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◆行くぞ網走監獄!②/ミドル夫婦の車中泊de道の駅めぐり

 うっすら不穏な空気を漂わせつつも進んできた網走方面車中泊旅。今回は第2部をお送りします。
 ちなみに第1弾はコチラからどうぞ!⬇️⬇️


1.【博物館 網走監獄】⇒【網走市街】⇒【小清水町&道の駅 はなやか(葉菜野花)小清水】


 貴重な4連休を、道東の道の駅制覇と網走監獄観光に使うことを決めたわたしたちは、美幌峠を経由して網走市に至り、やっと今回のメインインベントである網走監獄へ辿り着いた。
 特に何か思い入れがあるわけでもないのだが、大好きな漫画『ゴールデンカムイ』を始めとした様々な作品に登場するばかりでなく、北海道に住む者としては、やはり一度は訪れておきたいという想いがあったのだ。
 駐車場に着いた段階では、まだ外は土砂降りだったが、とりあえず監獄は主に建物の中での見学になりそうなので、激混みの受付に足を向ける。
 受付前に出来た行列では、どこから来たのか知らない中年男性が「いや~!懐かしいな~!えっ!?いや別にここに居たわけじゃないよ!?友達がさ~!」などと、ボケなのか本気なのかよくわからないことを大声でしゃべりながらイキり倒していた。さすが監獄である。

駐車場から監獄博物館の間にある小川にかけられた橋。なぜか悪いことをしたわけでもなければタヒんだわけでもないのに、三途の川気分になってくるから不思議だ
これは監獄の門
使われていた当時の建物を、リアルな人形が守っている

 ここは正式名称を【博物館 網走監獄】と言い、旧網走刑務所で明治時代から実際に使われていた建物を移設・保存して公開している日本で唯一の監獄歴史博物館だ。
内部のほとんどは一般公開となっていて、独房や服役中の仕事場などを見学できるほか、リアルな人形を使って復元した当時の暮らしや作業風景、周辺の歴史などを学ぶことができる。
 また、シアターや当時の受刑者の労役体験コーナーなども設置されており、これで入場料1500円なら十分に楽しめる価値があると感じた。

網走刑務所の成り立ちや歴史が分かりやすく紹介されている
年季を感じさせる建物
今の北海道はマジでどこへ行ってもゴールデンカムイで一儲けしようという意図が見え隠れしている
看守の長屋だったかな…
当時の暮らしを再現した建物に紛れる夫氏

 恥ずかしながら、ここへ来るまで知らなかったことはたくさんあったが、とりわけ衝撃だったのは、オホーツク沿岸と北海道中央部を結ぶ道160kmの開削工事が、わずか1100人の網走監獄の囚人たちと200人の職員によっておこなわれていた、という話だった。
 険しい地形、過酷な寒さ、迫りくるヒグマの脅威と戦いながら、苛烈を極めたその道の工事は、明治24年のたった1年間で開通まで至ったという。
そのため今もその道は通称を『囚人道路』と呼ぶのだとか。
館内のシアターでは、映像を元に当時の過酷な現場を体感できるようになっているので、時間がある方は立ち寄ってみるのもオススメだ。

囚人たちが農作業で使っていた古い器具なども展示されている
実際に使われていた拘束具の展示も

 わたしが個人的に一番見応えを感じたのは、ここに移築された世界最古の木造刑務所の建物だ。
 ここは中央から放射状に獄舎や独房が作られた『五翼放射状平屋舎房』という独特な建築で、どうやって脱獄を防ぐかという工夫があちこちになされている。

獄舎のひとつひとつが結構な大きさ
囚人部屋の正面はこんな感じ

 ちなみに、ここにはゴールデンカムイの人気キャラクター・白石のモデルとなった人物の人形がめちゃくちゃ面白い感じで設置されており、気付いた時には思わず爆笑してしまった。
 ファンの方には、ぜひ現地に行ってその姿を拝んで欲しい。

 写真は撮れなかったが、監獄の出口付近にある売店では多くの網走刑務所グッズが販売されていた。
「そんなもんまである!?」みたいなグッズや食べ物もあったので、見ているだけで時間がちまちまと過ぎてゆく。
わたしはここで網走監獄マグネットと、上司にあげる変なTシャツをお土産に購入した。
他にも見たもの・書きたいことはたくさんあったような気もするが、多分博物館の類は人によって見たい部分が違うと思うので、さらっとこれくらいにしておこうと思う。


 とりあえず、網走監獄で今回の旅の主目的は達成してしまったので、残りの2泊はどうしよう?という話になった。
 道東の見どころはまだまだたくさんある。
阿寒湖のアイヌコタンも見たいし、何より二次目的は、未獲得の道の駅スタンプを拾って歩くことだったはずだ。
そうと思えば回るべき場所はまだまだある。
 目標を再確認したところで、やっと昼間の揚げイモが消化されたことに気づき、わたしたちは少し早めの夕飯を摂ることにした。

 ここで、夫は網走の【だるまや】さんで『ドロラーメン』なるものが食べたいと言い出した。
何でも行きつけの美容室で「網走に行くなら」とオススメされてきたものらしい。
 しかし。
わたしはこってり系のラーメンが苦手なのだ。
その上、よく考えてみれば昨日も弟子屈ラーメンを食べたばかりである。さすがに2日連続のラーメンはちょっとな…という顔をすると、わたしがこってりラーメンが苦手なことをよく知っている夫は「とりあえずおれだけ食べてくるから、あなたはあなたで好きなものを食べて来たら?」と言い出した。

別に。
いいけど!!
そんなにラーメン食べたいか??

…とも思ったんだけどさ。別に怒ることでもないし。寂しいだけだし。
確かにあの美容師さんにはお世話になってるしさ。せっかくオススメされたんだから、ちゃんと行っておきたいっていう夫の気持ちもわからんでもない。

 結局わたしは夫がラーメン食べてるあいだ、網走のクソいなてえパチンコ屋さんで1円パチンコやって時間を潰した。1500円負けた。何やってんだろね!?

 1時間ちょっとで戻ってきた夫は上機嫌で「美味しかった!」とニコニコしていた。
まぁ、嬉しそうだったので万事OKである。
 わたしはパチンコで負けたのと空腹だったのとで若干しょんぼりしていたが、それでもどこか美味しいところでご飯が食べたいと、Google検索で【ホワイトハウス】さんという網走市内の洋食店を見つけていた。

 【ホワイトハウス】さんは、JRの網走駅近くのアーケード街の一角にあり、ネットの情報では20時までの営業とあった。
 到着したのは18時半すぎ。
余裕でイケるじゃん!と店内に足を踏み入れると、ご店主と思しき女性の方から「19時で閉めます」とのお声が。
「あ!あ!それなら結構です!すみません!」と慌てて帰ろうとしたが、かなり強めの口調で「7時閉店だけど待ってあげるから!入って入って!」と呼び止められた。
「えぇ!?いや大丈夫ですすみません!」と「大丈夫!食べるまで待ってあげるから!」というやり取りを2ターンほども繰り返しただろうか。
結局大いに恐縮しつつ、何故か大慌てで席につくことになってしまった。

 めちゃくちゃたくさん種類のあるメニュー表には「必ず一人一品注文してください」というような文言が書かれている。
そうは言っても夫はついさっきラーメンを食べたばっかりなので、何も食べられるわけがない。「やっぱりやめりゃ良かった…」と心中では後悔が渦巻いていたが、カウンターではご店主さんを始め3名ほどのスタッフの方々がこちらの気配を窺っており、やっぱり帰ります、とはとても言えそうにない雰囲気。
夫はわたしの心情を察し「野菜不足だから…おれ、サラダ頼むよ」と言ってくれた。そう、基本的には心優しい夫なのである。

 メニュー表には、本当に美味しそうな洋食がズラリと並んでいた。
そうでなくても優淳不断なわたしはすぐに決めることができず、うろうろと目を泳がせる。
一体どれくらい迷っただろうか…3分くらいだと思うのだが……突然大きな声で「ハイ!悩まない!さっさと決める!!もう時間ないんだから!」と急かされた。
ええええええええ?だからいいですって言ったのに??
そんなにまでして別に食べなくてもよかったんだけども!!

