アサの朝 (ch2) - 幻の雨
日曜日の夜明けに雨の音で起きて、あー雨が続くと言っていたな、と思った。朝起きて、尻尾をふりふりしてケージの中で待っている白い犬を出して今日も可愛いね、と声をかける。3月に7歳の誕生日を迎えた白い犬こと-ゆず-は、最近コストコで買った犬用のビタミンを朝ごはんと共に食べる。
昨年引っ越してきたこの街では、アパートメントを借りることにした。西海岸では小さな庭付きの家を所有していたが引越しの際に貸し出すことにし、こちらでは比較的中心地にある、立地の良いアパートメントの一階に住んでいる。
治安のこともあり、1階の部屋を借りることに少しためらいはあったものの、折り紙つきのめんどくさがり屋の私は、「アパートメントを借りる」という事実の中で、1日に何回かゆずを外に出さなければいけない任務が課されたのだ。今まで住んでいた家はゆず自身が自らの意思で外に出れるような仕組みにしていた。ただここは借りている場所でそういうわけにはいかない。
夫婦共にあまり「朝のルーティン」なんてある方ではないので、もちろんこの犬もあまりルーティンなく育った。朝、鳴き声で起こしてくることは家族になって一度もない。
しかしそんなわけでも私たち同様、朝起きると催したくなるのは動物の必然だ。朝ごはんをあげた後、私もサッと顔を洗い、髪を手櫛し、パジャマから人様にある程度は見られてもいい格好に着替えた。
明け方雨が降っていたから外は濡れてるだろうな、と思いリビングのブラインドを開ける。ゆずにリードをつけてドアを開けた。
地面は乾いていて、芝生は多分、スプリンクラーで水やりがされていただけだった。確かに雨の音で目が覚めたと思うが、あれは夢だったのだろうか。よくわからない気持ちのままゆずの気ままな朝の散歩に付き合い、乾いた地面と曇った空を見ながら帰路についた。