◆行くぞ網走監獄!/ミドル夫婦の車中泊de道の駅めぐり
2024年9月12日。ド晴れ。
6月に愛犬が虹の橋を渡ってから以下略。
詳細は、この記事が入っているマガジンをご覧ください。
車中泊シリーズの過去記事はコチラから!
◇第1回∶函館方面編
◇第2回∶道央三笠市方面編
◇第3回∶日本最北端・宗谷岬編
◇第4回∶日本最東端・納沙布岬編
そんなわけで、今回は通算5回目となるミドル夫婦の車中泊旅。
今回の旅は、出だしの条件からいつもと少し違っていた。
いつもは3連休で車中泊旅を敢行していたのだが、どういうわけか今月のシフト編成には4連休が組み込まれていたのだ。
4連休もあれば、いくらバカ広い北海道でもどこへだって行ける。
わたしたちは道の駅めぐり用の地図を広げ、目的地を吟味した。残っているエリアはかなり限定されてきている。
前回は道東だったので、今回は道南か道北か?とも考えたが、道東は北海道の道の駅めぐりでも難関が集中している。元々道東住みでもない限り、あの広大な地域に点在しまくっている道の駅を全て回り切るのはかなり骨が折れるであろうと思われた。つまり、4連休でもなければ行こうと思うのさえキツいエリア。
──よし。再び道東だ。
そう決めた我々は、メインの目的地を網走監獄に定め、あとはとにかくゆっくり見て回ることを念頭に旅を進めていこうということになった。
実を言うと、ここのところわたしたち夫婦はあまり上手くいっていない。
多分今年の正月に派手な喧嘩をしたくらいから亀裂が入り、愛犬娘がいなくなってから、それはどんどん深い傷となった。
殊に車中泊を始めてからは不毛にも何故だか毎回一度は喧嘩するようになり、それぞれが少しずつ不満を溜めこんでいる。
結婚6年目。去年まではほとんどケンカもせずにやってきたわたしたちの、それは明確なる変化なのであった。
1.出発⇒【道の駅 ステラ★ほんべつ】⇒【道の駅 あしょろ銀河ホール21】⇒【摩周湖】⇒【硫黄山】⇒【元祖・弟子屈ラーメン】
上っ面は修復したかに見える薄皮一枚の平穏に包まれたわたしたちの今回の旅の出だしは、快晴。
前回と同じ天馬街道コースを通り、網走を目指す。
途中、すでにスタンプはゲット済みの【道の駅 忠類】で小休止をとり、中を見回ったついでに『ナウマン象どら焼き』なるものを手に入れた。
以前来た時のわたしはまだどら焼き偏愛家ではなかったので、目が行かなかったのだろう。
このどら焼きについては、先日すでに記事化してあるので、気になる方はぜひそちらもご覧ください⬇️⬇️
ここからは、一路【道の駅 あしょろ銀河ホール21】を目指す予定だったが、道の駅マップを確認しながら進んでいると、どうやら途中で本別町の【道の駅 ステラ★ほんべつ】付近を通ることが判明した。
一度高速道路を降りなければならないことになるが、せっかくだからと立ち寄っていくことにする。
この道の駅は、元々は十勝地方の池田町と北見市を結ぶ『ふるさと銀河線』というローカル線の駅として活用されていたそうで、鉄道記念館や復元線路など、その名残をいたるところで感じられるよう整備されている。
建物自体はそれなりに年季が入っているものの、トイレなども比較的綺麗で、休憩スペースやコミュニティルームもあり、地域密着型の道の駅という印象だ。
コンセプトは「豆のまち」
中には野菜の直売所やパン屋さんも併設されているのだが、全体的にとにかく豆推しがすごかった。
調べてみると、特に豆の生産量が日本一とかいうわけではなく、良質な豆の産地として昔から名高いのだそうだ。
…と、すれば、だ。
いる…!!あいつが…!!
こちらのどら焼きもまた、忠類と同様にレビューをすでに上げているので、ぜひご覧くださいませー!