出てきたもの
夫が頼んだサラダ

 画像が残っていたので、辛うじてエビフライを食べたことだけは解ったものの、何とのセットだったかは記憶も記録もない。
ただ、記録のために使っていたnoteの箇条書きメモには一言「出て来たご飯を10分かからず完食。食った気せんかった」と記されてあった。
それは「どんなに美味しいご飯でも、慌てて食わされたらレビューすらできない」という初めての経験であった。
 しかし、思うに多分【ホワイトハウス】さんは普通に美味しかったんだろうね。わたしの性格上、この接客で美味しくないお店だったら、この上ないほどにメモで愚痴り散らかしていたのに違いないのだから…。
 ここはいつか、時間に余裕のある時に再訪したいと思う。

 さて、そんな些かのモヤモヤ感を引き摺りながら外へ出て、夫がいざ車を発進させようとした時、わたしの目には突如、嫌なムードを一瞬にして吹き飛ばすような文字が飛び込んできた。

「手焼きどら焼き」

思わず「停めて!」と叫んで夫に車を停めてもらい、ドラマのワンシーンのように雨の中、車を降りて走り出す。
すると間違いなくそこには「手焼きどら焼き」と大書されたノボリが、ハタハタとはためいていたのだった。

 実を言うとここらへんのくだりは、画像が全く残っていない。
箇条書きのメモを頼りに推測すると、多分さきほどの【ホワイトハウス】さんのすぐそばで、やはりアーケード街の一角に、このお菓子屋さんはあったのだと思う。

 記憶では、割と歴史を感じる建物だったような気がする。
何しろ時刻は19時すぎ。普通のお菓子屋さんならとっくに閉まる時間だ。しかし電気は点いている!!
開いてますか!?と叫びながら飛び込むと、奥にいらしたご年配の店員さんが「はい」とお答え下さった。

 わーい!とショーケースの中を見回すと、そこには確かにどら焼きがズラリと並んでいた。
しかし何だか違和感がある……何だろう…?
 と、そこでわたしは気がついた。
このどら焼き、千秋庵って書いてあるじゃん!

 千秋庵と言えば、北海道銘菓『山親爺』や『ノースマン』でよく知られた北海道の大手老舗菓子メーカーである。
千秋庵って…あの…?と思わず零すと「違います」と結構な圧でピシャリと否定された。
先ほどのホワイトハウスさんといい、何やら網走の老舗のお母さんは圧がすごいのだ。
 この辺のくだりは、先日どら焼き備忘録の方で記事にしたので、詳しくはそちらをご覧ください⬇️⬇️

 何しろ結論から言うと、ここのどら焼きは本当に美味しかった。
 まさかこんなわが町の真反対に位置する北海道の端っこで、こんなにレアな歴史を背負った老舗に出会えるとは思ってもみなかったので、ここまで来たのは運命だったのに違いない!と思い込むことにした。
それなら大慌てで晩ごはんを掻き込む羽目になったことにも納得が行く。

 19時過ぎに【網走 千秋庵】を後にしたわたしたちは、そのまま温泉か銭湯を探すことにした。

 道東を旅する人にはあらかじめ言っておきたいのだが、いたるところで温泉にぶち当たる北海道にしては、道東は限りなく入浴施設が少ない。
したがって、他の地域と同じくらいの気持ちでいると、お風呂に入るタイミングを逃すことがままあるので、道東で温泉を見つけたら、特に車中泊旅の方はすぐに飛び込んでおくことをオススメする。

 この時は、一度【網走湖荘】というところに行ってみようかという話になったが、敷居も値段もお高そうだったため、いっそのこと次の目的地である小清水町の道の駅まで行こうか、という結論に達した。
 調べてみると、幸い小清水町には【小清水温泉ふれあいセンター】という町民向けの温泉があるようだ。
ナビでは30分と出ているが、網走は何だかすっかりお腹いっぱい感があったので、とにかくそこまで走ってみることに決めた。

 ウロウロしながら入浴施設を探していたため、ちょうど網走湖荘の真ん前の脇道から小清水町を目指し始めると、そのルートは街灯も民家の灯りもほぼ全くと言っていいほど見えない、ひたすら真っ暗闇の謎の砂利道。
 あまりの暗さにどんどん怖くなり、本当に着くの…?という想いが胸の中にむくむくと膨らんでゆくほどだ。
 結果的に普通にたどり着くことはできたけれど、怖いもの知らずの夫でさえ「この道大丈夫…?」と不安そうに何度も零していたので、もしかすると他にちゃんとした道を通る正規ルートがあるのかも知れない。

 そんな感じでよたよたと辿り着いた【小清水温泉ふれあいセンター】は、古いけれどもいかにも”町民憩いの場“という感じの鄙びた公共温泉施設なのだった。
 レビューは今ひとつだったが、そこまで汚れてるわけでもない。お湯こそややぬるめだが、ヌルヌルした泉質の、気持ち良い温泉だったと思う。
地元の皆さまも静かで奥ゆかしい感じで、個人的には比較的好感の持てる温泉でした。
お風呂難民になりかけている車中泊民にはぴったりの場所かも。

 温泉を出る頃には、時刻は21時半を回っていた。
とりあえず他に場所のあてもなかったので、当初の予定通り小清水町の道の駅を目指す。
【小清水町温泉ふれあいセンター】からは、車で約15分。来た時と同じように真っ暗な道を進むと、やや狭いながらもかなりの車中泊車輌が停泊している【道の駅 はなやか(葉菜野花)小清水】に辿り着いたのだった。

 しかし、ここでちょっとした想定外の出来事が発生する。
事前情報によると、この道の駅には道民の心のふるさと・セコマが隣接しているはずだったのだ。
しかし、音威子府村でさえ開いていたセコマが22時を前にして閉店!
買い出しの予定がすっかり狂ってしまったのである。まぁ、北海道車中泊あるあるだってことはいい加減判ってきたけどね☆

 そんなわけで、泣く泣く再びGoogleマップを検索し、8kmほども先にあるセコマへ買い出しに行くことになった。
何しろまだ車中泊旅には少しばかり暑い季節。
ミネラルウオーター2リットルは夜を越すのに必須だったのだ。

 途中、真夜中に濤沸湖という湖のほとりを通りかかった。
周囲は真っ暗だったので、後で調べて解った野鳥たちの楽園の面影も垣間見ることはできなかったが、ド晴れの夜空に輝く月がちょうど湖面にキラキラとした灯りを零しており、夢のように綺麗な景色を作り出していた。
 本当に美しい景色だったのだが、何枚か撮った画像を確認してみたところ、黒い絨毯に落っこちたうずらの生卵のような有り様だったので、その場で削除してしまった。
 この湖はラムサール条約にも登録された野鳥の宝庫らしいので、昼間訪れた方が楽しめるのかも知れない。

 遠くのセコマで飲み物やお菓子を確保したあとは、また道の駅へ戻って就寝準備をし、ポケモンGOとnoteの執筆に時間を費やした。
 今回の旅は比較的行き当たりばったりだったが、そういうのも悪くないな、と思えた1日なのだった。

翌朝の小清水町の道の駅

 翌朝は、快晴。
小清水の道の駅は24時間トイレもあったが、この日は疲れていたのか朝までぐっすり眠ることができた。
 道の駅は9時オープンということだったので、それまでにはさすがにセコマも開くだろうと思っていたところ、何と8時になってもここのセコマは開かなかった。
8時を過ぎても開かないセコマを見たのは、実は初めてのこと。
セコマはマジで店舗によって全然経営方針が違うので、観光で訪れた皆さまはどうかご注意ください。

 朝になって目の当たりにした【道の駅 はなやか小清水】の看板を眺めながら、『葉菜野花(はなやか)』という昔の暴走族みたいな当て字をしたのはどなたなんだろうなぁ…などと考えているうちに、ぬるりと道の駅はオープンしていた。

