ウーバーイーツを注文するとき

ウーバーイーツを注文するとき、ウーバーイーツもまた注文しているのだ。

日曜の昼は、ウーバーイーツで少し遠い場所にある弁当屋の唐揚げ弁当を頼むと決めている。毎週同じ時間帯に頼むだからか、毎週ほぼほぼ同じドライバーが届けに来てくれる。40代ぐらいのおじさん。

ウーバーイーツを頼む際の習慣がある。
箱買いしているペットボトルのお茶をビニール袋に入れてドアノブにかけておくのだ。「ドライバーさん、よければどうぞ」というメモを添えて。ドライバーは「いただきます。ありがとうございます。」というチャットを私に返してやりとりを毎回終える。
高度に自動化された情報社会の中でコミニュケーションは簡略化されがちだ。このコンクリートみたいに無機でとっかかりもない社会の中で、500mlのお茶が身体だけでない潤いを与えられるように。

今日は雨だ。あのドライバーさんは、今日も働いているだろうか。アプリを立ち上げる。
いつもの弁当屋さんで弁当を注文する。から揚げ弁当。しばらく別の作業していると通知が来る。配達員が品をピックアップしたらしい。あのドライバーだ。
ドアノブにかけるためのお茶を取り出そうと冷蔵庫を見る。ない。気付かないうちにAmazonの定期注文の間隙へ落ちてしまっていたらしい。どうしたものか。冷蔵庫を見渡す。視界に飛び込んできたのは、同じく定期注文しているペットボトルコーヒー。しかしこれも残りひとつ。わたしはこのコーヒーを食後の読書のお供にしている。
迷いとためらいが頭を支配する。初志貫徹という文字が頭をよぎり私は心を決めた。ドアノブにコーヒーの入ったビニール袋をかけたのだった。

到着の通知が来る。玄関を開けて置いてある弁当を回収してから、ドライバーからのチャットを確認する。

「今日はコーヒーなんすね。笑 実はあんまりコーヒー好きじゃないっす。笑 次はお茶でお願いしまーす!笑笑」

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