いてみると、既に(恐らく劇場会員の方の先行予約で)多数の席が埋まっていた。

さて、席はどこでもいいからこのライビュ回を予約するか。
数日後に通常上映の予約が解禁されるからそれを予約するか。

姉は「せっかく二人で休みを合わせたのに、この日に観られなかったらどうしよう……」と妙に弱気になっている。
いやいや、絶対こんな大規模に告知しておいて土日の上映がライビュの一回なんてはずはないだろう。同じ映画ではあるが、特別上映と通常上映は別々の作品として劇場の予約も分かれる事を私は知っている。

安易に私はLINEを送った。

「不安なら10時台のライビュを取り合えずムビチケでとって~
 ランチ食べて~
 夕方に通常上映をゆったり観ればいいし」

送信ボタンを押すと同時に気づいた。
 
 
 
 
あーーー!
一般人は!同じ映画を同じ日に何度も観ない!!


いや、リピーターは居るよ?居るよ?
姉だって大好きなGACKT様の『翔んで埼玉』はのべ30回以上観てたよ?
しかし同日に二回は観ないねえぇぇぇ?!
気に入って「もう一回観たい」ってなることはあっても、まだ一度も観てないのに平然と同じ日に観ようとしない。

姉の反応は「おかわり?!」とちょっとウケていたから、
半分笑いとして受け止められたようだった。
セーフとしよう。

上映と舞台挨拶を観た後。

今回はTVシリーズと無限列車編・遊郭編のダイジェストで既に観た部分であるし新作部分の刀鍛冶編も内容は知っていて、まだ何も起こらない場面である。それほど感動や興奮があるわけではない。
もっとも無限列車編で「明け星」が流れ、遊郭編の間に暗転する間じゅう、劇場内のどこかしこから啜り泣きは聴こえていた。
わかる~、わかるよ~その気持ち……
姉にはわからないだろう、その気持ち!

油断した私はのほほんとエンドロールを観ながら、
この後の姉との会話で
「あぁ、今回も梶浦由記なんだねー」
と口走りそうになっている自分に気づいた。

そこじゃない。
映画を観た人の第一声はそこじゃない。
しかも中の人どころか制作陣の人だ。
一般人は製作スタッフの一人の名前から盛り上がらない。

もう一箇所、エンドロールには音響協力に鍛冶場の名前があって目に留まり、「へぇ……」と思った。
これは言っても普通か?普通か?
マニアックなのか?

い、一般人はこれを観て何を思うんだ?

もはや私にはわからない。

  • 「やっぱり迫力あったねー」→ 正解◎

  • 「絵が綺麗だねー、映像すごかったね」→ 正解○、ここで作画とは言ってはいけない。作画ってなに、作画って!

  • 「音楽かっこよかったねー」→ 正解○

  • 「甘露寺さん可愛かったねー」→ 無難○

作品については当たり障りなくマニアックさを回避した(つもり)。
しかし私は舞台挨拶についてうっかりしたことを言った。

「そういえばー、松岡さんは普段からあの声なんだね~」

登壇したのはメインキャラクターを演じる花江さん、鬼頭さん、下野さん、そして松岡さんである。他の方ももちろん喋りのプロであったが、各々の地声でキャラのイメージが浮かぶことはなかった。
松岡さんは、色んなアニメで演じていたキャラの自然な話し声そのまんまだなと思った。とてもよく聞く声である。

ここで姉からのリアクションがマズかった。

「えっ、そうなの」

姉は伊之助しか知らない。

他に何に出ている人かと聞かれ、私はしどろもどろになる。
即座に考えたのだが、松岡さんの演じていたキャラといえばキリトくんとかトリッキーなペテルギウス・ロマネコンティとか……確かに有名ではあるがSAOもリゼロも地上波王道アニメではない。
何せあの人は何にでも出てくる。イケメン主人公からゲスい脇役まで何でもこなす人との認識で、かえって直ぐには名前が出て来なかった。それに今考えてみても主人公クラスの、冴えカノ、ダンまち……超人気ではあるが、それはあくまでオタクコンテンツの中での人気……

※ここで、「えっ、人気ありますよー?」とか「一般人も知ってるでしょうよw」と思った方は、ハッキリ言いますが最早あなたはオタク感覚しか持ち合わせておらず、世間一般の認識を客観的に見られていません。あなたが常識的に知れ渡ってると思っている世界はアニメオタクの世界です。

姉がこの日観たあの声優さんは伊之助の人、
伊之助役の人でしかないの……

姉の知ってる伊之助の中の人の声というのは、怒鳴りがちで少しダミ声の入った、あれがデフォルトなのだ。
そう、逆。逆だった。

「松岡さんって普段はあんなイケボなんだねー」←これが正解◎!!

ごめん、なんでもないよ 忘れて

★追記:むしろ「松岡さん」ではなく「伊之助の人」が正解だったな……

ここでようやく私は姉の認識を改めた。
姉はアニオタではない、キメツのオタクだ。
だから姉は「次はなんのアニメ観よう〜」とか来期のアニメを探さないし、わざわざ観ようと思っていない。
しかも原作寄りであるからキャラの声など二の次だ。姉は中の人やらアニメーション自体に詳しくなる必要がないし、この映画もキメツジャンルに付随しているコンテンツの一つでしかない。

キメツ関係だから観ているだけ!←←←こういうことか!