ちなみにここでは、和菓子好きの夫も甘納豆と最中をゲットしていた。
どちらもなかなか美味しかったそうで、特に三種類の豆を使用して造られた甘納豆は絶品だったらしい。
残念ながら画像は撮り忘れてしまったけれど、見かけた際はぜひ食べてみて頂きたい。
さて、【道の駅 ステラ★ほんべつ】のある国道242号線をそのまま20分ほど北上すると、まもなく【道の駅 あしょろ銀河ホール21】に到着する。
こちらの道の駅も本別町と同様『ふるさと銀河線』の廃駅の跡地を利用して作られたそうで、道の駅の中に線路を残しているという珍しい仕様だ。
建物自体も割合キレイで大きく、遠目に見るとそこそこに圧巻である。
我々世代の道民からすると、足寄町と言って思いつくのはまず『松山千春』さまだ。
正直言うと歌は「長い夜」と「銀の雨」くらいしか知らないが、後年の政治活動の時に鈴木宗男氏と一緒になんか色々言ってるおじさん、くらいの印象があり、何故か彼が足寄町出身であることは多くの人がうっすら知っている、という感じ。
それから、これは行ってみるまで知らなかったのだが、ラワンブキが特産品らしい。
てか、ラワンブキって北海道遺産だったんだね!!知らなかったよ!!あまりにもそこらじゅうで売ってるんだもん!!
そんな【あしょろ銀河ホール21】に一歩足を踏み入れると、中はこのノリである。
上記の「ラワンブキを持ってトトロポーズを決めている松山千春さま」は至るところで使用されており、最初見たときは「近頃流行りの生産者の顔写真をのっけるやつかな!」と思って微笑ましく見守っていたのだが、ここで松山千春さまであると判明してびっくらこいた。
合成写真かと疑うレベルのラワンブキのでかさである。
そんなわけで、駅内はラワンブキとちーさまの推し推しの推し。
ほかにも地元産の山菜や乳製品、缶詰やお豆腐など、道の駅スタンダードな特産品はひと揃え置いてあり、割と充実しているように感じた。
ゆるりと道の駅内を見て回っているうちに、時計はすでに13時を回っていた。
いつもならおなかがすいて今にもぶち切れ寸前になるところだが、ここ最近毎度このパターンから喧嘩に発展することが多かったので、いい加減わたしも学習した。今日は朝ごはんを食べてきたから、まだ少し気持ちに余裕があるもんねー!!
しかし今日は朝から何も食べていない夫の方が空腹も限界だったらしい。とりあえず何らかの昼ごはんを食べよう、という話になった。
…てか、ここらへんで、いつも思うんだよねえ。
夫は日頃お昼ご飯を摂取する習慣がない。それでも、休みの日は嫌な顔せずにランチに付き合ってくれるまではいいんだけど。わたしは会社員でね、毎日ランチの時間が決まっているのよ。
なので、あまりおなかがすいていない夫が「何か食べようか」って言いだすのを待ってると、わたしの空腹が限界に達するのはもちろんのこと、田舎の店のランチタイムはだいたい14時で終了してしまう。
田舎でランチ難民になんかなってしまったら、コンビニ以外選べなくなる(下手するとコンビニすらなくなる)のが、何でわかんないのかなあ??
まぁ、この日はおなかに余裕があったので、いつもなら出てしまいそうになる上記のような言葉をぐっと飲み込み、わたしは周辺の飲食店を検索した。しかし出てくるのはどこも「14時close」の文字。
「だからいつも言ってるじゃん」とは思うものの、とにかく笑顔で我慢しているうちに、ふと道の駅に隣接されているプレハブのお店が目に入った。
プレハブには、ラミネートで作ったとおぼしき【フキのしたキッチン】というプレートが貼られている。
外からざっくりメニューを眺めてみると、そこそこに美味しそうなラインナップ。
隣のジンギスカン屋さんも開いていたけれど、わたしはラム肉があまり得意ではないので、とりあえずこちらに飛び込んでみることにした。
本当はもっとちゃんとした食堂が良かったんだけどなあ…などと内心ぶつぶつ言っていたのだが…
このお店がもう、アタリすぎた。
プレハブってだけで期待値を下げていた自分が恥ずかしい!!ごめんなさい!
そして夫よありがとう!!