キレイな道の駅!
スペースにゆとりがあって大変よい。

 小清水町の道の駅は、外観から予想していたよりもずっと綺麗で充実していた。
地場産品のお土産はもちろんのこと、蟹の生け簀まであり、観光客の目を楽しませている。
 とりわけ推していたのは『小清水とろり』という地元産じゃがいもを使用したジャガイモのスイートポテトタルト。
他にもルバーブが有名らしく、ここでしか買えないものもそれなりにあるようだった。

カニー!!
これが『小清水とろり』のポップ

 この道の駅にも一応展望台があり、知床連山とオホーツク海が一望できる!という触れ込みになっている。
実際に登って見てみたが、知床連山は結構遠くにある感じで、景観自体は他の絶景系道の駅と比べるとイマイチという印象だった。
 しかし開店前のために実際食べることはできなかったものの、レストランなどのラインナップも大変頑張っていたので、お近くを通られた際は是非立ち寄って見て頂きたい。

展望台からの風景はこんな感じ
こちらは山側を臨む景色
そしてこれが車で食べた『小清水とろり』

 ちなみにこの道の駅最推しの『小清水とろり』は、予想をはるかに上回る美味しさだった。
外側のタルトはパイタイプのパリサク生地で、それが品名に相応しいとろりとしたジャガイモのスイートポテトをぎゅっと抱きしめている。
ジャガイモの自然な甘みが何とも言えず優しく、食べるとふんわり幸せを感じる逸品だ。
これは絶対的にオススメしておきます!

2.【JR止別駅】⇒【道の駅 パパスランドさっつる】⇒【道の駅 ノンキーランドひがしもこと】⇒【道の駅 あいおい】


 さて、ここまでかなり順調に進んできた旅路だったが、とうとうあの時間がやってきた。

 ハイ!バトルの時間だよー!!\(^0^)/

 嫌さのあまり古風な顔文字など使ってみたが、中身はアホ極まりない事態である。

 まず、夫が突然「今日は気持ちがいい天気だから、とにかく気持ちのいい海沿いの道を走りたい」と言い出した。
しかし、あとは特に見るところを予定していないこの旅において、予定と呼べそうなものはまだスタンプを押していない道の駅めぐり。残るは全て内陸の道の駅なので、それはどうするの?と、わたしは尋ねたのだ。
その途端に、夫の機嫌が変わった。

 こういう時の夫がいつも繰り出してくる「ハイハイ、本当は嫌だけどあなたの言う通りにすればいいんでしょ」的な態度が、わたしは本当に癇に障るのだ。瞬く間にわたしも不機嫌になり、はぁ??じゃあ別に好きにすればいいじゃん!わたしだって別にそんなに道の駅なんか無理して回りたいわけじゃないしね(嘘)!またわざわざ何時間もかけて来ればいいだけですし!!となってしまう。
夫も夫で、いやいいよ別に行くよ行きますよ決まりですからね!みたいになり、わたしたちは同時に沈黙のコマンドを選択した。

 そこからは、地獄の車内。
わたしたちはギスギスした無言のまま、おそらくもう帰りたい気持ちを噛み殺し続けたのだった。

 もうね。
旅先でのケンカほどくそくだらないものはないね。全てがぶち壊し。水の泡。
こうして書き起こしてみれば、互いに楽しい時間を過ごしたり、気遣いあったりしてるのにね。
何で夫婦喧嘩なんてしてしまうのでしょう。

 ふつふつと内心でムカついているうちに、夫がふと車を止めた。
ん?と見てみると、めちゃくちゃ雰囲気のあるレトロな駅がある。
さきほどからの喧嘩を引き摺っているため、寄ってみる?と言ったあとにわざわざ いや…別にいいよね急ぐし、などと当てつけがましいことを言ってくる夫にまたイラァ!としつつも「別に急いでないし!」と言い残し、わたしは車を降りた。

止別駅だそうだ
「えきばしゃ」の看板がド渋い
中はこんな感じ

 止別駅は外から見ると一見廃駅の趣だったが、降りてみるとしっかり現役らしいことが見て取れた。
【らーめん喫茶 えきばしゃ】という興味深い看板もあり、らーめん喫茶とな!?と、入ってみたい衝動には駆られたが、オープンは11時からと書いてあったので諦めた。
しかしこのタイミングで【止別駅】かあ。
喧嘩を止めれば別れません、なのかなあ…などとぼんやりしつつ、何となくぽつぽつ会話を取り戻したわたしたちは、そこから10分ほど先にある【パパスランドさっつる】へ車を向けたのであった。

斜里岳

【パパスランドさっつる】へ向かう道は、雄大な斜里岳を臨みながら走るなかなかの景色であった。
ちょうどじゃがいものシーズンなのか、至る所で芋掘りの風景やトラクターと出会う。
 道外からの観光客の方には「イカニモホッカイドウ」な眺めだろうなぁ、などと考えているうちに、車はあっという間に目的地へと辿り着いた。

これがパパスランドさっつる

 ここは温泉がメインの道の駅で、建物は全体的にキレイめな印象を受けた。
 特筆事項としては、地元産焼酎の試飲コーナーがあり、飲み比べが出来ること。
あとは地元産野菜などのコーナーもあったが、他の道の駅に比べると些かお高めに感じた。
 お土産コーナーにはあまり地場産品はなく、よくある温泉の北海道みやげ寄せ集め、という感じ。
温泉を使うのでもなければあまり楽しめる雰囲気でもなかったので、ビキーニョなる謎野菜だけを購入し、ここは早々に撤収の運びとなった。

焼酎の試飲コーナー
野菜の数は豊富
これがビキーニョなる謎野菜

 ここから次なる道の駅【ノンキーランドひがしもこと】までは、約30分。
まだ些かモヤモヤしながら窓の外の斜里岳を見ていると、夫も同じものを見ていたのか、ふと「そういえば、岳と山の違いって何だろう…?」と呟く。
言われてみれば、わたしもにわかに気になり出したので、すぐさま調べてみた。
なるほど!「山」は独立峰、「岳」は連山や連峰につけられるんだって!
もし一般常識だったらすみません!

 2人して「なるほどねー」などとちまちま空気を取り繕いつつ、愛車は美しい畑を見渡す道を進んでゆく。
キレイだねぇ、などと、やっとまともな会話が出来そうな空気に戻りかけた刹那、また非常事態かが発生した。
 この田舎道でガソリンに赤ランプが点灯したのだ。

これぞ北海道ー!
のんきに写真など撮ってるが実はこの時ガス欠寸前

 一応マップでは、すぐそばにホクレンのガソスタがあったのだが、実際に行ってみるとお休みだったので、札弦峠を通る山道ルートで15分ほど先にある別のガソスタを目指す。
 この界隈は写真にもある通り、とにかく畑の景色が綺麗で、窓を開けると最高に気持ちよかった。ちょうど収穫シーズンという季節柄も良かったのかも知れない。

 何とかガス欠にならずに辿り着いたENEOSで給油したあとは、そこから約20分で辿り着く【ノンキーランドひがしもこと】を目指した。
 着く頃にはちょうどお昼になるので、何か美味しいものでも食べれば、この若干嫌な蟠りが残っている空気も変わるかも知れない。

ノンキーランドひがしもこと

 【ノンキーランドひがしもこと】はホテルが併設されためちゃくちゃオシャレな道の駅で、まだそこはかとなく新しい建物の匂いがしていた。
 お土産品などはよくある北海道のホテルのラインナップだったが、ぽつぽつと地場産品も垣間見える。

とにかくキレイな道の駅

 ここでは、例のごとくマグネットと、ひがしもこと酪農館で販売している珍しい『しじ美チーズ醤油漬』なるものを購入してみた。
あとで食してみたのだが、貝特有の風味がいい感じにチーズに染み込んでいて、普通に美味しかった。

マグネットとしじ美チーズ醤油漬

 ちなみにここにはひがしもこと酪農館の商品がたくさん置いてあるのに、なぜかソフトクリームは酪農館製を主張していないため、買うのをやめてしまった。
 不思議と先に訪れた【メルヘンの丘めまんべつ】にひがしもこと酪農館のチーズソフトクリームがあったことを思うと、何らかのパワーバランスや大人の事情が働いているのかも知れない。気になる。

 ここでちょうどランチタイムに差し掛かったため、Googleに載っていた裏のホットドッグ屋さんに足を運んでみた。が。

 はい!!土曜なのに休みだよ!!

