私が絵を描く理由1
「#絵を描く理由はなんですか見た人も答えるんだ」
ハッシュタグを見たので答えることにした。
「絵を描く理由」
私は即答はできない。
その理由は私がそもそも絵を描くことがひどく好きというわけではないと自覚するためである。それゆえに私は大学入学後の二年間、全く絵を描く上でただ高尚なものを目指すことしかできなかったし、周囲の友人たちが楽しそうに作品を生み出していけることが理解出来なかった。
答えを探すために、私はここから究明をはじめる。もしかしたら私の絵を描く理由はただの承認欲求のためかもしれないし、安直な未来思考のためかもしれない。いずれにしても考察を深めねば答えは出そうにない。
まずは私のこれまでの絵に対する考えから振り返りたい。少し長くなりそうなので、テキストをいくつかに分割しようと思う。
[私が絵を描く理由]
「承認欲求より」
私が絵を描く理由の一つは、私が自己愛と承認欲求の強さ故に自己の露出を望むためであるが、しかしそれは理由の全てではない。仮に能力の誇示による社会的優位性の獲得と承認欲求のみが目的であるなら、私はただ写実絵画を描いて「すごいね!」と言ってもらえばそれで満足できるだろう。
だが実際の私は写実絵画について、技術的凄みや作品の品格は理解できる故、写真と同一視はしない反面、それが無個性的であればあるほど単なる職人芸としてしか見えず、感心できない。つまり私は写実を否定したいのではないが単に職人的になることは望まない。これはなぜなのか。
それは私が個性の喪失を嫌悪するためであろう。職人芸というのは、継承され与えられた技術を極めていく作業である。それは世界の物質の組み換えという点では芸術と何ら変わりないが、しかしその実相は他者の創作物の反復であって、それは献立に忠実な上等な料理である。
私は優秀な職人を望まない。私は私の絵が強い個を持ち、同時にそれが高みに位置することを望む。それはつまり強い個の承認を望むということだろうか。私は結局、ただ単に承認欲求のために描いているのだろうか。
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