もう一度言う。ここはアタリでした。
まず『和牛スタミナ丼』は想像よりはるかに美味しかった。あつあつ鉄板に盛り付けられたご飯の上に和牛ひき肉そぼろとニラ、パプリカやとうもろこしがたっぷり乗ってる。特におこげの部分の香ばしさは最高。ガーリックとスパイスの風味が最後まで食欲を刺激し続けるウマウマメニューでした。
そして豚パン。
こちらの触れ込みは「豚丼をイメージしたパン」か何かだったと思うのだが、何とホットサンドの中には具となる豚肉だけじゃなくご飯まで入ってた!
程よい甘じょっぱの美味しいタレで味付けされた豚肉とご飯の他にはとろけるチーズもあしらわれており、これはもう完全にマスターのセンスがよすぎると言わざるを得ない。
焼き芋シェイクはちょっと薄めで惜しかった気がするけれど、マスターさんと奥さま??のお人柄も含め、全体的に入ってよかったお店でした!
てか、北海道の東側はまじ食べ物のアタリ多すぎィ!
とりあえずおなかもいっぱいになった我々は、一度車に戻ってここからの予定を再確認することにした。
実を言うと、この辺からは「最終的に網走監獄に行ってみる」以外の目的をほとんど決めていなかった。
というのも、毎回「予定通りに行きたいわたし」と「予定変更してでも行ってみたいところを発見したら行きたい夫」との間に摩擦が生じるからだ。
わたしは出来ればそういう対立の時も互いのプレゼンを経て行き先を決めたいと思っている。
しかし、例えば夫が「ここに行きたい」と言った際に「じゃあ次の道の駅はどうするの?」とわたしが尋ねた段階で、どうやら夫は「自分の意見を拒絶された」と感じるらしく「じゃあ、もういいよそっちで」と不機嫌になり、更にその態度にわたしが不満を募らせる…というのが毎度お決まりの夫婦喧嘩パターンだったのだ。
だから今回の旅の裏テーマは「うっすらぼんやりしか予定を決めない」
とりあえず、現在地周辺と時間、天候を考慮して、次の目的地を探してゆく。
結局、天気がド晴れだったことが最大条件となり、20回に1回しか晴れた姿を拝むことができないという都市伝説を持つ【摩周湖】を目指すことになった。【あしょろ銀河ホール21】からは約1時間40分の道のりである。
そこからは、延々と里山の道が続いた。
いくつもの小さな峠を経由すると、あちこちに絶景スポットを示すカメラマークの看板を見かけたが、実際に車を降りてみると、一体何を撮るべきか今一つ判然としない謎の森だらけ。
そんな場所を何度か行き過ぎたところで、やっとそれらしき【双岳台】というスポットを発見した。
結局のところ、それが雌阿寒岳なのか雄阿寒岳なのかさえ判らなかったが、とにかく綺麗だったので、もうそれでいいことにした。
この辺りから阿寒湖畔を過ぎると、弟子屈町あたりまではびっくりするほどのクネクネ道が続く。
おまけに鈴なりレベルで鹿だらけのため、やつらがいつ飛び出してくるとも知れない恐怖のドライブになるのだ。ここらあたりを通る方はどうかくれぐれも運転にお気をつけください!
そして前回の旅でも立ち寄った【道の駅 摩周温泉】を超えると、間もなく晴れたままの摩周湖駐車場にたどり着くことができた!
