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[ True History ] 象徴の威力 (情動)

はじめに

 本件は、どストレートなタイトルの通り”象徴のもつ威力”についての記事となります。いきなりですけど不思議に思いません?なぜ三角や円や四角などの”昔からある”単純な幾何学図形を”今もなお”使用するでしょう?もう何百年も研究しているのですから、何か複雑な幾何学や象徴があっても良いはず。何度もリメイクして使うからバレバレになっちゃうわけじゃないですか〜。例えば、、、

 少し象徴を学べばすぐに同じものだと分かりますよね?でも手を変え品を変え古きものを使い回します。

 その理由はとっても簡単。それだけの威力があるから。これ、はっきり言って魔法よ。だって物理的な作用を引き起こすのだから。と言われましても信じられませんよね?そりゃそうなんですよ。実は象徴って3つに分けられまして、そのうち2つは教えられておりますが、1つは教えられません。この一つを知らぬ故に、すでに知っている2つの威力も大切さも分かりません。はっきり言ってしまえば、既知の2つでさえ、上べしか知らされてないのが本当のところ。

 例えるなら、「ABC」や「234」は教わっても、それが全体で「十字を象徴する」という意味を教えられないようなもの。つまり数も文字も関係なく「形」に意味があるということ。本件のお話も『聖都D.C』のDecodeのように長年黙っていたことです。昔からの読者様には一つの答えになると思います。では順に、象徴の威力について綴ってまいります。

もう智慧なき子供のフリをして
扉の向こう側をチラチラ見せる時期は過ぎたわ。



智慧の階段

 さぁ、いらっしゃい。今日はね、扉の向こう側どころか一緒に階段を登っちゃうわ。それだけ特別な智慧の旅よ。今夜みたいな星降る夜は月明かりと合いまって、古き象徴を語る旅にはピッタリ。

じゃあ一段一段のぼって行くわよ。


3つの象徴

 象徴は大きく分けて3つに分類ができ、この分類がとても大切になります。まずはその分類を頭に入れましょう。

「情動的象徴」 「言語的象徴」 「計数的象徴」

 前述した「我々が教えられている象徴」というのは「言語的象徴」と「計数的象徴」の二つ、簡潔に述べれば「文字と数」であり、両者も象徴に分類されます。そして「情動的象徴」というものが、わたくしが扱っている「象徴」のこと。以下にもう少し詳しい説明を引用します。


  • 情動的象徴
    感情や志を表す。あらゆる象徴の中で最古のものであり、7万年以上も前にまで遡る。文盲の人々に情動を伝えるために広く用いられた。

  • 言語的象徴
    言語の音を表す。人類が時空を超えてコミュニケートすることを可能とする。ある時期においては、この象徴はエリート集団のみに限定され、しばしば宗教者や支配階級が独占していた。

  • 計数的象徴
    計測、記録、所有物の数などを表す。数学的象徴という宇宙言語の元となった。

引用:Robert Lomas

本件は主にこの「情動的象徴」についてです。


情動的象徴

Newspaper Rock State Historic Monument

 情動的象徴には「写実的象徴」と「幾何学的象徴」があります。まず人類が手にした象徴は前者の「写実的象徴」です。


写実的象徴

 上記の画像はアメリカのユタ州にある「ニュースペーパーロック」と呼ばれる古き象徴が刻まれた石です。

 狩人と角の生えた姿のシャーマンとが協力し道具を使い獲物を捕らえる写実的象徴画の例です。ただ、本来はこのように光当たる場所ではなく、暗い洞窟の奥深くに描かれます。

 言語を持たないホモサピエンスの時代。暗闇は恐怖であり、洞窟などは昼でも暗く近寄りがたい場所です。ある時、あるホモサピエンスはなぜか恐怖しかないはずの洞窟にいざなわれました。直感に従い奥へ奥へと進むと、そこには上記のような情動的象徴が描かれており、それを見たホモサピエンスは進化の一歩を踏み出します。

