静脈内鎮静法で親知らずを4本一度に抜いた話(検査編)
以前、入院して静脈内鎮静法で親知らずを4本一度に抜いてもらった話をしようと思う。
第Ⅷ因子欠乏という血の凝固が少し遅い体質であることを前提とした措置での入院だったのであんまり参考にはならないかもしれないけど、事例の一つとして残しておく。
親知らず、早めに抜いた方がいい説
親知らず、抜くなら早めに抜いたほうがいいって言われがち。
2年くらい勧められ続けた結果、二十代半ばにして親知らずを4本一度に抜いた。
やろうと決めた理由は大体この3つ。
・デンタルクリニックの先生に若いうちに抜いたほうがいいと勧められた
・追ってるバンドのライブ日程が全て延期になっていた(悲しい)
・お金と時間に比較的余裕がある時期だった
どこにも行けず、人とも会えず、ライブにも行けない。だからいつも遠征やらチェキで消えていた分のお金を充てた感じだった。あと本当に何もないまま一年を終えてしまいそうで、せっかくならずっと言われていた抜歯を済ませてしまおうって感じの結構軽めの動機。
このとき「親知らずに押されてるから虫歯もないのに痛むのかも」程度だったし、病状が重くもないのに気軽に入院してもいいものかって思ったけど、入院先の口腔外科の先生に「入院が難しいなら最初から今はちょっとって説明するので大丈夫ですよw」ってめちゃめちゃフランクに言ってもらえて安心できた。
ちなみに、若いうちに親知らずを抜いたほうがいい理由としては
・親知らずが横向きに生えているとどんどん歯並びに影響する
・若い方が術後の回復が早い
・年をとると顎の骨が硬くなって抜きにくい+抜いたときのリスクが増える
・病気になったり持病を抱えたりするとそもそも抜歯ができないかも
みたいな感じだった。とりあえず急かしてくる。
抜歯にあたって、仕事は8日休み→1日出勤→2日休みという形にした。
感染対策で自宅待機になる日も割とあったので、その辺のスケジュール調整と有給休暇を使った。
抜歯2ヶ月前
きっかけは通っている近所のデンタルクリニックで歯石除去などを含めた定期健診。
歯石除去、八重歯より奥は大丈夫だけど前歯近辺がめちゃめちゃ痛い。毎回流血する。
これは通っているところの腕がイマイチなのか、それとも人によって違うのか分からなくて困る。
歯科ってカルテもあるし、セカンドオピニオンかかりにくくない?
毎回違うクリニックでレントゲン撮られるのはちょっと面倒だし、やることがやることなだけにセカンドオピニオンのリスクが大きくて怖い。
話を戻して。
虫歯はないのに時々歯痛が起こるようになっていたので相談してみた。
前に相談した時に気圧の影響かもって言われてて、今回もそれかなって思ってたら親知らずが正常な歯を押してる可能性があるらしい。
レントゲンを見ると下の親知らずががっつり横向きに生えていた。
しかも、一部露出してるとかいう最悪のポジショニング。
上の親知らずは一応まっすぐ生えていた。
でも位置が位置なだけに磨き残しも多くなりやすくて虫歯の危険はやっぱりあるらしい。
しかも上の親知らずも一部だけ露出していて、もうすでに歯石除去の対象になってた。
危険度は「一部だけ出てる>全部出てる」らしい。
歯肉に覆われてる部分と露出した部分の境目が磨きにくくて虫歯になりやすいんだとか。
ちなみに、全部が歯肉に覆われていても斜めや横向きに生えていたりしたら抜いちゃった方がいいらしい。
先生「下の親知らずは横向きに生えちゃってるから早めに抜いた方がいいけど、僕は上も抜くのを勧めたいかな。本当に気を付けないと虫歯になりやすいし、あと上だけ残すと嚙み合わせる相手がいなくなるから問題が起こりやすくてそこが心配なので」
私「全部抜きたいです」
先生「4本一度に抜く?2本ずつなら一応うちでも抜けるけど、4本一度に抜くなら大きい病院で何泊か入院して静脈内鎮静法っていうボーっとした状態で抜いてもらう処置ができるよ」
私「4本全部でお願いしたいです(即決)」
2本だけ抜いてまた別のときにまた2本抜くとか、そんな何度も怖い思いしたくない。痛いのめちゃくちゃ怖いから4本いっぺんに抜きたい。
4本一度に抜いたら上下左右全ての奥歯がしばらく使えなくなるのは分かってるけど、精神的に楽で安全に処置されるならそれがいいよねって思った。
先生「たぶんそっちの方がいいと思うよ。半分寝たみたいな状態でやってもらえて精神的にも楽だからね。希望されるならもう今日口腔外科の先生に紹介状出せるけどどうする?」
私「お願いします」
先生「今はベッド空いてるって聞いてるけど、急に新型ウイルスの患者さんが増えたりすると入院も難しくなる可能性があるからそこは口腔外科の先生とお話してね」
