【推し活与太話】どうやら私は胃よりも心臓派だったらしい
推し活の道は奥深く険しい。
半世紀近く生きてきて初めてのことである。推しが本気でM-1優勝に挑戦している。
12月7日、決勝進出者発表当日
19時ごろ帰宅。
TVerの発表を見るために21:25頃までにはすべてを終わらせなければならない。
夕飯と明日の朝食準備を手早く済ませ、カビゴンにも夕飯。たまにマメミートしかないときにごちゃまぜドリンクできちゃうけど、あれどんな味なんだ…
まるで心臓の細胞一つひとつが緊張で縮こまってしまい、お互い引っ張り合った末に心臓そのものが圧縮されているかのような感覚。先日衣替えで圧縮袋にしまった夏用ステテコに意識があったとしたら、こんな感覚だったのかもしれない。
頭からっぽの状態でただただ笑うだけ、楽しいだけの漫才の大会で、こんなにも寿命が縮まりそうな感覚を味わうなんて聞いてない。
21時ごろ。お手洗いついでにキリがいいところで仕事の手を止める。
眉と目は2時間ほど前から目まぐるしく変化している。水の上にうっかり垂らした油の色が光の当たり方と見る角度によって変化するくらいの目まぐるしい挙動不審。
21:27。
次の日用のなすを切り終わったところで、ひとまず落ち着けるところに腰を落とし、スマホを取り出す。
決勝進出者発表後、体中から力が抜けて、音のないロングトーンで息を吐いた。もし人間に魂のようなものがあるとしたら、きっとそのときの私からは何%か漏れ出ていた。
次の日の夕飯用ぶなしめじに小麦粉をまぶしつつ、推しが優勝したときの妄想をしながらはたと気づく。
これから最短で12月24日まで、果たして私の心臓は耐えうるのだろうか?
あのキリキリと締めあげられるような心臓の痛みと急上昇どころではない脈拍を体験する機会が、あと何度あるというのか。孫の中学受験、大学受験、就職を念仏を唱えつつ見守るおばあちゃんはこんな気持ちになのかもしれない。子どもも生まないうちにこんな気持ちを味わわせてくれるとは、推し活とはつくづく奥深い。
どうやら私は緊張すると、胃酸過多で胃が痛くなる派ではなく心臓がキリキリと傷む派だったらしい。この年になってこんなに心臓がキリキリする体験は本当に貴重だ。推しが優勝したときには昇天(物理的に)していてもおかしくない。
万が一のときのために、まずはエンディングノートの内容と防災バッグ中身の見直しから始めようと思う。
とりあえず敗者復活戦がんばれ、推し。