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[ Symbolizm ] 階段を上る(前編)

はじめに

 本シリーズは、あなたが階段を上るために必要な知識を順に綴ってゆきます。一言で階段を上ると申しましても、あなたは本当にその意味を理解しているでしょうか?意味もなく、目標もなく上る階段は、無明の無限回廊となんら変わりません。ただただ辛いだけであり、階段を上ること自体が嫌になってしまいます。

 象徴主義の学びを進めてゆくと必ずと言っていいほど、階段ないし梯子の象徴と向き合うことになります。しかしながら、「ヤコブの梯子」からも分かるように、顕教物語の中に象徴主義の答えはありません。いくら物語を読み込んだとしても、象徴の輪郭程度しか分かりません。なぜなら、象徴主義の答えはいつも密儀に眠っているから。したがって、密儀を知らぬ者には無明の無限回廊となってしまうのです。

 ではどうやって隠された密儀を知るのか?それは、聖書を読んでもコーランを読んでも分かりません。「密儀ではこうですよ」なんて書いてあったら密儀になりませんから。それに、聖書やコーランは文字で書いてありますでしょ?文字は「言語的象徴」であり、象徴の中では最も新しい象徴です。賢しき者が用いるものは、いつも最も古きものなのですよ。ですから、新しい言語的象徴ではなくて、最も古い象徴を用いて密儀を語るのです。

 「象徴の威力」シリーズでも申し上げましたが、象徴の種類は3つ。情動的象徴、計数的象徴、そして言語的象徴。この中で最も古い象徴は情動的象徴。つまり形そのもので意思を伝える象徴が最も古きものですから、密儀も同様です。

 ただ、何度も申し上げておりますが、そのような智慧はどの宗教体系においても密儀です。故に、おいそれと意味を知ることはできません。どうしましょ?

 ではもう一度、階段の象徴画をご覧ください。

 キリスト教のヤコブの梯子は寓意に包まれ過ぎていて、何が何だか分かりません。しかし、一番右の画像の階段には、一段一段に文字で説明が書いてあることが読み取れると思います。この写真はフリーメイソンのロッジの階段です。何が言いたいかと申しますと、現代の我々が象徴主義を理解するにあたり最も参考になるのはフリーメイソンなのですよ。

 わたくしは、象徴主義を学ぶにあたり、宗教・思想・団体の垣根は取っ払いました。ですから、古代神話、キリスト教、神智学、薔薇十字団、黄金の夜明け団、ヘルメス主義、フリーメイソンなど、すべて横並びで垣根なく学びました。その中で、最も象徴の理解が進んだのはフリーメイソンでした。マンリー先生も同じ見解です。

古代の祭儀の大半はその秘密を明かすことなく地上から消えてしまった。しかし僅かながら時代の試練を経て生き残っているものもあり、その神秘的象徴体系は、いまだに保存されている。フリーメイソンの儀礼の多くは、知恵の鍵を授かるのに先立って、古代の大神官が志願者に課していた数々の試練に基づいている。

「古代の密儀」Manly.P.Hall

 結局のところ、どの宗教体系においても密儀とはカバラですから、我々にとってはカバラが色濃く現れている体系から学ぶのが最も近道です。

 従いまして、「階段を上る」の意味をフリーメイソンの象徴画から紐解きましょうというのが本シリーズです。




数年前

 数年前に一度、動画で「階段の象徴」について語りました。しかしながら、本シリーズをお読みになれば、「動画ではほんのさわり程度しか語っていない」ということがお分かりになることと思います。本シリーズで階段の象徴をとことん学び、光なき洞窟から脱出しましょう!