 マジで我が故郷ながら、北海道の飲食店は田舎に行くほどお休みがフレキシブルで観光客泣かせなのだ。そりゃセコマが神の存在にもなるわけである。
 とは言え、正確にはまだ11時半を少し回ったばかりだったので、とりあえず次の目的地【道の駅 あいおい】を目指すことで夫と意見が合致した。

 【ノンキーランドひがしもこと】から【あいおい】へ向かう道のりは国道334号線から美幌町を経由して国道240号線を南下するルートである。
 おなかを空かせながら「そういえば、美幌峠に行ったのがだいぶ前みたいな感じするねー」などと言いながら美幌町を通っていると、ふと、あの焼肉の名店(らしい)【肉の割烹 田村】の看板が目に入った。しかも、何と“本店”とあるじゃないか!
 実はよく知らないけれど、田村さんの焼肉のタレはスーパーなどでもよく見かける。しかも、お店の前には大行列!
これは行かねばならんか…?と思いつつも一応Googleで調べてみたところ、とても貧乏旅行の我々には食べていいランチとは思われなかったので、虚無顔で断念した。
 代わりにと言っては何だが、本店のすぐそばにある精肉部門に立ち寄ってみる。
 印象としては、総じてお高めな本店ムーブを感じたが、中には半額商品などもあり、地元の方が羨ましい限り。
 とりあえずわたしたちもすっかりおなかが空き切っていたので、黒毛和牛の炙り肉寿司を購入してみた。

これが肉の田村さんの『黒毛和牛炙り肉寿司』

 うん。まぁ。和牛はやはり焼いてすぐさま食べるに限る。
それはそうなんだけれども、冷めてもこの柔らかさとクオリティなら、まぁまぁアリかなと思いました!パックになった肉寿司にしてはかなり美味しい方かと思う。

 そんなこんなで、とりあえず少しばかりすきっ腹を満たした我々は、今度こそ本当に【道の駅 あいおい】を目指して走り始めたのだった。
 全く、喧嘩はしていてもすぐに寄り道をしたくなる我々なのである。

 さて、あいおいの道の駅は、かなりの山奥にあった。
建物自体は遠めで見るからにオシャレな感じだったが、とにかくものすごい『クマヤキ』推し。
 実は来るまえに、夫に網走のドロラーメンをオススメしてくださった美容師さんから、ここのクマヤキもオススメされていたのだが、どら焼き原理主義のわたしたちは、あまり期待をしていなかった。

至る所に「クマヤキ」の文字が躍る道の駅 あいおい
外に停まっているクマヤキのキッチンカーも可愛い
これはデザイナーさんがセンスよすぎるのでは

 パッと見はオシャレで綺麗だが、開業20周年を迎える山奥の道の駅とあって、建物自体は少しばかり古めに感じる。
 ただ、全体的なデザインが可愛いため、古さはそれほど気にならなかった。
 道の駅の中も平均してクマヤキ推しではあるが、地元産の豆腐やお揚げのコーナーも充実しており、地元民と思しき人々で大層賑わっている。
 レストランも地味ではあるものの、地元産の蕎麦が食べられるという触れ込みのせいか、昼も13時半も回っているのに満員御礼の有様だった。

充実のクマヤキ関連商品
とにかく美味しそうだったので、冷奴をひとつ購入

 まだ小腹がすいていたので、30分近く並んだ末に食券を購入してレストランの席についた。
 ちなみに、こちらのレストランには1000円以下のお蕎麦は存在しない
北海道の田舎にしては、割と強気の販売姿勢と言うべきであろう。
 まだ【肉の割烹 田村】さんの炙り肉寿司が胃の中に鎮座している気配があったので、いっそきつねそば1100円だけをシェアしようかとも思ったが、混みあっているレストランでそれはちょっと申し訳ないな…ということになり、600円のちまきも注文する。
何しろクマヤキは絶対に食べなければならないので、おなかをパンパンにするわけにはいかないのだ。

これが『きつねそば』1100円
これが『ちまき』600円

 きつねそばに関しては、お揚げがふっくらとして厚みがあり、本当に美味しかったが、おそばと出汁に関しては割と一般的な感じだったように記憶している。
 ちまきはしっかり蒸してあり、もち米はいい感じだったけれど、若干豚肉の臭みが鼻についたのが些か残念であった。

 さくっと昼食を終わらせたあとは、いよいよ楽しみにしていた真打・クマヤキさんとのご対面である。

パッケージまで可愛いー!
この道の駅は総合デザインがとにかく可愛かった

 クマヤキは、オーソドックスな粒あん200円と、期間限定のかぼちゃクリーム230円をそれぞれ一個ずつ購入し、外に設置されていた可愛い色合いのテラス席で食べた。
 パッケージから座る席まで、いたるところにクマヤキをベースにしたデザインが施されており、何だか気持ちまでワクワクと楽しくなってくる。
 いざ実食してみると、地元産の大豆で作った豆乳を練り込んであるというクマヤキは、ふんわりもちもち生地の中にしっかり作られた餡がほどよい配分でぎゅっと詰められており、思っていたよりずっとずっと美味しかったのであった。
特にかぼちゃクリームの方は、ふわっと香るシナモンの使い方がかなりポイント高く、すっかりお気に入りになってしまった。
これは本当に是非食べてみて欲しい。

粒あんとかぼちゃクリーム

 ちなみに、この【道の駅 あいおい】の後ろは鉄道公園になっており、古い車輛が3つほど設置されている。
旧相生駅はカフェとして使われているそうで、駅舎も見学できることから、鉄道好きっぽい観光客の方々もそこかしこに散見された。
 わたしは詳しくないのでよく解らないけれど、多分お好きな方ならかなり充実した時間が過ごせるのではないだろうか。

とにかくデザイン性が高いあいおい
案内板も色褪せたりしてないし
古い車輛が展示してある
なかなかの趣き
懐かしい感じのする駅舎
カフェは開いていたかどうか記憶になくてすみません
駅舎の中も見られる

3.【阿寒湖アイヌコタン】⇒【道の駅 かみしほろ】⇒【道の駅 ピア21しほろ】⇒【道の駅 うりまく】⇒【道の駅 しかおい】⇒【日勝峠越え帰宅】

 クマヤキのおかげですっかり和んだせいか、ここらあたりで車内の空気はやっと穏やかさを取り戻してきた。
 今回は、初めての3泊4日の車中泊旅。
ラストの夜までギスギスするのは辛すぎたので、クマヤキに感謝しつつ、ここからの予定を再確認する。

 夫がどうしても寄りたいのは、だいぶ昔に行った時にいたく感動した【阿寒湖アイヌコタン】だと言う。
わたしにも異論はなく、調べてみるとすぐ近くに車中泊も可能な【阿寒湖畔キャンプ場】があったため、今夜の宿泊地はそこに決めて向かうことにした。

 【道の駅 あいおい】から【阿寒湖アイヌコタン】まではそれほど離れておらず、車で約20分の距離である。
【網走湖畔キャンプ場】は、アイヌコタンから歩いていけるくらいの距離にあって、利用料金は1人1000円と良心的だ。
ド広い駐車場は「好きなところ停めていいっすよ〜」という緩さで、車中泊民は駐車場スペースを、キャンプの人たちは奥にあるキャンプサイトに陣を構える構造になっている。
 場内では、めちゃくちゃ人馴れしてそうな鹿が一心不乱に草を食んでいた。

網走湖荘キャンプ場受付
本当にどこにでも居るねキミたちは

 一度受付を済ませると、キャンプ場利用者には木札みたいなものが配られ、出入りの際にはそれを提示するようなシステムになっている。
しかし、それほど厳重に管理されているという印象はなく、本当に大らかな施設だ。
 ついでに言うとトイレの作りも大変大らかで、ウォシュレットも暖房もついていない。秋冬の利用はかなりお尻が冷たいと思うので、どうかご注意ください。

