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[ Decode : Art ] 聖マタイの召命

はじめに

 本件は久々の「Decode : Art」シリーズです!わたくしは昔から秘密がたくさん詰まった象徴画や古き絵画が大好きで、ましてや現代においてもまだ論争が続いている絵画なんてとっても惹かれちゃう。そんな絵画が今回ご紹介する「マタイの召命」。

 本件でご紹介する絵画は1599年から1600年にかけてカラヴァッジオが制作しました。それから400年以上も経ちますが、一つ謎が残されたまま。それは、この「マタイの召命」に描かれているマタイが誰なのか?です。「マタイの召命」と絵のタイトルに名前まで入っているのに、誰がマタイなのかはっきりしないのです。本件ではそれをバッチリ解き明かしちゃいます!では早速まいりましょう!Decode of art !!



聖マタイとは?

 聖マタイは、イエスの十二使徒の一人であり、元々はローマ帝国の徴税人として働いていました。ある日、イエスがマタイの務める税務署を訪れたとき、彼はイエスに声をかけられ、その言葉に心を動かされ、弟子となりました。
 マタイはイエスに付き従い、イエスの死後も活動を続た弟子の一人。彼は新約聖書の「マタイによる福音書」の著者としても有名です。彼の最後はエチオピアで宣教活動を行いましたが、その後、王の不信を買い暗殺者を差し向けられ、そのままエチオピアで殉教したとされています(これは諸説あります。次週に詳しく綴ります)。

 マタイの福音書はイエスの言葉や行動を記録した「イエスの伝記」とされ、福音書の中でも重要な位置を占めます。そのため、マタイは「ものを書く姿」で象徴されます。


四人

 正典となっている福音書は4つ。マタイの福音書、マルコの福音書、ルカの福音書、ヨハネの福音書。この四人は特別な象徴とも結びついております。幻視者の智天使を覚えておりますか?

 人間(天使)がマタイ、獅子がマルコ、牡牛がルカ、そして鷲がヨハネです。

 ヨハネは「イエスの奇跡を間近で見ていた」と表されます。これはヨハネの黙示録に顕著に現れており、寓意や比喩に溢れた書となっております。

 一方、マタイは「人間イエスの生涯」を綴ったとされています。つまり「現実的なイエス」を綴ったと言えます。またマタイの福音書は最初の福音書です。ゆえに、人間の顔が正面にあり、鷲は人間の対角に置かれ対になっておりますでしょ?四聖獣の序列を覚えておりますか?

四聖獣


マタイの召命

 そんな色々と特別なマタイがイエスに召命を受けた場面の絵画『マタイの召命』。Decodeポイントは、いつものパスは勿論だけど、現実的に描かれたイエスの奇跡ってのも重要。人間イエスの生涯を綴った福音史家マタイを描く訳ですから、カラヴァッジオは奇跡を現実的に描いたのです。結果、それがマタイを示す一因となっております。


9章9節

「さてイエスはそこから進んで行かれ、マタイという人が収税所にすわっているのを見て、「わたしに従ってきなさい」と言われた。すると彼は立ちあがって、イエスに従った」

マタイの福音書9章9節

 イエスから召命を受けたマタイはこの中にいるのですがどれでしょ?一般的に昔から言われているのが、中心の黒服に髭を蓄えたおっちゃん。「えっ?私ですか?」ってポーズをしているからとのことです。


Decode

 では解読しましょう!まずこの絵は9章9節のどの部分を描いているか?

「わたしに従ってきなさい」と言われた。

ここの場面

すると彼は立ちあがって、イエスに従った

 イエスに「従ってきなさい」と言われて「立ち上がる」までの間のシーン。ですからマタイは「え?私ですか?」なんてことはせず、言われてすぐに、まるで神託を受けたかのように二つ返事で立ち上がったと思います。ですから黒服に髭のおっちゃんじゃないんです。ただこれ以上の推測は意味をなしませんので、魔法を使って見えないものを見えるようにしちゃいましょう。そうすれば誰がマタイだか一発だから。


パス

 人は明るいところに視点が引っ張られます。この絵画ですと右上の「窓から差し込む光」の部分が最も明るく視点を引きつけます。その光が照らし出す壁の窓は黄金比で構成され、その螺旋は、この絵画の大切な部分へ視点を誘導します。螺旋に沿って視点を動かして行ってください。一人うつむき小銭を数える男がおりますでしょ?

彼が聖マタイです。

 イエスに指差され「私に従ってきなさい」と言われたマタイは顔をあげ、イエスの方を見ます。するとマタイは奇跡を目の当たりにし従いました。


奇跡

 自分がうつむき小銭を数えるマタイになった気で考えてくださいまし。「マタイの召命」では、右側のキリストの背後から強烈な光が差しています。その方向は、キリストの背後からマタイに向けて。キリストの召命を受け、俯いていた顔を上げたマタイには、上の画像のように後光がさしたかのように見えたことでしょう。これがカラヴァッジオが描いた「現実的な奇跡」だとわたくしは考えます。


まとめ

 いかがだったでしょうか?久々のDecode of Artは?ルネッサンスの絵画は古き神話や象徴と同様で、見る者の知識に応じて見えるものが変わります。せっかく美しい絵画を見るのですから、美しき魔法を見るのもまた一興。お楽しみ頂けましたなら幸いです。


 来週は本件の絵画の対となっている「マタイの殉教」のDecodeとなります。「マタイの召命」が生なら「マタイの殉教」は死。この絵画にかけられた魔法をDecodeします。

 ではでは本件はこれにて締めとさせて頂きます。あなた様の心にわたくしの燃える剣が刺さりましたなら引き続きお付き合いをお願いいたします。


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