階段の象徴画

 象徴画を見てすぐに「階段を上る=何をすれば良いか?」が一段一段事細かに示されていることが読み取れると思います。ただ、いくらキリスト教のヤコブの梯子より分かりやすいとはいえ、それなりに象徴的ですから、階段を上るように下から一段一段学んでゆきましょう。

 概略としては、象徴画を見てお分かりの通り、階段は3区画に分かれておりますので、本シリーズも3段・5段・7段に分け綴ってゆきます。第一回目の本件は最初の3段についてのお話です。



階段を上る

 フリーメイソンの象徴の解読と聞くと、何か陰謀めいたものや魔術的なもののイメージが想起される人も多いと思いますが、実際は正しい人間の在り方、生き方が象徴されています。

 「階段を上る」という象徴の顕教的意味は「洞窟の比喩」と同じで、「階段を上る=洞窟から脱出する」です。大切なことは密儀的意味に示されている「どのように学びを得るのか?」です。その手順が階段の一段一段に示されておりますので見てゆきましょう。

 解読に入る前に注意事項を一つ。いつも申し上げますが、わたくしは”中の人”ではございませんので、出版されている書籍や海外のメイソンのサイトなどの一般的に公開されている知識をもとに綴っております。また、象徴というものは一義的な意味を与えることはできないため、見方によってはより深遠な意味を有する場合もございます。よって、これから綴ることが漏れなく正確で正しいわけではございませんし、また全てでもございません。重ねて申し上げますが、一般的に公開されている知識をまとめたもので、その気があれば誰でも知り得る知識です。では始めましょ〜!



最初の3段

・道具

 まずは最初の3段から。いきなり文字ではなく象徴ですから読み方を知らねば最初の3段すら上れません。まずはここから始めましょう。

 フリーメイソンは石工とも呼ばれますが、我々日本人が理解しやすい言葉に置き換えますと「大工」です。よって、大工が用いる象徴は、大工仲間なら理由がすぐに分かるもの、つまり「大工道具」です。

 その考え方で上記三つの象徴を読み解くと、直角定規、水準器、下げ振り定規の3つですこの大工道具の特性と人間の生き方とが重ねられ、教えとして象徴化されているというわけです。



・大工

 象徴の説明に入る前に大工について少々述べます。

 現代人であり日本人の我々が大工と聞くと、一般的な家を建てる町の大工さんをイメージしてしまい、本来の大工像が浮かばず「大工の象徴」を軽視しがちです。故に本来の大工とはどういうものなのかを知りましょう。

 古き大工とは「神殿や城や砦」の図面を引き建築できる人々です。智慧を独占していた支配階級や聖職者階級に最も近いところにいた人々。わたくしの推測では、そもそもは支配階級や聖職者階級が兼任していたと思います。わたくしの著書『Divine Ratio』で綴った通り、古き遺物には漏れなく智慧が込められておりますから。

 「大工が重要な職業である」との認識を構築すれば、神話の中でもそう描かれていることに気が付けます。

 例えば、30歳で布教を始めた3年後の33歳のときに磔刑に処せられた救世主がおります。みんな彼を羊飼いって思いがちですけど、彼の元々の象徴は「大工」よ。つまり「石工」。なぜなら、彼の養父、つまり聖母マリアの旦那ヨセフの職業が大工ですから。

「聖ヨセフと幼子イエス」
グイド・レーニ

 しかもこのヨセフ、ナザレ生まれのダビデ家第42代の末裔です。聖書では、マリアは受胎告知で処女懐胎したことになっておりますからヨセフは養父・義父との位置付けですが、受胎告知と処女懐胎を取っ払って考えれば、イエスの実父です。

普通の人は城や集団の党首になったり、土地や遺産の相続人になったりはできても、ある"経験の主体者や伝承者となることはできない"のである。

レンヌルシャトーの謎

 そもそも、大工が建築に用いる幾何学や数学の出所は、宇宙の法則を探求していた聖職者階級の重要な密儀です。王から王子へ、または王から王へ伝えられるような特別な智慧。そのような神聖な智慧を扱っていたものたちが大工なのです。したがって、古き智慧を象徴するのに大工道具というものはぴったりなのですよ。

 では大工の概念を正したところで、本題の大工道具の象徴へまいりましょ〜



・3つで一つ

 まずは、3つの大工道具の順番についてですが、上記画像をご覧いただいてお分かりの通り象徴画により「まちまち」です。ここで、直角定規が上だ、下げ振り定規が上だとつまらぬ争いが起きそうですが、わたくしの考えはこうです。