 とりあえず、好きなところに車を停めて宿泊の準備を整えたあとは、湖畔を散策してみることにした。
 時刻は15時を少し回ったところ。
夫が観たいというアイヌ舞踊の舞台までは、まだたっぷり3時間以上ある。
ついでにどこかで夕食も済ませようか、などと話しながら、わたしたちは徒歩で湖畔へと向かった。

アイヌ民族の昔の住宅展示がお出迎え

【阿寒湖畔キャンプ場】側から阿寒湖アイヌコタンを目指すと、まず1番最初にアイヌ民族の古式住宅である『チセ』の展示がお出迎えしてくれる。
 わたしたちは生まれも育ちも北海道なので、ある程度見慣れてはいるが、観光で来られた方にはそれなりに見応えのある展示なのではなかろうか。

コタンの入り口のオブジェ
昼間来ても異世界感たっぷり

 【阿寒湖アイヌコタン】は、現在も100名以上のアイヌ民族の方が暮らす北海道でもかなり大きな集落ということになっており、このエリアではアイヌ民族の方々や、彼らを支援する方々が主に民芸品を販売したり、民具の作り方を教える体験教室を開いていたり、とにかくアイヌ文化に関するあらゆる情報を発信している。

 販売エリアにある店舗はそれぞれに特色があり、いかにもセルアウト的なアニメやキャラクターグッズみたいなものを扱っているお店もあれば、ゴリゴリに骨太な民芸品のお店もあれば、ネイティブアメリカンやアジアン雑貨のようなデザインに寄せているお店などもあり、見ているだけでもかなり楽しい時間を過ごすことができる。
 ここでは、何と夫が木彫りの指輪をひとつ買ってくれた。
仲直りのつもりかな??でも、こういうのが嬉しいんだよね。

 店舗を一通り見たあとは【アイヌアートギャラリー】さんに立ち寄ってみた。
1階部分だけなら無料で写真撮影もOKということだったので、失礼してど迫力の展示エリアを撮影させて頂く。

美しい写真が展示されている
販売ブースもあり

 実を言うと、阿寒湖に来るまでもなく、わたしたちが現在住んでいる地域も昔はアイヌ民族の一大集落があった場所で、今もかなり多くのアイヌの方々が暮らしておられる。
 そんな土地柄だから、割とアイヌ文化には馴染み深い方だと思うのだが、こうして改めて目白押しにされると、そのデザイン性の高さや文化水準の高さ、そして自然に対する共存意識の高さに驚かされる想いがした。
 せっかくだからと、素敵なポストカード300円✕3枚とトランプ1650円を購入。
多少なりともアート的なものを齧りつつ生きてきた身としては、ほんの少しでも還元しなくちゃいけないな…という使命感に駆られてしまった。
こういうのにポンと大枚はたけるご身分になりたいねえ!

 ここからは『まりもの微笑み小径』と名づけられた素敵な散策路を通り【阿寒湖エコミュージアム】を目指した。

まりもの微笑み小径の入口
遊歩道に沿って灯りと思しきものが設置されている

 あとで調べて解ったことだが、この『まりもの微笑み小径』では定期的にナイトウォークが開催されており、音と光を使った大規模な仕掛けで、アイヌ文化をテーマとした壮大なファンタジー世界を体感することができるらしい。
 後述するが、夜にこのアクティビティに参加している人たちを目撃した夫は「いいなー!いいなー!」を小学生のように連呼し、大興奮していた。
傍で見ていても、いかにも面白そうなアクティビティだったらしいので、ご興味がおありの方は公式サイトをご覧ください!↓↓↓

 
 歩いて辿りついた【阿寒湖エコミュージアム】は、この時、工事のフェンスに覆われていた。
遠目に見るとどう見ても営業していない雰囲気に人影は疎らだったが、諦めきれずに近づいてみると「営業中」の看板が見て取れる。どうやら外構だけが工事中だったらしい。
 記憶が確かなら、はるか大昔の子供の頃にこういった施設を訪れて、阿寒湖のマリモを見学したような気もするのだが、何しろ本気で40年近く前という大昔のことなので、同じ施設が同じ状態で現存しているとは思われない。
それでも記憶を辿りつつ、入場無料のおもしろ博物館を見学してゆく。

手作り感満載の地味な仕掛けがたくさんあるフロア
こんな感じで、手動でレバーを押したりひねったりすると、何らかの仕掛けが動いて阿寒湖周辺の動植物や地形、歴史などの説明をしてくれる

 入場無料なだけあって、館内は味のある作りになっていた。
それでも、しっかりこの地域の自然の成り立ちや生態系などについて学ぶことができるようになっており、ヒメマスやマリモ、イトウなどを育成している水槽が設置されているコーナーもある。
マリモの前では思わず「あなたは…もしや…40年前にお会いした…あの時もマリモ様では…?」などと小芝居も打ってみたが、当然のごとく返事はなかった

ヒメマスの水槽。マリモと同居している
40年前にお会いしたマリモ様かと思ったけど違うみたい
木彫りの鹿と熊がいる休憩スペースが素敵でした

 ここでポケモンGOを開いてまたうろうろしていると、今度は【観光情報センターまりむ館】なる施設が近くにあることが判明したので、ぶらぶらと訪れてみた。
本当は、そこで阿寒湖周辺観光にまつわる有益な情報が手に入るのではないかと思ったのだが、実際に訪れてみたところ、一体何をしにそこへ行ったのか忘れてしまうほどの衝撃的な出会いがあった。

 驚くなかれ。
そこには何故か等身大のグラップラー刃牙がいたのである。

こんなんびっくりするに決まってる

 ここへ来るまで知らなかったのだが、グラップラー刃牙の作者・板垣先生は釧路生まれで、中学時代を阿寒湖温泉街で過ごしたのだそうだ。
その頃の板垣先生のご友人の伝手で、ここに刃牙の等身大フィギュアや貴重な原画が展示されることになったらしい。
 わたしは正直タイトルしか知らない漫画だが、夫がいたく感動していたので、ファンの方にはぜひ訪れてみて欲しい場所である。

 この時点で、時刻は夕方の17時を回っていた。
思い起こせばお昼は1杯のきつねそばを半分こ、小さなちまきを1個しか食べていない(おやつのクマヤキはご飯じゃないので空腹メーターには換算しない)ので、そろそろ小腹がすいてくる時間だ。
 近場のご飯屋さんを検索すると、阿寒湖畔の街中華【仙客】さんがレビューで高評価をつけている。多くの店舗はまだ準備中のところ、ここは既に暖簾が出ていたのも手伝って、今日の夕飯はここで頂くことに決めた。

わたしが注文したあんかけ焼きそば
夫は初めて行く中華ではたいてい天津飯を食す

 【仙客】さんでは、上記の通り夫は天津飯、わたしはあんかけ焼きそば、そして2人で食べようと、餃子を注文した。
あんかけ焼きそばは珍しくデフォルトが塩系で、見た目の割にはあっさりしている。
天津飯は酸っぱくない系だそうで、夫は酢を追加して食べていた。
どちらもそこそこに盛りも良く、スタンダードかつシンプルながらに美味しい街中華の味わい。
餃子は、どちらかと言えば肉々しい系の昔ながらのどっしり餃子で、これはなるほど高評価も頷けるお味なのでした。

 食事を食べ終わって外に出てみると、あたりはすっかり夕闇に包まれていた。
 気温も下がって些か肌寒くなってきていたが、夫は何故か「阿寒湖アイヌコタンはここからが本番なんだよ」と上機嫌で、元来た道を戻ろうと言い始める。
何でも、コタン入口からの景色は昼間と夜で見え方が一変するそうで、どうしてもそれをわたしに見せたいのだと言う。
仕方なくいそいそと来た道を引き返し、最初に歩き始めたエリアに立った途端、わたしは全てを理解した。

確かに。
阿寒湖アイヌコタンは夜が本番かも知れん!!