私「もう明日とかに行っちゃってもいいんですか?」
先生「診察は病院が開いてる時なら大丈夫だよ。入院とか手術に関しては、ダメならスパっとダメって断られるからそこは患者さんと先生との相談だね」
口腔外科へ行って、4か月後とかに抜歯をすることになったという人もいるらしい。
その辺りは執刀する先生の空きの都合もあるし、新型ウイルスの勢いが強くなれば緊急性のある患者さん以外の入院がアウトになる可能性もあるよと事前に伝えられた。
そんなこんなで、区内にある大きい病院の口腔外科へ紹介状を書いてもらった。
その日のお会計は歯石除去に加えて3,000円くらいプラスだったと思う。
紹介状をもらった翌日(口腔外科初診)
さっそく口腔外科を受診。
逃げる理由見つける前に行かないと怖くなって行かなくなりそうだから早めに来た。
総合病院って久々だからあたふたしてしまって恥ずかしい。
診察券の作り方とか診療科の回り方とか聞きながらなんとか口腔外科へ。平日の朝一だったからか比較的すぐに診てもらえた。
初老の優しい男性が担当してくださったけど、執刀医はまた別の先生になるらしい。
若いけど経験豊富な女性の先生とのことで、なぜかよかったね~みたいな雰囲気だった。こういう不安なとき刻印づけ発動しがちだから先生じゃないの……?って謎の寂しさが湧いてしまった。
この日は簡単な手術の概要と術前検査の案内だけだった。
術日の決定と、入院2週間前に術前検査の予約をとってもらう。2ヶ月後の日程で、会社を休んでも問題なさそうな日取りで組めて安心した。
待合室に出て、看護師さんから検査の概要を聞く。
血液検査とか尿検査とかレントゲンとか、内容としてはごく普通の検査。術前2週間前からは不要不急の外出とか大人数での会食は控えてねの説明が付け加えられたくらい。
病院かかることが少ないから看護師さんって優しいんだなって改めて思った。ホスピタリティがすごい。
あと退院後に何もできなくなりそうだから保険会社に連絡して、入院と通院の保険手続きについて必要な書類を送付してもらった。親知らずの抜歯手術には保険は下りないけど入院通院には適用されるから申請のためにいろいろ聞いておいた。
親知らず抜くだけなのにオペレーターさんが重病の人に接するがごとく静かなトーンで逐一労わってくれて、看護師さん同様プロってすごいなって暖かい気持ちになった。
入院2週間前(術前検査)
術前検査。噛みそう。
採血するところの番号札を出してくれる機械が故障してて、看護師さんたちが物凄い人数を人力で管理してた。すごく大変そうでこんな日にすみませんってなった。
先に採尿があって、その後呼ばれて採血してもらったら……
_人人人人人人人人人人_
> めちゃめちゃ痛い <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄
今まで血管は見やすい方って言われてきたし、健康診断でも毎年あんまり痛くなかったから油断してた。本当に痛かった。終わってから怖くなってちょっと泣いた。
採血の後はレントゲン。
金属のついた下着やアクセサリー類は外すようにと言われたけど、カップ付きタンクトップだったから脱いだり着たりの手間もなくて楽だった。
心電図では胸元と足首を出す必要があったから、靴下はすぐに下ろせるものが楽だと思う。この日はハイソックスタイプのストッキングだったからぺろんとずらせばOKだった。ストッキングとかタイツだと脱がなきゃいけないらしい。
ちゃんとブラしてるとここでまた外すことになるから、楽な方がいいって人はカップ付きのインナーで行くのがいいと思う。
特に採血とかで緊張しちゃう人は下着とかストッキング類の締め付けも気分が悪くなる原因になったりするらしいから、できるだけ楽な感じで行くことを勧めたい。
そこから検査の結果待ちで待ってから口腔外科で診察。
執刀医の先生は快活な女性だった。朗らかで美人、第一印象でもう好き。
先生美人だ~!ってほんわかしてたけど、検査結果は想像よりも悪かった。
ちょうどこの時はストレスから食道炎になりかけで、少しでも食べると胃もたれと吐き気が出るから食事をうまくとれない状態。
そのせいで栄養状態があんまりよくないとのことだった。
この令和の時代、ごく一般的な会社員が栄養状態指摘されることがあるのかって愕然とした。
栄養状態に加えて先生が気になると言ってたのが、第Ⅷ因子の少なさ。
第Ⅷ因子はいわゆる血液凝固にかかわる因子で、これが少ないと血が固まらず出血が止まりにくくなる。
親知らずの抜歯だから血が止まりにくいっていうのは結構ネックになるらしい。