最初から晴れた摩周湖を見ることができるのは大変に珍しいと言うが、果たして本当か??などと若干疑いを持ちつつも、展望台へと足を運ぶ。
ちなみに第一展望台のチケット代は硫黄山の駐車場チケットとセットで500円。
まぁまぁ良心的なので、来られた際にはぜひとも絶景を堪能して欲しい。
まぁ晴れたらですけどねー!!(ドヤ顔)
ちなみに摩周湖の展望台の売店はなかなかの商品力で、オリジナルグッズも豊富に用意されている。
摩周湖をイメージした爽やかなブルーのソフトクリームなども販売されており、撮れ高は抜群だ。
わたしはこの他に例のごとく摩周湖マグネットも購入し、すっかり上機嫌だった。
続いては、夫のオススメ&駐車場チケットをもらった硫黄山へと足を向ける。
ちなみに、川湯温泉はこの硫黄山が源となっているそうだ。川湯温泉に続く道のすぐ脇を左に折れて鬱蒼とした山道を進むと、まもなく濃厚な硫黄の匂いがしてくる。
やがて木々の切れ間から荒涼とした砂礫の山が顔を出し、そこからもうもうと煙が上がっている風景は、非日常を感じさせるなかなかの眺めだ。
いたるところに開いている噴気孔からは常にボコボコと湯気と共に源泉が湧き出しており、心なしか歩いているだけで足の裏も温かく感じられてくるような気分だった。
浮かれた若者の団体が源泉に触れようとして、途中で「あっつ!!!」と手を引っ込めていたが、多少触ってみたい衝動に駆られていたかも知れない観光客たちも、それで何となく気が済んだのではないだろうか。
コスプレの撮影スポットとしても大変良さげな場所だったけれど、何しろ濃厚な硫黄の匂いにはかなりやられてしまったので、匂いに敏感な方はどうかお気をつけください。
さて、かなり日暮れも差し迫ってきたこの段になって、ここからどうしよう?と話し合った結果、21時まで営業している阿寒湖アイヌコタンを目指してみようか?ということになった。
わたしは昼間に寄ったらどうかと考えていたのだが、以前夜に訪れたことがあると言う夫は「絶対あなたには夜のアイヌコタンを見てほしい!」と言い張るので、今来た道を戻り始める。
しかしナビの示すところによると、コタンまでは1時間40分。着いたところでゆっくり観光できるかどうかは怪しい時間だ。
結局、途中で「どうも遠いな?」となったわたしたちは、近くにあった美幌峠のRVパークに今夜の宿泊先を変更した。
美幌峠にある道の駅は北海道屈指の絶景スポットと名高く、何年も道の駅ランキングの風景部門で1位を獲得していると聞く。それなら朝日を拝むのも悪くないな、というのが変更の最大の動機となった。
そうと決まれば、今夜の晩ごはんである。
この時の現在地は弟子屈町。そういえば来る途中で【弟子屈ラーメン】の看板を見かけた気がする…!
えー?おれは見かけなかったよ?と主張する夫を制して元来た道を戻ると、やはり弟子屈ラーメンのお店はあった。
しかも総本店!さすがのお膝元である。
夫は「食い物の記憶力だけはあなたに勝てない」と感心していたが「だけは」とは何とも失礼な話だ。
しかしまぁ否めない部分もあるので、とりあえず注文する。
ここはあちこちに支店がある人気のチェーンになってしまった上に、ベースがわたしたちのあまり好まない魚介っぽかったので、正直あまり期待していなかったのだが、結論から言うと思っていたよりずーっと美味かった。さすが総本店である。
まず辛味噌は、しっかりコクのある旨味スープ。徐々に崩していく肉味噌ボール的なやつが濃厚なスープに溶け込んで、中太縮れ麺に絡むうめえやつ。
醤油は味見させてもらっただけたが、あっさりの中にもしっかりコクがあり、魚介の旨味が凝縮されたスープと細麺がぴったり合っていた。
どちらも自分の街にあったらそこそこ通うお店に違いない。
すっかりおなかもいっぱいになったわたしたちは、このまま美幌峠に向かうことにした。
詳しい住所は調べていなかったが、ネットをさらっと見た時に『美幌峠の湯』という何らかの名称を見かけた気がしたので、付近に温泉やコンビニらしきものがあるだろうと思ったのである。
でもまぁ冷静に考えて内地じゃあるまいし!そんなもんが北海道の峠のてっぺんにあるわけないよね!川湯温泉への道を曲がらなかったのは本当に失敗だった。
なんと『美幌峠の湯』は峠を降って30分以上かかる美幌側にあるんだって。
それ『峠の湯』じゃないじゃん!『ふもとの湯』じゃん!