ゲームの世界じゃん!
ライティングがべらぼうにうめえ。
もはや異世界
もう綺麗としか言いようがない町並みでした
チセも昼と夜では大違いの雰囲気

 コタンの商店街はそれぞれに灯りをともし、幻想的な世界をそこに現出させていた。
 夜も更けてくると、呼び込みは更に熱気を帯び、閉店間際の値引きを知らせる声があちこちから聞こえてくる。
灯りの下で、昼間見た時とはまた違う民芸品の美しいフォルムを楽しんでいるうちに、すっかり疲れ切ったわたしたちは、美味しいコーヒーが飲めるカフェを探して再び歩き始めた。

しかし。
ない!!どこにも!!開いているカフェが!

 googleマップを頼りに手当たり次第にカフェと思しき場所をめぐってみたが、近隣で午後6時過ぎに開いているカフェはどこにもなかった。

 夫が観たいと言っていたアイヌ民族の古式舞踊の時間までは、まだたっぷり1時間以上ある。
どうしようかとウロウロしていると、無料の足湯コーナーが目に入った。
夫が大喜びで「ここで時間潰そうよ!」とはしゃぎ出したので、近くのコンビニでコーヒーを買い、そこでしばらく時間を潰すことにした。

無料の足湯コーナー。静かでひと気がなく、心地よい風が吹いている

 これまでわたしたちは数々の北海道の道の駅をめぐり歩いてきて、足湯に浸かるチャンスは何度もあった。
【道の駅 しかべ間歇泉公園】や【道の駅 摩周温泉】にも綺麗に整備された足湯があり、そのたびに夫はウキウキと「浸かってこーか!」と言ってくれていたのだが、わたしはあまり乗り気でなく、そのためだけに靴や靴下を脱ぐのが面倒くさいであるとか、タオルがないであるとか、色々な言い訳をして夫の希望を無視してきていたのだ。
こうして考えると、やっぱり反省するべき点は自分にも多々ある。
夫婦喧嘩の原因は夫ばかりじゃないな…とひそかに反省しつつ、今回は夫の提案どおり足湯に浸かってみることにした。

結果。
足湯サイコー!!!

 夫氏…今まで先入観でキミの希望を無視してごめんなさい。あんなに気持ちのいいものだとは思わなかった。
 浸かり始めてすぐの時は、吹きっ晒しの足湯はかなり寒かったが、うっすいコーヒーを飲みながらポケモンGOをしているうちに、10分もかからず体はポカポカと温かくなってきた。
「なるほど!!これが頭寒足熱ってやつかー!」と感動していると、夫は飽きれたように「だから足湯いいよ、って今まで言ってたじゃん」とぶつぶつ言った。ごめんてぇー!
 そんな感じで、誰もいない足湯でゆったり流れる時間を夫と2人でしみじみ堪能しているうちに、時間はあっという間に過ぎてしまったのだった。

 古式舞踊は、阿寒湖アイヌコタンエリアの中にある【阿寒湖アイヌシアター・イコロ】という、アイヌ文化専用屋内劇場で公演される。
 時間によって内容や料金が若干違い、お客さんは好きな時間を選んでチケットを購入し、講演開始時間までに会場へ着けばよい。
 シアターでは、定期的に公演時間のお知らせやお得なチケット購入情報などをアナウンスしてくれて、その声はコタンに設置されているスピーカーからも流されるため、遠くへ行かない限りは時間に遅れることのないよう工夫されている。
 わたしたちは20時過ぎの古式舞踊を目当てにして行ったが、そのあとも1本公演があったところと見ると、シアターは結構遅くまで開いているのだろう。

 撮影禁止だったので動画も写真もお見せすることはできないが、この古式舞踊はユネスコ無形文化財に登録されているそうで、光や音も使って繰り広げられる伝統的な舞踊はかなり見応えがあった。
 わたしは他の地域でも古式舞踊を観たことがあったが、阿寒のものは途中に使われているユーカラの音声がいかにもネイティブっぽく、心に響くものがあった。
 昨今、この界隈は政治臭が絡むこともあり、迂闊に感想を言葉にするのも難しい風潮がある。ただ、思想はどうあれ貴重な文化史の一端として、阿寒湖アイヌコタンは充分に観る価値も寄る価値も買う価値もあったと感じた。
また、そういう場所であるための努力を怠らない関係者の方々の情熱も素晴らしいと思う。
 みなさんも、ぜひ夜のアイヌコタンを訪れて、素晴らしいその文化の一端に触れてみてください!

 翌日は帰るのみだったので、そのあとはコンビニで飲み物とおやつを調達し、車へ戻ることにした。
 車中泊旅も、今回で5度目。
あちこち泊まり歩いて来たけれど、やはり有料のスペースは気兼ねもなくゴミも処分でき、落ち着いて過ごすことができると感じた。
夫は無駄な経費と感じている様子だが、わたしはできれば今後もキャンプ場やRVパークを使いたいな…としみじみ思うのであった。

 夜半から強くなった雨は、翌朝には小雨になっていた。
車中泊3泊目ともなると身体は知らず知らずのうちに疲れを蓄積していたようで、ぐっすり眠り込んだせいか調子がいい。
 本日は、帰路。
あとはもう大したところへは寄るまいと腹を括り、メイクもそこそに髪の毛をひっつめ、わたしたちは午前8時には自宅へ向けて車を出発させた。

 行きは天馬街道ルートを通ってきたため、帰りは十数年ぶりに日勝峠を超えてみようか、という話になった。
そうすると、流れに任せてまだスタンプをGETできていない士幌町や音更町の道の駅を経由して帰ることができる。
そりゃいいねー!と上機嫌で延々山道を1時間半ほど走り続けると、上士幌町に入ったところで、日ごろはあまり目にすることがないようなものが視界に飛び込んできた。

!!!

 着いてから判ったことだが、この気球は【道の駅 かみしほろ】で9月~10月までの期間限定で体験できる熱気球の体験搭乗に使われる係留気球で、地面にしっかり繋がれている。
料金は大人1人2000円(子供は1000円)で、安全かつリーズナブルに熱気急に乗る気分の片鱗を味わえるおもしろアクティビティだ。
 例のごとく夫が「乗りたい乗りたーい!」と言い出したが、気球は以前からお義父さんも乗ってみたいと言っていたので、今度は義両親も一緒に来てちゃんとした体験飛行に行こう!と言って宥め、この時はスルーに成功した。わたしはあんまり乗りたくないのだ。怖いじゃん!!

 そして【道の駅 かみしほろ】は、洗練具合が本当にヤバかった。
 ここは道内に登録されている全130駅(うち2駅は閉鎖)の中でも127番目に登録された新しい施設で、控えめに言っても全ての設備がキレイすぎ、そしてオシャレすぎた。

天気のせいで判りづらいがめちゃくちゃキレイな道の駅

 ここには、レストランはもちろんパン屋さんや地元食材を使用したバーガーショップまであり、インフォメーションも過去一か!?と思うほどの充実感である。
トイレも当然のごとく新しく綺麗で清潔感があり、その上車中泊民を歓迎してくれる雰囲気まであった。
お土産品売り場も、単にぎゅうぎゅう詰めにするような野暮な造りではなく、広々としたスペースのあちこちには「見せよう」とする配慮が見て取れ、特産品の大豆やじゃがいもを使用した地場産品がひしめく。
 とにかく、隅々まで見事と言わざるを得ない道の駅なのであった。

このトイレマークのオシャレさを見よ
優しさに溢れてるー!
かなり広く取られたインフォメーションには近隣・道内のリーフレットがずらり
推しは大豆
可愛い小屋をモチーフにした箱のディスプレイ。思わず中を見たくなるやつ
パッケージもシンプルかつオシャレなんだよなあ

 これだけインパクトのある道の駅だったので、お昼はぜひここで食べたい!と思ったが、レストランもバーガーショップも11時開店で、開くまでにはまだ2時間近く待たなければならなかった。
 何しろ明日は仕事である。
少しでも早く帰宅したいことを思うと、待つのも何となく嫌だったので、ひとまずパン屋さんで発見した『ゴロゴロ和牛カレーパン/580円』を購入して、小腹を満たすことにした。

