「私は人種差別を受けたことがある、あの国が嫌いになった」 と言われたら、何を伝えるだろうか?
以前カナダに住んでいた時、どうやら初めての、人種差別、というものを体験した。
最初、自分が人種差別を受けている、と気づかなかった。
でも、後から、ジワジワと、
死ぬまでに忘れないぐらい、イヤな感情を感じた。
あの感情は、受けた人しか、分からないだろう。
仲間とオンラインのイベントを企画した。
「留学や、海外に出ることの心のハードルを下げてもらう」が狙いだった。
海外に住んでいた人、海外で働いていた人に、私がインタビューをする形式で、事前にスピーカーに聞いてみたい質問を募集した。
たくさん来た質問の中に、正直どうしようか、と戸惑うものがあった。
この子は、短期留学をした時に、人種差別を受けた、という。
『近くを通ると、「オエー」って言われたり、
出ていけ!って言われた。
楽しかった思い出が、全部真っ黒になるほどの嫌な思いをした。
人種差別には、どう対処すればよかったんでしょうか。』
ああ、どうしよう、と正直思った。
この質問は、取り上げないほうがいいだろうか。ちょっと考えた。
でも、仲間と話し合い、ちゃんと真摯に向き合おう、と
いうことに決める。
「とっても大変な思いをしましたね。
イヤな思いをしたんですね。でもそれはあなたのせいではありません。
無視してください。
残念ながら、どこの国行っても、そういう人はいます」
私を含めて、スピーカー4人、全員、人種差別を経験したことがあった。
私も、カナダに居た時に遭遇した、自分の経験を思い出していた。
本当に、腹が立つし、居たたまれない憤りがある。思い出すだけでもムカムカしてくる。
でも、こんなイヤな経験をしたからこそ、
「自分は絶対にやらない」と決めることができた。
人に優しくなったんじゃないだろうか。
海外に行くと、いろんな経験をする。
人種差別も、確かにある。
でも、それ以上に、本当に、いろんな人に助けてもらって、
親切にしてもらって、今がある私たち。
だからこそ、外国の人に優しくしよう。
困っていたら、助けよう。
私が前にしてもらったように。
「コンビニで働いている、海外から来ている店員さんに
優しくしちゃう人は?」
「駅で外国人が困ってたら、助ける人は?」
4人が全員手を挙げた。
全員が思っていたこと、だった。
コンビニで働いている、アジアから来たであろう店員さんに、イライラしている日本人を見かけたことがる人がいた。
おでんの「つゆだく」は、外国人には分からないのだから、ちゃんと彼らが分かるように伝えればいいのだ。
あの質問をくれた子に、思いは届いただろうか。
ドキドキしていた。
後から、長めの文章で回答がきた。この子は、
「(人種差別された時に)言い返せないのは、自分が弱いから?
と思っていた」そうだ。
でも、それが違うことが分かったし、
(日本に不慣れな外国人に)優しくなれることが分かった。
悲しかった経験をプラスにとらえることができた、と書いてくれた。
私の友達で、海外で暮らしていた人、留学をしていた人で、
人種差別を経験していない人は、見当たらない。
私の友人で、USAに住んでいた子が受けた人種差別は、もっとひどかった。
映画「グリーンブック」の60年代の黒人に対する差別も悲惨だった。
最近読んだ「ぼくはイエローでホワイト、ちょっとブルー」でも
東洋人に対する人種差別を経験した息子の様子が描かれている。
残念ながら、どこの国でも人種差別は、ある。
でも「差別する人は、無知な人である」ことが分かる。
そして、そんな無知であるしかない環境であることも、不幸だと思う。貧困に起因することも多い。
人種差別を受けたことでずっとモヤモヤしていた子に対して、
それを大人の私たちが真摯に受け止め、
だからこそ、人に優しくなれることを少しでも伝えることができて、
良かった。
この重い話題から逃げずに、向き合ってよかったと思う。
少なくとも、この子は、自分の経験を違う見方ができたはず、だ。
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