結局コンビニも見つからぬまま、車はあれよあれよと言う間に【道の駅 ぐるっとパノラマ美幌峠】に到着したのであった。
2.【ぐるっとパノラマ美幌峠】⇒【屈斜路湖】⇒【メルヘンの丘 めまんべつ】⇒【流氷街道網走】⇒【網走監獄】
【道の駅 ぐるっとパノラマ美幌峠】に到着し、そこには温泉などないと悟ったのは、一体何時頃だったか。確か20時は回っていないくらいだったと思う。
峠のてっぺんで改めて調べてみたところ、一番近い温泉でも30分以上かけて峠を降りなければならないことが判った。
入浴はしたかったが、来るまでに2回も鹿が飛び出してきた峠のくねくね道を降ったり登ったりしているうちに衝突事故など起こしたりした日には、せっかくの旅行が目も当てられないことになってしまう。
結局、その日のお風呂は我慢しようという運びになった。幸い、飲み物だけは道の駅の自販機で確保できる。
真っ暗な駐車場には、車中泊車輌がざっと10台くらい。平日だったせいか、人気の道の駅にしては閑散としていた。
この駐車場はRVパークの部分も含めてバカ広く、有料のごみ処理袋の自販機などもあったりして、割合車中泊はウェルカムなマインドを感じた。
トイレもかなり綺麗だったので、入浴さえ済ませておけば絶好のスポットと言えるだろう。
不測の事態のおかげで、この日は車中泊旅始まって以来、1番早いお泊り準備となった。
特に歩く場所もなく、真っ暗で景色も全く見えなかったので、暇つぶしには骨が折れそうだったが、ポケモンGOとnoteの記事を書いているうちに時間はどんどん過ぎてゆく。
気がつくと周囲にもじわじわと車中泊車輌が増えていて、名所の雰囲気も増してきた。
検索してみたところ、この道の駅は何より朝日が絶景なのだそうだ。
noteの記事を書きながらウトウトしていたら、気づくと朝の4時半になっていた。
車は強い風に揺られていて、遮光カーテンの隙間から外を覗いてみると、辛うじてまだ晴れてはいるものの、雲が多い。
ずっと晴れ予報だったのにやだなーと思いつつ外に出てみると、外はクソ寒パノラマなのであった。
とりあえずトイレに行きたくて目覚めたので、のろのろと起き出す。夜明けまでにはまだ少し早い時間だ。
この時気づいたのだが、美幌峠の道の駅のトイレは綺麗なばかりではなく、随所に可愛いデザインがあしらわれていた。
車に戻ると、物音で目覚めてしまったらしい夫が起き上がって外を見ていた。
前日から「朝日がキレイらしい」と話していたせいか、珍しくそのまま起き出したので、とりあえず2人で景色を見に行くことにする。
一度は寝る格好のまま外に出てみたが、刺すような強風が吹いていたため、慌てて車に戻って最大限の厚着をした。
ちなみに美幌峠の駐車場からは、景色の全貌を窺い知ることはできない。
駐車場からだけでもそこそこ綺麗な山並みは望めるが【ぐるっとパノラマ美幌峠】の名の本当の凄みを知るには、駐車場とは逆側の展望台まで足を運ぶことが必須条件だ。
わたしはまだ半分寝ぼけていたので、この絶景にはド肝を抜かれることになった。
美幌峠から見下ろす、澄み渡った屈斜路湖。
雲は多いが朝日に照らされたその姿は、ありのままの自然というよりも、むしろ神々が何らかの意図をもってこの荘厳で美しい風景を創り上げたのではないか…と考えたくなるほどの絶景なのであった。
展望台には既に何人もの人が詰めかけており、みな寒い中で手を擦り合わせながら、屈斜路湖の静謐を息を呑むようにして眺めていた。
最初に展望台に足を運んだ5時前には、もう朝日を見るための人集りが出来ていたのだが、あまりの寒さのせいか朝日が登り切る前にほとんど人は居なくなってしまった。
厚くなってきた雲のせいで、確かに朝焼けも判然としないため、わたしたちも一度車に戻って二度寝を決め込むことにする。
結局再び目が覚めたのは8時過ぎ。
とりあえず美幌峠の道の駅が開くまでにまだ少し時間があったので、昨日の夜に通り過ぎた屈斜路湖の和琴半島に行ってみようか、という話になった。