レストランの待合もこのおしゃれ感である
パン屋さんの品揃えはなかなかだけれど、売れ筋はどんどん売れて行く
これが『ゴロゴロ和牛カレーパン』

 買う時はちょっとお高いかな…と思った『ゴロゴロ和牛カレーパン』は、食べてみると納得のコスパだった。
ゴロゴロと言うからには角切りビーフを想像していたが、それが切り落としだったことを除けば、お味は想像以上に美味しい。
厚さは様々の和牛切り落としがびっくりするほどたっぷり入って、スパイスの効いたカレーがその脂っこさをきりりと引き締めている。
薄めのパン生地にはざっくざっくの粗目パン粉が纏わされており、食感もざくざくもっちり楽しいのだ。
 ここはもう俄然「また改めて来ます!!」と誓いながら、次の道の駅を目指したのだった。

画像を撮り忘れていたのでphotoACさんからダウンロードした【道の駅 ピア21しほろ】

 士幌町のエリアは、なぜか【かみしほろ】【ピア21しほろ】【しほろ温泉】と、全部で3つの道の駅がある不思議なところで、何ならさっきの【道の駅 かみしほろ】から、次の【道の駅 ピア21しほろ】は、車で10分ほどしか離れていない。
 上士幌の道の駅がド素晴らしかったので、わたしたちは「次の道の駅で何か適当なものでも食べられたらいいね~」「てか何で3つも同じエリアに道の駅があんのかな~?大人の事情でもあんのかな~?」などと、いたって呑気に構えていた。
何しろ道の駅めぐりの経験上、2つ続けてド素晴らしい道の駅に出会うことなど、まず殆どないと言っていい。
 しかし、鼻歌交じりで外を眺めているうちに、道路状況がどんどん変わっていくのに気がついて、わたしたちは戦慄した。
 何だ??この車の数??

 辿りついた【道の駅 ピア21しほろ】は、尋常じゃない人だかりであった。
車を停める場所すらなかなか見つけられず、建物からはかなり離れたところでやっと1台出ようとしている車を発見し、何とか停めることができた。
 どうやらこの日は、偶然にも道の駅でちょっとしたお祭りが開催されているらしい。
 やったー!!!まさに「ここでしか食べられない」の宝庫じゃないか!

 ここへ来るまでは「道の駅は適当にすっ飛ばして帯広で豚丼でも食べようか」というプランもあったのだが、ゲンキンな我々は瞬く間に「豚丼は逃げねえ!でもお祭りは一期一会!」というスタンスにシフトチェンジした。
 まずは昼時で激込みのお祭りスペースを避け、道の駅の中から順番に見て回ることにする。
 しかし、道の駅の中も外と同様に、激込みの混み混みなのであった。

 毎度「ここへ来るまで知らなかった」ことだらけで恐縮なのだが、士幌町は「じゃがいもの生産量は日本一」「士幌牛の生産地」「良質な大豆の生産地」「りんごやハスカップやシーベリーなどの果物まで作ってるじょ☆」という北海道でも屈指の内陸チートタウンらしく、駅内はガチでチートレベルの地場産品だらけ具合だった。
 そりゃね!りんごに大豆にジャガイモに牛肉にって!そりゃ地場産品創出力も高まるでしょうよ!優秀食材ばっかだもん!

 売り場には、もう「ド迫力!」と言いたくなるような圧倒的な物量で、肉加工品から直売野菜や果物、スイーツまでもが豊富に陳列されている。

地場産野菜や大豆加工品、肉加工品もある
りんごも採れるなんてさあ…
スイーツもすげえラインナップだった。おかしい(誉め言葉)

 あと、ちょうど収穫期だったせいもあるのか、このお祭りがジャガイモ祭りか何かだったのか、とにかくジャガイモを使った企画がすごいことになっていた。
 構内では生産量日本一だからこそできる「生産者還元用ポテトチップス」と名付けられたポテトチップス(大入り&安価!)が山積みで売られており、イモ判子作りワークショップや、変な形のジャガイモに一般客が投票して順位を決める『へんてこじゃがいも選手権』、士幌産ジャガイモを使用したお料理レシピのコンテストなどが行われており、もうセンスの塊としか言いようがない。

これが生産者還元用ポテトチップス。箱買い客が行列だった。
ヘンテコじゃがいも選手権。ポップまで可愛い

 内陸だけあって、さすがに魚介はやや弱かったが、ここは他の全てを兼ね備えた道の駅なのだった(確信)

 どこを見ても感心しきりの道の駅だが、いつまでも圧倒されていたところで空腹は満たされないことを思い出し、ひとまず並べそうなスナックコーナーへと足を向ける。
ここからは怒涛の下手くそ食レポになるので、どうか飽きずについてきてください。

 まず最初に食べたのは、士幌牛シュウマイ。
シュウマイは普通、豚肉や魚介を使うのが定番で、以前わたしは他のところで牛肉を使用した餃子を食したことがあるのだが、それは牛肉の臭みが際立ってあまり美味しいとは感じなかった。
 しかし。士幌牛シュウマイは美味かった!

これが士幌牛シュウマイ

 画像ではイマイチ美味そうさを感じられないこととは思うが、牛の臭みは全くと言っていいほど感じられず、旨味と肉汁だけがぎゅっと凝縮されている。
タレはジェルタイプのもので、食べづらいテイクアウトでも汁がこぼれないよう配慮されており、ちょっぴり辛子まで添えられているのが何とも心憎かった。

 次に食べたのは、コーヒーソフトクリーム。

見るからにちゃんとしている

 こちらは士幌町内にある古田牧場さんの生乳を使ったソフトクリームに、道の駅内にもあるカフェ【寛一コーヒー】さんのコーヒーがかかっており、変なカフェで食べるよりもよっぽどちゃんとしたカフェメニューになっていた。
ソフトクリーム自体は比較的あっさりしているが、とろりと甘めのクリームにかけられたコーヒーの粉がカリっと食感をもたらし、ほろ苦さが神がかってちょうどいい。

 おまけに何がびっくりって、このスナックコーナーでは、ちょうどお祭り開催期間だからということで「1000円以上のお買い物ありがとうございます☆」と、じゃがいも大福&とうもろこし大福までおまけについてきた。
太っ腹すぎて意味わからん!!

 ここで一度外に出て、お祭りご飯を堪能しようかとも考えたが、駅内のカフェ【寛一】が少しばかり空きだしたので、夫が士幌ビーフ100%のビーフハンバーガーが食べたい!と言い出した。
 この混み具合だと、確かに空いたタイミングを狙わない手はない。慌てて席についてメニューを吟味する。

頼みすぎちゃうんけ

 結局、夫が士幌ビーフ100%のハンバーガーとポテトのセット1200円とノンアルコールのモヒート、わたしはチョコスコーンとアイスコーヒーを注文した。
 チョコスコーンは、まぁよくある美味しいやつ、とでも言えばおわかり頂けるだろうか。
 士幌ビーフのハンバーガーは少し食べさせてもらったが、最初はバンズもビーフも少し冷めていることに驚きはしたものの、食べ進んでいた夫がポテサラの存在に気づき「なるほど!」と声を上げた。
 確かにアツアツすぎるパティだと、ポテサラに影響がありそうだものなあ。
さすがに牛とジャガイモの街。両方を美味しく頂くための決断なのだろう。
 ちなみに、士幌ビーフは随分と淡泊だなあと思ったら、和牛ではなくホルらしい。和牛は和牛で『士幌くろうし』というブランド名がついているとのこと。勉強になりました。

 …と、まぁここまで食べれば普通の夫婦なら「おなかいっぱい!」となるところだが、ここから本番になるのがわたしたちの強みでもありダメなところでもある。
 でもホラ。お祭りご飯は何ひとつ食べてないからね。せっかくだから。地方のお祭りは一期一会だから。味わって行かないとね!

 そんなこんなでまずお祭り会場で最初に食べたのは『士幌牛ビーフシチュー900円バゲット付き』&『士幌産ジャガイモの士幌牛巻500円』

 え?お祭りメニューって何だっけ??ここはレストランか?