 この3つの象徴は「3つで一つ」故に序列なく、どの順番で書き記しても変わりがない。

 この意味は、道具を一つ一つ読み解いてゆけば理解できます。三つで一つ、どれも欠かすことのできぬもの。まずはこの三つが揃わなければ階段を上ることすら許されぬ。それゆえ階段の始めの3段であることを念頭に読み進めてくださいまし。



・直角定規

 直角定規は「倫理と行動の制御」を示します。

 直角定規は建物の直角を調整するのに用いられ、未加工の石を正しい形にするのに用いられます。このことを人間に置き換え、心の直角定規を自分に使用し、道徳的に正しい行動をとることを示す象徴です。

 上記の石の象徴によく現れています。未加工の石の部分は己の心。直角定規の助けを借りて(きちんと道徳的に正しき行いを心掛ける)、未加工の素材(あなたの心)を正しい形に整える。それが直角定規の示すものです。



・水準器

 水準器は「平等」を示します。

 水準器は水平を取るのに用いられる道具であることから、平等を意味します。いかに身分が高い者であろうと、運命の輪の最下層に置かれた者であろうと、結局のところ我々は同じ始祖から生まれた人間であり平等で、同じ権利を有します。そしてまた、富める者、貧しき者によらず、この世に生を受けた者には必ず平等に死が訪れます。

 組織、団体、階級維持のための区別は必要ですが、基本的に我々人間は須く平等です。




・下げ振り定規

 下げ振り定規は「公正」と「真実」の基準を示します。

 下げ振り定規は、建築において構造物が垂直に建てられていることを確認するために使用されます。ロバート・ロマスは著書の中で、「無謬なる下げ振り定規は公正と真実の基準である」と述べています。続けて、「貪欲、不正、悪心、復讐に傾いたり、人間を羨んだり蔑んだりすることなく、他者を傷つける利己的な傾向の全てを放棄せよ」とも述べております。

 端的に申し上げれば、あなたの心を下げ振り定規に置き換えて、右にも左にも振れることなく、常に真っ直ぐ垂直を保てということです。



・三つで一つ

 冒頭で「この象徴は三つで一つ、どれも欠かすことのできぬもの」と申し上げた意味がご理解頂けましたでしょうか?「倫理と行動の制御」「平等」「公正と真実」、これらは智慧を探究する者にとって重要な心がけです。映画や小説のお話のようですが、古き智慧というものはそれだけの力を有している故に、扱う者は正しき心を持ち、常に己を律し、真っ直ぐ歩いて行ける者でなければならないのです。

 あなたが興味を持った「象徴主義」というものは、そういう智慧なのです。せっかく出会ったのですから、3段の階段の意味を心に刻み、次なる階段を共に上って行きましょう。



・覚え方

 古き神殿は人間とイコールです。つまりあなた自身の体もまた神殿。階段は神殿の一部ですから、三段の階段を示す3つの道具の意味もまた、あなたの体で表せます。そのポーズを覚えていれば、様々な誘惑に心揺れた時、本件で語った3つの象徴をすぐさま思い出せることでしょう。ではそんな象徴的なポーズをお伝えいたしましょう。 

 「気をつけ!」のポーズです。

 2本の足でバランスを保ち、踵をつけつま先を直角に開き、地面に対し垂直に立つ。 

 直角定規、水準器、下げ振り定規、の三位一体は、あなたの体でいつでも思い出せます。三つの大工道具の教えを、いつもあなたの心に。



 最初の3段のお話はここまでです。次は5段の階段のお話。といったところで本件は締めとさせて頂きます。あなた様の心が最初の3段を踏み出せましたなら、引き続きお付き合いの程をよろしくお願いいたします。



作品紹介

デジタルBook:『ヨハネ黙示録 完全解読』

デジタルBook:『Decode of the Matrix』

デジタルBook:『ダヴィンチコードを乗り越えて』

本:『Divine Ratio Re:Decode』

本:『As above So below』

アパレル&小物:Cavalier Camp

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