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「人には人の地獄がある」

「人には人の地獄がある」という言葉が好きだ。

どれだけ理解しようと努力しても、結局その人の地獄は私には完全に理解しきれない。
同じように私の地獄も私以外の人には分からないだろう。冷たい言い方になるが、さも分かったかのように言われたくない。30年と半年分の私の地獄は、絶対に私にしか分からない。
私の地獄と他者の地獄は比較できない。私には私の痛みや苦しみがあったし、その人にはその人なりの苦しみや悲しみがあったから。他人の人生を丸ごと受け止めることはできないし、受け止めたいと思っていてもそれはある種のエゴであるとも思う。

誰かの助けになりたいとずっと思って生きてきた。でもそれは独善的な思考だったのかもしれない。「こんな自分でも誰かの支えになれたら」という淡い、淡すぎる期待。自分の人生も生きられないのに、他人の人生にまで口を出すべきではなかった。たとえ頼まれたとしても。溺れる者は溺れる者を助けられないのだから。ぶくぶくと溺れている私が「誰かを助けたい」「支えたい」なんて最初から無謀だったんだと思う。そのまま溺れて、時間が経って上を見上げると、海の底に沈んでいたのは私だけだった。

病気の再燃はその罰だ。私が全て悪かった。病気が再燃したことで、大切な人たちを傷つけて苦しめている。この年になっても自分の人生をきちんと生きられていない未熟さ。ちょっとした何気ない言葉で深くえぐられてしまう脆すぎる心。思うように眠ったり、笑ったり、泣いたりできない身体。自分のしっぽを追いかける犬のように、同じところをぐるぐる回り続ける思考。全部私が悪いから。

だからもう誰も近づかないで。放っておいて。病気のことであれこれ言わないで。私が全て悪いから、私の地獄に分かったような顔をして土足で踏みこんでこないで。それならいっそのこと殺して。人には人の地獄がある。

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