第Ⅷ因子の欠乏は大学時代に一度大学病院の循環器科で診断されてたけど、そこまで大変なものじゃないだろうと思って申告していなかった。
大学生の頃、何の前触れもなく鼻血が出たり大きな痣が何ヶ所もできていたりと妙なことがずっと起きていた。
それを機に検査して、自分が人よりも第Ⅷ因子が少ないことを知った。
ただ鼻血や痣もいつの間にか落ち着き、出血が止まらないなんてこともなくなったので今回もまあ問題ないだろうと思っていた。
しかしさすが総合病院、問題だった。
再検査で詳しく調べたい、結果によっては手術は延期になるかもしれないとのことだった。それまで朗らかに笑ってた先生の顔がちょっと怖くなってた。
結果がでるまでに1週は必要と言われ、もう入院予定日まで時間もなかったので翌日に採血と血液内科の予約を入れてもらった。
トントン拍子に進むとばっかり思っていたから、その日は少ししょんぼりしながら帰った。採血痕もがっつり内出血していてもう泣きっ面に蜂。
あと、祖父母に親知らず4本抜くために入院することを伝えたら「4本!?1本ずつ抜いたらいいがね!」ってめちゃくちゃに心配された。
でもさすが入院の玄人、ググるよりも詳細に入院に必要なものをしっかり教えてくれてありがたかった。
再検査(術前検査の翌日)
予約票をプリントしてまっすぐ採血へ。
故障していた機会が直ってて、人の流れがかなりスムーズだった。
今回の採血は採血管9本分。前日も3本分とったのに9本は草。瀉血かな?
看護師さん「一気に血採っちゃうと気分悪くなっちゃうかもしれないから奥のベッドで横になってもらって採ってもいいかな?」
私「お願いします……。あと昨日左でやってもらってすごい内出血してるので、今日は右で採ってもらってもいいですか?」
看護師さん「ほんとだ。じゃあ右にしよう」
私「昨日めっちゃ痛かったのでできるだけ痛くないようにお願いします(?)」
看護師さん「ごめんね~……私たちも練習はしてるんだけどどうしても痛みが出ちゃう時ってあるから……」
横になって針プスリ。痛いは痛いけど、前日ほどじゃなかった。
看護師さん「昨日もしかして午前に採血した?」
私「午前で、めちゃ人いました」
看護師さん「午前中だと早く採らなきゃいけないから一番太い針でやるんだよね。ちなみに今も採る量が多いから一番太いやつだよ」
私「怖い」
あんまり混雑してなくて少ない採血で済むときは、細い針でって言ってもらえれば変えられるときもあるって言われた。細いとやっぱり痛みは少ないらしい。
採血を終えてベッドを借りたお礼を言いつつ血液内科へ。
これがもうすごい待つ。さすが内科。
この日の検査結果はまだ出ないけど、前回の検査結果から大体推測できる範囲での話をしてもらった。検査結果が出ればその日に改めて話をしましょうって感じ。
あと、第Ⅷ因子欠乏が問題になるのは幼い子が多いとかで、口腔外科・血液内科に加えて小児科の先生も関わってくれるらしい。
血液内科の先生曰く餅は餅屋。
親知らず抜歯×小児科とかいう謎の組み合わせにもう笑うしかない。
二十代半ばにもなって小児科の先生にお世話になるとは思わなかった。
この日は口腔外科の診察はなし。
入院3日前(再検査の結果・入院説明)
午前休をとって病院へ。まさか入院予定日3日前まで可否も分からないとは思わなかった。
数値を見る限り対応可能な範囲だったらしく、結果的に入院と手術はできるでしょうとのことだった。
口腔外科では上下の親知らずそれぞれの手術内容を聞いて、血液内科では血液凝固に問題があれば投与される薬の説明を聞いて、最後に入院に関する科へ。
新型ウイルスの影響で面会・外出・外泊は禁止。入院前に風邪の症状があれば要連絡。入院日の14日前からは感染の機会を避ける。普段から手洗いうがいマスク着用など、普段の入院案内にプラスの書類がいくつかあった。
マニキュアとかはアウトですよの項目に「手術当日は色付きリップクリームやポイントメイクを含めたお化粧はできません」って書いてあってそんな猛者いるのかってちょっと笑ってしまった。
病室は大部屋ではなく、個室をお願いした。
病床数も問題ないということで普通に個室をお願いできた。個室は特別個室と一般個室があって、それぞれのグレードで何種類かに分かれている感じ。
その中でも一般個室は2種類あって、部屋の広さで値段が違った。
夜中に不安で電気を消せなくなるのが分かっていたから他の患者さんの迷惑にならなければどこでもよくて、狭い方の個室(7,000円/日)に決定。
他に必要な書類を諸々受け取って帰宅。
次回
→入院・手術編
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?