昨夜は真っ暗な中を走ってきたので全く窺い知ることができなかった和琴半島までの道のりは、北海道でも特に美しい景観を有する『秀逸な道』に選ばれているそうで、確かに雄大な屈斜路湖を見下ろしながらくだる峠道は『すごい』しか語彙がなくなる景色なのであった。
本当はたくさん写真を撮ったのだが、どれを見てもあの絶景の片鱗も伝えられるとは思えなかったので、ぜひ現地まで足を運んで頂きたいと思う。
そんなわけで、屈斜路湖の和琴半島。
屈斜路湖の南側の湖岸にぽこんと突き出た、一周2.5kmほどの小さなこの半島は、いたるところに温泉が湧き出ているためか全体的に地熱が高く、寒さ厳しい北海道の冬でも凍らない場所があるという。
ウォータースポーツが楽しめるスポットでもあるらしく、この日もカヤックなどを楽しむ人がたくさん訪れていた。
また、半島全体を覆う森林帯と地熱の高さが独特の生態系を育んでいるそうで、高山植物や真冬にも生息が確認されるコオロギ、日本北限のミンミンゼミなど、他の地域ではなかなかお目にかかることのできない動植物にも出会う機会があるらしい。
ちなみに、和琴半島のミンミンゼミは国の天然記念物に指定されているそうなので、夏に訪れて貴重なその声を聞くのも面白いかも知れない。
元々が溶岩ドームだったものが陸地とくっついて半島になったという和琴半島だが、今は地熱のあたたかさのせいか鬱蒼とした森林になっていて、一目で全貌を窺うことはできない。
駐車場から湖岸に沿って歩いていくと、やがて散策路は森林の入口に続いており、わたしたちも最初は散策する予定で居たが、あまりの薄暗さにわたしが気後れしてしまい、とりあえず中を歩くのは断念した。
奥の方には『オヤコツ地獄』と名付けられた火山の名残(それもちょっと怖い)があり、今でもボコボコと噴気が水面にあがってくる様子が見られるのだそうだ。
何でもそこはスピリチュアル的なパワースポットでもあるらしく、帰りにビジターセンターに寄ったところ、この場所に龍神様がどうたらこうたらとスタッフの方に説明?質問?している方がいらした。
そういう方向にご興味がおありの方にもオススメできる場所なのである。多分。
ところで、先にも触れた和琴半島の温泉は、ガチで温泉である(語彙よ)。
駐車場のすぐ近くには、無防備に野晒しになった露天風呂があり、申し訳程度の着替え小屋が設えられていた。
まさかこんなところに素っ裸で浸かる人も居ないだろうと思っていたのだが、帰宅後にその話を友人にすると、何と友人ご本人がここにパンイチで飛び込んだ経験を持つ猛者だったので、ちょっと気まずい想いをした。
それから、和琴半島の入口付近には『和琴フィールドハウス』という施設があり、屈斜路湖や和琴半島の成り立ちを学べるほか、散策路で出会える動植物の紹介や、周辺で楽しめるアクティビティについてなど、様々な情報を得ることができる。
ぜひ散策前に立ち寄っておきたいポイントだ。
思い切り湖畔を満喫したあとは、駐車場のすぐそばにあった2軒のお土産屋さんに立ち寄ってみた。
おおよそ30年以上前に修学旅行で行った洞爺湖あたりのお土産屋さんを思い出すような雰囲気で、まるで昭和にタイムスリップしたかのような感慨を味わうことができる。
特に奥側のお土産屋さんのご主人と奥さまは人当りもよく、入った以上は何となく出づらい雰囲気になってしまった。
色々迷った末、結局どう使うかのビジョンもないままに木彫りのスプーンを2本購入し、わたしたちはもう一度美幌峠の道の駅に戻ることにしたのだった。
道の駅の外観は、自分たちがピースでアホ面をしているものしか残っていなかったので、残念ながら掲載できなくてすみません。
しかし、この道の駅は全体的に新しく綺麗で、お土産品や飲食物なども『ここにしかない』に溢れており、比較的充実しているように思われた。
昨夜から今朝にかけては閑散としていたが、ほんの少し和琴半島を散策してから戻ると駅内は結構な人の数になっており、道内一の景観と名高いこの場所の人気のほどが窺えた。