 暗闇を克服し洞窟の奥深くにいざなわれた選ばれし者は、そこで象徴を通し力を授かります。どういうことかと申しますと、壁面に沿って描かれた象徴は、獲物の追跡・狩猟方法、獲物となる動物、勇敢な狩人、指揮するシャーマンなどで、これを見た者は感情的な力を感じ、インスピレーションを授かり、自らの能力を向上させ部族を指揮するに至ります。要するに知識のバージョンアップ。ジェラルド・エーデルマンはこれを「高次意識の進化」と呼びました。

 高次意識には、社会を基盤とする個我の確立、過去と未来という時間軸における世界観の構築、直接的認知などが含まれる。シンボル的記憶がなければこれらの能力は発達し得ない。

Robert Lomas

 つまり象徴が人類という種の進化に織り込まれているということです。洞窟の象徴を見た者は、描いた者の智慧をインスピレーションという形で与えられ同調し、これにより"概念が形成され伝播すること”となります。狩猟の象徴はホモサピエンスの集団に精神的表象を共有することを可能とし、劇的な進化をもたらしたのです。こうして部族単位の新たな狩猟スタイルと象徴を持つホモサピエンスは各地へと拡大してゆきました。

 めっちゃ現代的な言い方をしますと、マトリックスみたいに脳とPCを繋いで色々とダウンロードして覚えちゃうって感じ。そしてリーダーとなり群れを率いてより良い土地を求め旅をする。そのうちに秘密の象徴を残せそうな洞窟を見つけたら、自分が見た象徴と同じように、自分たちの象徴を残します。例えこの集団が絶えたとて、象徴は残り続けますから、いずれはまた別の暗闇を克服したホモサピエンスが目にすることとなりバージョンアップの連鎖が続きます。

 これらのシンボルは密かに見られるためのものであり、見たものに畏怖の念を起こさせ、なんらかの行動を促すものであった


幾何学的象徴

 原始的なホモサピエンスが家族を中心とした集団から、武器や道具をもち、狩猟・採取を行い部族単位へと成長を遂げ広範囲に拡大してゆきました。その後、作物や家畜の育て方、家の建て方を学び「定住」を選択したホモサピエンスにより村というものが出現します。この頃から新たな社会制度も出現します。人数が多くなったため、労働の分配や大規模な建築プロジェクト、複雑な社会組織なども発生しました。こうして定住することにより農耕が始まります。と同時に「農耕の象徴 / 幾何学的象徴」も現れました。ここでまた「高次意識の進化」が起きたのです。

 遺伝学者ジム・ウィルソンによれば、農耕は女性によって広まりました。そのため、種やパンを入れる土器には女性の象徴が刻まれます。それが上記の「菱形紋と渦状紋」を合わせた象徴です。


写実的象徴と幾何学的象徴をつなぐもの

 これは写実的象徴の「女性像」に幾何学的象徴の「菱形・螺旋」が刻まれたものです。すでにこの時代から「女性」と「生」が結びついていることが分かります。特に女性が子供を産む部位である「臀部」が強調されていますね。これらが「豊穣」とも結びついており、前述の土器の象徴とも重なります(出産=多産=豊穣)。現代でもお尻の大きな女性は安産型と言われますでしょ?その感覚は古代からなの。ですから、食料を入れたり種を保存したりする土器が、「お尻の大きな女性=多産=豊穣」の写実的象徴で形作られるのは至極当然のことといえます。

赤子を産む臀部と赤子を育てる乳が強調されていますでしょ?