そもそも姉は妹をどの程度のアニオタだと思っているのか謎。
ガン●ムやマク□スとか好きだよねー、そういうお友達多いよね、くらいのアニメ好きとまでしかわかっていないかも知れないし、もし私がガッツリR18の絡み漫画を描いていたとしても「アサちゃんはかけそうだよね~^^」とニコニコしている気がする。

姉の推し活を推す。

姉の話を聞いていたら「小説を書いてる人が……」と出て来て、ついにコヤツは二次小説・字書きという存在を知ってしまっていた……。
さすがに推しカプの同人アンソロなど買っているらしいから気づくのは時間の問題だった。願わくば熱心に二次小説を読むほうでなくビジュアル的に楽しむオタで居てくれ……
そして徹底的ROM専。
たぶん自分から創作することはないだろう。

姉は最初に手に入れたミニぬいをとても気に入っている。
私はあまり足を踏み入れていない文化なのだが、いろんな方がそのミニぬいに服や帽子を着せ、料理や景色と撮った写真をアップしているのを見た。姉はどうやらそっちに行った。絵や字を創作しないから実写に走るのだ。

ハンドメイドを与えてみる。

前回私と会った時はそのぬいに、「帽子を被せてあげたいんだよねー」とガチャガチャや百均を回ったが丁度良い物は無かった。
姉に自分で作るという発想は無い。
ちょうど私のフォロワーさんが、ぬい用のうさ耳ケープを作ってらしたのでそれを買ってあげた。

なんだか与えてみたくなるじゃないか……
こういうのがあるんだよ……

こちら側へ来た姉を歓迎してないのだが、なんとなく楽しそうでまだまだ伸びしろがある姉の活動を煽るのは面白い。
もはや私は、

推し活をしてる姉を推している。

姉はとても喜んだ。
この季節のカゼバシラサマはとても寒そうなので、しばらくうさ耳ケープを着せておくそうだ。

推しのラバストを与えてみた。

前回会った時、姉は「ラバストとか欲しいんだけど……」と言っていた。

先日B●OK OFFに行った私は、それを思い出してどんなもんかと覗いてみた。
※我が家では最近、本屋店頭では扱ってない昔の漫画を探している。
※今探しているのは『湾岸MIDNIGHT』33巻以降なので、もしどこかで余っていたら教えてください……

大手ジャンルだからラバストくらいあるだろう。
それとも大手ジャンルともなるとラバスト・アクキーなどは枯れ尽くしているのか?

普通にあった。山ほどあった。
えっ、いいな。本当にいくらでもある。大手ジャンルいいな……

全部買っていたらキリがないほどあるので、姉が好む「ゴラァッ!」というツラをしたカゼバシラサマを3つ回収して来た。
1つあれば良いだろう……と舐めていたのだが、お値段もケチるほどでもない。しかもラバスト1つ取っても、「これもこれも絶対姉が好きだろうな……」と選べないほど好きそうな顔が3つもあるのだから心底羨ましい。

 案の定、姉は大喜びした。

 遅れてハマったので売り出し当時のグッズまでは追えていない。コラボも多すぎるしさすがに無理だろう。
前回はゲーセンをガチャガチャ巡りしたりア○メイトに付き合ったが、世間の流れ(アニメ放映)はまだ無限列車からの遊郭編が済んだところだ。カゼバシラサマはまだまだ活躍しない。これから出るだろう上弦の人や他の柱グッズもあるから風の人もあったのだろうが、正規の店舗からはとっくに消え、商品は入れ替わっている。
 姉はオタグッズの手に入る場所など知らないのである。
今までの姉は、GACKT様を追って訪れる場所・買う物は全てセレブっぽく、少々良い食事処やブランドやインテリア雑貨だった。姉の行動範囲にはこんな店はない。あっても入ろうという考えに至らないだろう。

姉が行くべきはア○メイトやゲーセンではない。
B●OK OFFと駿河屋だ。

姉など、本を売~るならB●OK OFF~♪ で、まさに本を売ったことしかない人だったが、あまりに大喜びしたので「近くにもあるよ?」と私は得意げにB●OK OFFへ連れていった。

案の定、近くの店舗にもグッズは大量にあった。フィギュアなど大物はさておき、ラバストや缶バなどが下がっている棚の前へ行く。

売り場がちゃんと推し毎に分けてある事に感動した。
大手ジャンルすごい
えっ、柱どころか脇役キャラすらグッズあるの……「隠」や初期に倒した鬼のグッズさえある。
大手ジャンルすごい

よかったね、と姉の顔を見ると、
「えっえっなんでこんなにあるの、限定商品もある!」
と食いついていた。
そして片っ端から棚や篭を見て、さすがにしゃがむのに疲れた……、と二人とも思うほどだったがそれでも全部は見切れなかった。
大手ジャンルすごい……
しかし疲れたと言いながらも姉は頑張る。



……ヤバい。



一日の最後にとんでもないところへ連れてきてしまった。

10~15分眺めて終わると思っていたが、気づけば40、50分は居座っていた。
結局ラバストや色紙など十数点お買いあげしていった。
しかし元々GACKT様のために躊躇なく度々十数万円吹っ飛ばして来た姉にとって、
「これだけ買っても数千円……?」
数千円なんて円盤一枚も買えないね、そうだね……
ライブの前席に数万、コラボやプロデュースアクセサリーで十数万、それを思えば可愛いものである。
しかもこの時の姉は、それと同等かそれ以上の幸せを得られているに間違えなかった。


……姉の夢の島はここにあったか

姉はご機嫌で帰って行った。
映画を観たのは遠い昔のような気がする。

あわよくば舞台挨拶のあれこれは忘れていて欲しい。