この道の駅の建物は2階が展望台&休憩所となっており、屈斜路湖を一望しながらちょっとしたスナック類を食べてハイキング気分を味わうことができる。
また、1階には割とオシャレなカフェ風レストランや、某インフルエンサープロデュースで有名なパン屋さんなども入っており、休憩や食事にももってこいだ。
ちょうど小腹がすいてくる時間だったので、わたしたちも何か買って食べてみることにした。
1階のカフェレストランはまだオープンしていなかったので、必然的に食べられるものはスナック類か、パン屋さんのパンという選択肢になった。
しかし、あのパン屋さんは地元にも移動販売がやってくるので、わざわざここまで来て食べる必要もない気がする。
とりあえずレビューで何が美味しそうか調べてみた結果、北海道の道の駅のド定番『あげいも』と、この道の駅名物の『ポテから』という「とにかく揚げたイモ」のコンビを頂くことになった。
揚げいもは、言わずと知れた北海道名物。
丸ごと茹でたジャガイモに少し甘めの衣をまとわせてカラッと揚げたやつ。
これは場所によっては酷く脂っこかったり、衣がベタベタになっていたりするのだが、まだ時間が早いせいもあるのか新しい油でカラリと揚げられており、以前ほかの道の駅で食べたのよりも数段美味しかった。
ポテからは、文字通り半月切りのジャガイモに唐揚げの衣をつけて揚げたものだ。
こちらは揚げいもと違って塩気のある衣で、カリカリサクサクと歯応えも楽しく、本当に美味しかった!
もし揚げたジャガイモの2択で迷われている方がいらしたら、迷わず『ポテから』の方をオススメする。
そんなわけで、揚げたイモの2連打は、思っていたよりずっと小腹を満たしてくれた。いや、むしろ満たし過ぎたと言っても過言ではない。
なので、夫はそのまま次の目的地へ車を進める気だったらしい。
しかし。
わたしは見てしまったのだ。
『熊笹ソフトクリーム』の文字を。
実はここで調べてみるまで知らなかった。
『熊笹』が実は『隈笹』で、日本特産の笹で、北日本か、内地でも一部の山地にしか生息してないってこと。
なるほど~、だから北海道の至る所でお茶かなんかにされていて、更に北海道らしさを表す「熊」って漢字を当てられてるんだね!
とは言え、北海道に多く生息している種だからって熊笹を使った食べ物なんてほとんど食べたことがない。
あ、あれもそうかな?笹寿司。それは食べたことあるけど。葉っぱそのものを食すわけではないものな。
とりあえず、熊笹ソフトそのまんまを注文するのは些か怖かったので、バニラとのミックスを注文した。
どっしりと濃厚なクリームは、確かに笹の香りがふんわりとして、全然嫌味じゃない。
というか、ミックスにして正解だった。別に熊笹ソフトの部分が不味いわけではなく、バニラ部分が濃厚でめちゃくちゃ美味しいのだ。
熊笹ソフトクリームを満喫したあとは、車で30分強の場所にある【道の駅 メルヘンの丘めまんべつ】を目指すことになった。
ここら界隈は近隣に道の駅がいくつもあり、それほど時間をかけずに回ることができる。
とは言え数が数なので、スタンプラリーで回るにはそれなりに覚悟を決めなければならないのだが…。
ともあれ、辿りついた【メルヘンの丘めまんべつ】には、あまりメルヘン感はなかった。
ただ、お土産品などは豊富で、地元産の豚やしじみ、チーズを使った商品が目白押しになっていて、かなり頑張っている姿勢が伺える。
この道の駅には、地元でいかにも愛されていそうなフードコートも隣接されており、同じ建物の中には大空町観光案内所も入っている。
わたしたちはここで【大空町】というあまり聞き馴染みのない地名が【東藻琴村】と【女満別町】が合併してできた街だということを知った。
フードコートは小さいながらもかなり地場産品のPRに力を入れて頑張っており、特に『しじみラーメン』と『さくら豚丼』がめちゃくちゃ美味しそうだったので、食べるかどうかを夫と2人でかなり悩んだが、どう考えてもまだ胃の中には揚げたイモたちが鎮座していたので、カマンベールチーズソフトだけ食べて去ることにした。