器はさすがにテイクアウト用だがしかし

 こんなんオータムフェストで食ったら1.5倍はするよ…とか何とか言いながら食べてみると、しっかりこってり士幌ビーフの旨味が染み出た濃厚ビーフシチュー。夫は「バゲットもうめえ!おかわり!」と、誰もいない虚空に向かっておかわりを叫んでいた。
 ジャガイモ巻きは塩コショウではなく、何らかのタレを絡めて焼いたもので、こちらも秒殺級のうまさ。
 どう考えてもマズイわけはないんだけれどもね。

 お次は『牛すね肉煮込み300円』&『牛100%フランクフルト・オリジナルカレーソース添え』を頂いた。

リミッターぶち壊れ気味の食欲

 牛すね肉はじっくりコトコト煮込んであり、柔らかく噛み切れる牛肉が本当に美味しかった。思わず夫と2人で「ごはーん!」と叫びたくなる味付け。
 フランクは、カレーソースも功を奏しているのか、中で食べた牛シュウマイと同様に、ほとんど臭みもなくあっさりしていた。

 最後は、しほろ旅館さんで出してた『牛すじじゃがだんご汁500円』

お野菜もたっぷり

 こちらは少しジャガイモ団子の粉っぽさが気になったが、全体的には優しいお味で、ほっこりと体が温まった。
屋台飯にしておくには勿体ない牛の旨味に、最後は夫と汁を取り合いながら食べ終わったのだった。

 いやもう本当に、ここで出会えたのは僥倖としか言いようがない。
このお祭りは、今まで行ったどのお祭りよりもご飯が美味しく、飽きるまでビーフ&ポテトを堪能できる神イベントでした。

 食べ物自体の美味さもさることながら、ゴミ捨て場には常時2人の係員が配置されており、絶対に散らからないように配慮されている。
係員をされていた男性に「今時ゴミ捨て場所にまで人員配置をされてるなんて本当にすごいです!」って思わず興奮して話しかけてしまったところ、ちょっと驚いたあとで誇らしそうに「そうですか?ここでは普通ですよ」と胸を張る姿がとっても印象的だった。
 出店の人たちは笑顔で溢れていて、時には冗談を飛ばしつつ、小さなことでも快くお答えくださる。
最後に行ったお店では、絶対に他では680円を切らないであろうと思われるスモークチキンを500円でゲットできた。
 おまけに、食べ物を買った店舗で配られていた『じゃがポン抽選券』なるものを3枚持って抽選場所に行くと、1枚の抽選券で1回じゃがポンを回すことができ、何と士幌でジャガイモを生産しているカルビーのポテトチップスうすしお味が3袋も当たってしまったのだ!
 本当に、本当に最後まで意味わからなすぎるスーパーな道の駅なのである。

 補足すると、ここのレストランは最後まで大行列で並ぶことさえ諦めてしまったが、剣先ステーキや玉子かけご飯定食など異色なメニューが並ぶ個性的なレストランなのだそうだ。
 道の駅に入っている飲食店としては極めて異例のことだが、何と予約をすればフルコースにも対応してくれるそうで、五体投地の勢いで頭が下がる。

レストランメニューの一例(2024年9月現在)

 おまけにキッズコーナーやドッグランまで併設されているという完璧ぶりは、まさに「非の打ち所がない」というのはこういうことを言うんだろうな…と思わされる凄さであった。

 あまりの地域振興への意識高さに慄いて、車に戻ったわたしはこのエネルギーの源をどうしても知りたくなり、あれこれ検索しているうちに大変興味深い記事を見つけてしまった。
 この中には【ピア21しほろ】に賭けた若者たちの想いがぎゅっと詰まっている。
 思わず車の中で泣いちゃった良記事なので、お時間がある方はぜひ読んでみてください。
地域おこしへのヒントも含まれているかも知れないよ!

 
 道の駅のフルパワーを堪能し尽くしたわたしたちは、そのまま日勝峠ルートで自宅へ戻ろうと考えていた。
 しかし、改めて道の駅マップを見てみると、帰る道すがらには【道の駅 うりまく】と【道の駅 しかおい】が残っている。
 ここまで来たら乗りかかった船だ。帰宅時間はやや押してしまうが、ついでにそこも立ち寄っていくことにした。

これが道の駅うりまく

 【道の駅うりまく】は、【道の駅 ピア21しほろ】から30分足らずのところにある。
何しろ前が凄すぎたので、着いたときには一台も停まっていない道の駅がやたらと寂しく感じられた。

 しかし、ここは北海道でもかなり珍しい「乗馬ができる道の駅」で、見た感じもともと乗馬クラブだったところに道の駅がくっついたという雰囲気があり、乗馬体験マシーンなども置いてあるのがちょっと面白い。
 馬と言えば、わたしが住んでいる日高地域もサラブレッドの生産地として有名なので、思わず親近感が湧いて「どれくらいの数のサラブレッドが居るんですか?」と軽率にお尋ねしてしまったが、やや被せ気味の真顔で「うちにサラブレッドは居ません」と言われてしまったので、期せずして馬産地マウントみたいになってしまい、居た堪れなかった。
悪気はなかったんです何かほんとにすみません!

乗馬体験マシーン
馬の本が色々置いてある
カウボーイの意匠を着て撮影もできる

 乗馬ができることを除けば、ここはお土産品のコーナーも割合ありきたりで、施設も古く、些か物足りない感じは否めなかった。
 乗馬体験マシーンに乗る時のコスプレ衣装には一瞬心惹かれたが、やはりちょっと照れそうだったので、今回は見送ることにする。
 代わりに『肉じゃがまん』が有名だというので、滅多にお目にかかれないから、という理由で買ってみることにした。

肉じゃがまん

 これは本当にお母さんが作った肉まんを中華まんの皮に包んで出してみちゃったよ!と言った感じのお味で、それ以上でもそれ以下でもなかった。普通に美味しい、という感じ。

 次の目的地【道の駅 しかおい】は、またしてもバカ近く、うりまくの道の駅から僅か15分足らずで着いてしまった。
本当にこのあたりには道の駅が集中しており、これだけ近ければ落差が激しくなるのも無理ないかもな…としみじみ思う。

 またしても外観を撮り忘れていたが、ここはとかち鹿追ジオパーク情報館というところと隣接しており、何かこう全てが小ぢんまりとした慎ましい道の駅なのであった。

なぜか情報館の外観だけ撮ってた
ちっちゃ!

 施設は全体的に小さくて古め。
しかし、どうしてなのかチョウザメのどでかい水槽が入り口に置いてあり、唯一観光客の目を楽しませていた。
 中に入ってみても予想を裏切るようなものは何もなく、お土産品もスナック類も目新しさはない。
 時間も時間だったので、ここはスタンプだけ押して退散することにした。

チョウザメの水槽まであまり色気がない

 ここからは、いよいよ帰路最後の難関となる日勝峠に向かう。
走り始めると、昔と変わらぬクネクネ道がナビからも見て取れ、思わず画像に収めてしまった。

日勝超えを前に心構え

 帰りは天気もイマイチだったため、鹿の飛び出しに充分注意しながらも、若干巻き気味に走ってゆく。

これが日勝峠
展望台は十勝平野を一望できる

 ここが峠の頂上かー!と思った場所が実は5合目だったり、日勝峠の峠としてのスケールはかなりデカかった。
 しかし9月のそこは「夏は濃霧で視界が遮られ、冬は路面凍結と吹雪で視界が遮られる北海道屈指の難所」の面影もほとんどなく、ただただ大自然を感じさせる壮大なくねくね山道である。
 もう少ししたら、きっとさぞかし紅葉がキレイに違いないね、と話しているうちに、いつの間にか車は難所を抜けていた。

 北海道には、あと2ヶ月もすれば雪が降り積もるだろう。
 10月はわたくしごとのイベントが目白押しなので、わたしたちの車中泊de道の駅めぐり2024はこれで終了し、スタンプを押しきれなかった残り40ちょっとの道の駅は、来年まためぐることになる。

 このマガジンは基本的に車中泊のために始めたものだったが、このあとに行った旅行の都合もあり、全ての旅を記録しておく場所にすることにした。

もし、今回も最後までお読みくださった方がいらしたら、本当にありがとうございました。
次は『新幹線de平泉』でお会いしましょう!

それでは、このたびはこの辺で!

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