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[ Human ] ダモクレスの剣

はじめに

 本件は古き戒めのお話「ダモクレスの剣」についてです。前回の記事『魔女のおすすめ本』はあなたの剣を研ぐための砥石のお話でした。本件のダモクレスの剣は、あなたの心の剣のお話。このお話の解釈には、魔術師向けの戒めのお話が混在します。我々にとってはとても大切な戒めですのでしっかり頭に入れておきましょう。では始めます!ダモクレスの剣について!





ダモクレスの剣

・寓話

 まずはダモクレスの剣のお話から始めましょう。

 シラクサの僭主ディオニュシオス2世の宮廷に仕えるダモクレスは日々、ディオニュシオスの権力と富を羨んでいました。彼はある日、ディオニュシオスに「あなたはなんて幸せなんだ。こんなに権力と富を持っていて」と言いました。そこでディオニュシオスは、ダモクレスにその幸せを体験させようと考えました。

 ディオニュシオスはダモクレスを一日だけ自分の王座に座らせ、豪華な宴を開きました。しかし、その宴の最中、ダモクレスは気づいてしまいます。頭上に一本の髪の毛で吊るされた鋭い剣があることに。これが題名にもなっている「ダモクレスの剣」です。ダモクレスは最初は豪華な生活を楽しんでいましたが、頭上の剣に気付いた途端、その危険に怯えるようになりました。結局、ダモクレスは剣の恐怖に耐えきれず、ディオニュシオスにこの状況から解放してもらうよう懇願したというお話。

「大いなる力には、大いなる責任が伴う」



・戒め

 この物語の表向きの戒めは、権力や富といった大きな力には、常に大きな危険や不安も伴うことを示しています。どんなに権力を持っていたとしても、それには見えないリスクや責任が付きまとうという教訓です。他者の派手な表だけを見て羨むのではなく、見えない苦労にも目を向けなければならないということ。現代的にいうなら、メリットだけを見てリスクを見ない危険性を説いております。この世の摂理は等価交換ですから、求めるならそれなりの対価を伴います。

 現代において、「ダモクレスの剣」という表現は、危険や不安が常に付きまとっている状況や、何かが起こるかもしれないという不安定な状態を指す際に使われます。例えば、国際情勢の緊張が高まっている時や、企業のトップが大きな責任とリスクを抱えている時などに、この表現が用いられることがあります。

 このようにダモクレスの剣の物語は、”力”の裏に潜む危険を警告する象徴として広く知られ、また用いられてまいりました。しかしながら魔術師にとっては、もう一段深い戒めが見え隠れします。

 魔術師にとっての力とはなんでしたっけ?

知識は力なり

フランシス・ベーコン


更に戒め

・知識とリスクの認識

 ディオニュシオス王の「富と権力」を「古代の智慧」に置き換えると、この物語は「智慧を持つリスク」を象徴するお話になります。頭上に吊るされた剣は、智慧を持つ者に常に付きまとうリスクの象徴です。古代の智慧を扱う者は、このリスクを認識し、それに対処するための知識と責任の重要性を認識する必要があります。真の智慧は単なる知識ではなく、”大いなる力”も付与しますが、その力は外的にも内的にも危険を伴う力です。多くの人間はダモクレスのように、その知識の危険さや責任の重さに耐えきれず投げ出します。わたくしが異常なほどに用心深いのは、古き智慧がダモクレスの剣であることをよく理解し、できる限り長く続けるために細心の注意を払っているからに他なりません。


・人生の二面性の認識

 ダモクレスの剣は、人生の良い面と悪い面が常に共存していることも象徴していると言えます。繰り返しになりますが、この世の摂理は「等価交換」です。幸福や成功には必ず代償やリスクが伴い、逆に困難や苦難の中にも学びや成長の機会が必ずあります。注意して欲しいことは、どちらが良くてどちらが悪いと考えること。

 人生の一面だけを見て評価するのではなくて、良い時期の悪い自分、悪い時期の良い自分も加味して評価して下さい。そのどちらもあなた自身です。どちらか一方が良い悪いという二元論は捨て去って下さい。魔術師の概念は、どちらもあっての人間です。峻厳と慈悲の2本の柱が己を支える基本であり、その間に位置する中心の柱があなたなのですから

 あなたの体は神殿です。どちらかに偏っていたら、神殿は崩れてしまいます。あなたが2本の足で立つように、2本の柱をしっかりと。そうすれば自ずと梯子が見え、いつかは至聖所へ辿り着けます。



まとめ

 このように、ダモクレスの剣のお話は、表向きの戒めと魔術師向けの戒めが混在したお話です。特に重要なのは、言うまでもなく後者の柱の話。中心の柱をしっかりと保つことが、真の智慧を持つ者にとって最も重要な課題だからです。智慧を求める道は常にリスクに満ちていますが、その道を進むことで得られる内面的な成長と理解は計り知れません。

 最終的に、智慧を持つ者が目指すべきは内面的な平和です。これ字面ほど簡単ではありません。情報過多の現代において、外部の要因に左右されない安定した心を持つと言うことは並大抵のことではありません。しかしながら、内面的な平和を手に入れられれば、どのような困難や試練に直面しても揺らぐことのない自分を保つことができます。この強き心はこれから先の近い未来、とても大切になります。

 髪の毛で吊るされた剣が己の頭上にあろうと、その状況を受け入れ、平静を保ち、己のやるべきことをやる。

 まわり(外的要因)に左右され逃げ出したダモクレスにならないように。

 吊られた剣が落ちてきたら打ち返せるほどに、己の剣を磨いておきましょう。




"誰もが世界を変えようと考えるが、自分を変えようと考える人はいない"

Leo Tolstoy


昨日の私はとても賢く、世界を変えたいと思った。
今日、私は賢くなって、自分自身を変えようと思う。

Rumi


 外的要因に左右されない内面的な平和こそが、心の強さの源です

 メメント・モリの格言もお忘れなく。「自分が(いつか)必ず死ぬことを忘るな」。いずれ必ず死ぬのですから死を恐れずに。恐怖は人の心を凍てつかせるゆえに。



 智慧を求める道は険しくもありますが、その先には何ものにも変え難い心の強さが手に入ります。ダモクレスの剣が教えるように、智慧を持つことには多くのリスクが伴いますが、そのリスクを乗り越えた先にあるものが、真に価値あるものと言えましょう。

 「ダモクレスの剣」を手に入れたあなたが、次に手にする刃は「オッカムの剃刀」です。魔術師にとっては必須の刃。来週へ続きます。

 それでは本件はこれにて締めとさせていただきます。あなた様の心にわたくしのダモクレスの剣が届きましたなら、引き続きお付き合いをお願いいたします。



作品紹介


デジタルBook:『Decode of the Matrix』

デジタルBook:『ダヴィンチコードを乗り越えて』

本:『Divine Ratio Re:Decode』

本:『As above So below』

アパレル&小物:Cavalier Camp


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霜月やよい
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