まだ食うんかい!というツッコミは厳禁だ。
このカマンベールチーズソフトは地元酪農館がプロデュースしているらしく、甘さはかなり控えめなのにコクがあり、なめらかでとっても美味しかった。
次に来たときは絶対に『しじみラーメン』を食べるんだ!と胸の中で誓いつつ、次の道の駅【流氷街道 網走】へ車を向ける。
【メルヘンの丘めまんべつ】から【流氷街道 網走】は、国道240号線を網走方面へ北上して約20分の距離だ。
何の気なしに進んでゆくと、途中に撮影スポットの看板があり、そこそこの人数が何かを撮影している様子が見える。
釣られて思わず降りてみると、何とそこが【メルヘンの丘めまんべつ】の名の由来となった【メルヘンの丘】なのであった。
あとで調べてみたところ、この場所は1990年に公開された黒澤明監督の『夢』という映画に登場し、全国的に知れ渡ったらしい。
絵本を思わせるような風景が美しく、美瑛の『パレットの丘』などと並んで畑作地帯の人気スポットになっているようだ。
ちなみに、ここらあたりを通った時に同じ場所から撮ったのだという雨の日の写真を妹に見せてもらったところ、まるで別な場所であるかのようにショボい写真だったので、ここはぜひ晴れた日に訪れて欲しいところである。
国道240号線から国道39号線を経由して【道の駅 流氷街道網走】に至る道は、網走湖を眺めながら走るキレイな道だった。
道東は本当に見どころが多いねえ、などと話しながら、一度網走監獄への道をスルーして道の駅へ向かう。
網走の全体的に古めの建物が多い市街をオホーツク海方面へ抜けると、随分とガワの大きな道の駅【流氷街道 網走】が見えてきた。
メルヘンの丘までは確かに晴れていたはずなのだが、ここへ来てにわかに空はかき曇り、小雨まで降ってくる始末。
本当は海沿いの気持ちのよさそうな道だったので、少し外を散策するつもりだったのだが、雨に降られては仕方がない。ひとまず中を見ながら様子を見よう、ということになった。
中に入ってみると、お土産物売り場は地場産品中心というよりも、アンテナショップや北海道土産のセレクトショップという雰囲気が強かった。
館内は比較的広々としており、品揃えは豊富だ。
ここでしか食べられない流氷ソフトクリームなども販売されていたのだが、本当におなかがいっぱいだったため、ここでも食べるのを断念する。
2階はレストランになっていて、事前情報によると釜飯が人気メニューとのことだった。
どうせ何も食べられないほどおなかはいっぱいだったが、とりあえず食べ物と聞けば覗かずにはおれない習性のわたくし、もれなく足を運ぶ。
幸いなことに(?)2階レストランは15時半で終了だったため、食べたいのに食べられない!という悔しい思いをすることもなく、諦めがついたのだった。
ちなみにポケモンGOをやっていない方からすると明らかな蛇足だが、網走の道の駅には全道でゲットできるポケモンGOのマンホールのポストカード一覧があり、この道の駅にもしっかりとアローラロコンとマニューラのマンホールが設置されていた。
これまであまり意識せずにポケストップをくるくるしていたのだが、こんなことなら今までもしっかりコレクションしておけばよかった~!と今更ながらに後悔している。
夫がトイレに行っている隙にポケモンGOを開いてみれば、道の駅のジムではちょうど誰かがカイオーガのレイドに挑んでおり、夫の白い眼も顧みずに思わず参戦してしまった。
結果はゲットならずだったし、一緒にレイドしたお揃いのアバター着た3人組にもフレンド申請蹴られちゃったけど!!いい思い出ができました!
ここからは、いよいよ今回の旅のメインイベント、網走監獄へ足を延ばすことに決めた。
【道の駅 流氷街道 網走】からは車で11分。
全体的にレトロな街並みを走り抜けて網走監獄にたどり着くと、なお一層雨は激しさを増してきたのだった。
それでは、このたびはこの辺で!
撮れ高多すぎの道東網走監獄編、もう少し続きますので、次回もどうか宜しくお願いいたします!