青毛堀川沿いの河津桜
昨日は久しぶりに平日休みを取った。特に予定は無かったけど、有給消化をしないといけない。
有給消化をしないといけないってなんだろう。休みを「取らなきゃいけない」っておかしな話だ。みんなもっと後ろめたさなんかなく休めばいいのに。
うちの職場の人はみんな
「○月○日、お忙しい中すみませんがおやすみいただきます」
休み明けは
「昨日はおやすみしてすみませんでした」
なんて言う。おかしいなーと思ってぼくは
「おやすみいただきました、ありがとうございます」
って言うことにしてる。社会への小さな反抗…ではなくその方が気持ちよくない?と思って 。
脱線した。えーと、そう、昨日の話。
起きたら昼前で、洗濯と昼食を済ませると外は21℃、晴れ。最高の春だった。
どこかぶらつこうと思って、桜でも見に行こうかなーと思って、でもソメイヨシノにはまだ早いよなー、なんて。
河津桜がふと頭に浮かんだ。
ちょっとソメイヨシノより早く咲いて、色合いが濃い。派手でミーハーな桜って感じがして好きだった。前はよく伊豆まで見に行ったなあ。
さすがに伊豆は遠くて、もう少し近場で探すと埼玉によさそうな場所があった。Googleマップで写真を見ると川沿いに咲く河津桜が綺麗だった。
そんなこんなで2時間下道を走る。道中は快適だった。右手には土手沿いに沢山の菜の花がるんるんと咲いているし、すれ違うバイカー達もヘルメットの下に笑顔が見える。サイクリングや散歩を楽しむ人も多くて、道沿いの学校では子供達が元気に遊んでいる。半袖短パンはまだ寒くない…?
現地に着くと、平日の昼下がりにもかかわらず人が大勢(…ただの歩道にしては)いる。
でかい一眼レフをぶら下げた若い人も多い。スマホの普及でカメラ業界は淘汰されたと思ってたけど、SNSに凝った写真を上げるために購入するんだろうか。
少し葉の緑が混じった河津桜達はご機嫌で、春を迎えた喜びを全身で表現している。
ちょっと脇にバイクを停めて、かっこいい写真を撮ろうとする…けど若い女のモデルもどきとカメラマンもどき2人がずーーーっとぼくのバイクの後ろに入ってきてまともに写真が撮れない。他行け。
「あ、じゃあちょっとそこに座ってみてもらって〜」
座るな。
「ほんと肌綺麗だし髪もいいしかわいいよ!ほらなんのかんの…」
それ口説いてんのかモデルのモチベを上げてんのかどっちなんだ。とにかく邪魔だった。
うんざりして桜の写真を仕方なしに撮っていると、老夫婦から声をかけられた。
「あの、シャッター切ってもらえますか」
ぼくが首からカメラを下げていたから信用したのかもしれない。だって渡されたのはPENTAXの一眼レフだった。
無難に2枚くらい撮って渡す。
「確認してもらっていいですか」と言うと、
「いえ、いえ、大丈夫です。ありがとうございます。」と返された。
本当に大丈夫か…?一眼レフなんてもう5年は触ってない。
「ありがとう。ありがとうございます。初めて2人で撮りました。では…」
老夫婦がすごく嬉しそうに去っていった。残されたのはモデルもどき達、不安と役に立った謎の充実感を感じるぼく、いつまでも写真を撮って貰えないバイク。
らちがあかないので仕方無しに何枚かシャッターを切って、近くに神社があったのを思い出して移動する。
着くと、鷲宮神社だった。らきすたの聖地でオタクに人気…のはずが老人しかいない。
境内に入ると、その理由がわかった。本殿含め全面改装中だったのだ。おまけに平日。そりゃ人も減る。
テントの下に設置された臨時のお賽銭箱の前に来た。
ジャラジャラっ
と控えめに鈴を鳴らしてお祈り。
こっそりさっきの川沿いに戻った。
歩きながらだとバイクウェアは完全に暑さを感じる代物になっていた。ヒートテックが憎い。パーカーなんか着てくるんじゃなかった。
まだモデルもどき達は撮影を続けている。飽きないのかしら。
また、声をかけられた。今度は車椅子のおばあちゃんとその親戚らしきおばちゃん。
「すみません、歩きを止めてしまって…」
いいんです。ぼくはいまフリーのカメラマン。
「マスクどうされます?外してお撮りしますか?」
カメラマンっぽくセリフを言うと
「あら恥ずかしいわ〜おばあさんなのに〜!」
と言いつつ素敵な笑顔を見せてくれた。
暗い写真になったけどきっと孫がうまく調整してくれるでしょう。今のスマホはすごいんですよ。
川沿いを歩き続ける。といっても長さはそんなにない。せいぜい500mくらいだろうか。
ぼくと同じくバイクの写真を撮るのに必死な女性がいた。
ちょっとエンジンをかけて移動しては自撮りも踏まえて写真を撮り、また移動…を500m繰り返している。大型のZRXだった。大変そう…
地元の防犯ベストを着たおじさんに話しかけられた。鷲宮神社の歴史を聞いて、ちょっと世間話をした。
神楽ってのが本当はあるらしい。改修が終わったらまた来てみます、なんて話をした。
次の依頼は走り回る子供を5人連れたママ友さん2人だった。自撮りをしようとするも子供が暴れて大変そうで、ちらっと見たら懇願されるような目で見られて、
「お撮りしますか?」
と言ったらすごく喜んでくれた。
ところが加工アプリ?で普通にシャッターが切れない。切っても修正を待ってわざわざ保存しないといけなかった。でも何とかカメラマンとしての仕事を終えて、帰ることにした。
神社の前に戻ると甘味処があって、ふとアイスクリームを食べたくなった。
けど閉店前なのに営業してなくて、結局帰り道に道の駅を二件ハシゴするも営業が終わってて、アイスケースに入ったソフトクリームもどきを買ってみた。
美味しい。今年初アイスかもしれない。
暖かくなると、色々なことがしたくなる。
長く寒い冬が、終わっていく。
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