 新石器時代初期、人々は出産のための祠を造った。チャタル・ヒュユクでは出産に関する儀式が行われたらしい部屋が発掘された。彼らはこの部屋を赤く塗ったが、血の色である赤は生命の色であったことが思い起こされる。壁に描かれた様式化された像は出産する女性を表している。その近くに描かれた円い形と波線は子宮頸、臍帯、羊水を表しているのかもしれない。低い漆喰の台は実際の出産に用いられた可能性もある。この部屋の色とシンボリズムは、人々がこれを宗教的な出来事とみなしており、そこに儀式が伴っていたことを示している。

Marija Gimbutas

 出産というものがどれほど神聖な行為かご理解頂けましたでしょうか?人が生命を生み出せる唯一の手段ですから当然です。そしてこのような神聖な場所に、前述の神聖な象徴の刻まれた土器や像が眠っています。やはり生命と女性が強く結びついていることが分かります。

 先ほどの女性像の象徴を平面に展開したものです。上下二つの三角形は、生命が生まれ出る女性の陰門を示します。詳しくは以下に引用します。

 下向きの三角形は「生命を生み出す」陰門と子宮のシンボルである。女性の開脚によって形成される上向きの三角形は「死」と「墓」としての子宮を表す。この用法は「角型の口のある墓」の構造に見られる。これは同じ頃に築かれたもので、死者の家に入る象徴的な子宮を意味する。
 洞窟、亀裂、空洞などは地母神の始原たる子宮の自然な象徴である。大地の子宮への埋葬は種まきの隠喩であり、ゆえに古い生命から新たな生命が生まれ出ることを期待するのは当然の帰結であった。

Marija Gimbutas

 これで上向き三角&下向き三角&菱形の象徴の意味は分かりましたが螺旋の意味がまだですね。ここでいつもの「黄金螺旋」とか「時間の螺旋」と結びつけちゃダメですよ。それは「言語的象徴」と「計数的象徴」が現れ、かなり高度に発達してからの象徴。女性器を下向きの三角で表すくらい原始的な時代なのですから、螺旋も同じです。


生命を生み出すもの

 地球上に生命を生み出す根源は「太陽」と「月」の対の力です。また、作物の成長、実り、収穫は「太陽と月」が繰り返す「周期」の力により生まれます。上図をご覧ください。この図は、日の出と日の入りの太陽の季節の運行によって大地に投影される影の形です。そこには、上向きの三角と下向きの三角がくっついた「菱形」が形成されます。

象徴の影の動きをわかりやすくしたもの


これが分かれば二つの螺旋まであと一歩。
意味は同じで示し方が違うだけですから。


 女神の臀部に描かれていた双渦状紋もまた、太陽の季節の運行による影の道を辿ることによって描くことができる。3ヶ月で1つの渦が完成するのである。この実測的なシンボリズムを得るには、正午に自立する柱の影の先端部分の位置を記録するといい。太陽の自然の運行によって描かれたシンボルは、あの女神の臀部にあったのと同じパターンを描き出す。

Robert Lomas

 農耕で定期的に収穫をあげるためには季節の理解、つまり太陽と月の周期の理解は必須です(二至二分等)。そのため太陽や月の運行を幾何学的象徴に変換し、多産・豊穣の写実的象徴の女性像に刻んだのです。これが象徴に理が加わった最初です。わたくしはとても強力な象徴だと思います。理由は「威力」の項で述べます。



情動的象徴のまとめ

 ここまでをまとめます。まず象徴には3種類あり、それらは「情動的象徴」と「言語的象徴」&「計数的象徴」の二つに分けられます。前者の情動的象徴は文字や数が出来る以前の「情報伝達ツール」として機能していました。その情動的象徴は、写実的象徴と幾何学的象徴の2種類があり、どちらも見た者にインスピレーションを与え心を揺らします。そうしてホモサピエンスの意識の進化である「高次意識の進化」を促し伝播させました。この高次意識の進化は、狩猟から農耕、都市、国家と、人間がバージョンアップするたびに密接に関わっています。情動的象徴だけで今回綴った内容です。この後に計数的象徴と言語的象徴が登場すると飛躍的な進化を遂げることになります。続きは2週後の『象徴の威力(計数・言語)』にて綴ります。

 来週は『象徴の威力(偶像)』です。本件の情動的象徴が現代においてどのように使用されているかについて綴ります。


魔女の本気

威力

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