見出し画像

オランダはなぜサステナビリティ先進国と呼ばれるのか?【第四弾 地理から読み解く】

 第三弾までの記事では、オランダが早くから環境法の整備を行ってきたこと、産業と連関して制度化してきたこと、気候変動サミットに向けたヨーロッパ内でのイニシアチブなど、制度的な観点でオランダの環境問題に対する取り組みが歴史的に進んでいたことを紹介しました。

ただ、根本的になぜオランダがここまで率先して環境問題に取り組むモチベーションがあったのかという問いに対しては、地理的な条件も大きな要因の一つであると考えられます。

国土面積の4分の1が海面下のオランダ

 オランダの国土は干拓によって国土を拡大してきたため、海抜が低い。オランダの国土表面積の26%が海面下にある。もし堤防がなかったら、国土の65%が水に覆われる。海抜ゼロメートル地帯がオランダの首都であるアムステルダムや、第二の都市のロッテルダムでさえも海抜より低い位置にある

国土の4分の1は海面より下で、最も低いところは−6.76メートルと、温暖化により水面が上昇したら真っ先に被害を浴びてしまう 。

温暖化は死活問題

オランダにとって、温暖化による海水位の上昇はまさに死活問題であり、火急の関心ごとなのである。年間平均気温が上がると、海面が上昇する。

同時にアルプスの融雪が進むとライン川、マース川などの流量が増える。政府のシミュレーションでは、気温が1度上昇すると海面水位は20センチ上昇し、ライン川の流量は毎秒1万6800平方メートル増加する。

2度上昇すると海面水位は60センチ上昇し、ライン川流量は毎秒1万7600平方メートル増加する。4〜6度上昇すると110センチ、毎秒1万8000平方メートル増加となるという。  

自らの移住環境をコントロールしなければ生きていくことができない

このように、温暖化による影響は自らの生活に襲いかかる海からの「脅威」なのである。つまり、自らの居住環境をコントロールしなければいきていくことができない、という状況がオランダ人の環境問題に対する危機意識を自然に醸成してきたのだ 。

いいなと思ったら応援しよう!