フィンテック×エドテックでアフリカ草の根労働者を救うーシエラレオネ・Mosabiの挑戦 #起業家シリーズレポート
こんにちは!インターンの後藤です。
2022年4月23日(土)に、今年3回目となるARUN起業家シリーズをオンライン開催しました。
今回は、エドテック×フィンテックによりアフリカ零細事業者の金融アクセス向上に貢献するMosabi(モサビ)より、Chris Czerwonka(クリス・チェルウォンカ)CEOをお招きしました。
さて、本記事では今回の起業家シリーズに関するイベントレポートをお届けします。
「そもそも起業家シリーズって何?」
「どんな内容のイベントだったの?」
「アフリカ零細事業者の現状って?」
など、このレポートを読んだ方に、起業家シリーズ、そして途上国で活躍する社会起業家に関心をもっていただければ幸いです。
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ARUN起業家シリーズとは?
認定NPO法人ARUN Seedによる、途上国の社会起業家を紹介するイベントです。
本イベントでは毎回起業家を招き、起業に至った経緯や、これまでの取り組み、今後の展望などを語っていただいています。
また、ご参加の皆さまからの疑問・質問をもとに、起業家と議論を深める場も設けています。
ご参加いただいた方には、社会起業家の想いやその取り組みを知っていただき、彼らを支援する社会的投資や、ARUNの活動に参画いただきたいと思っています。
こんな方におすすめ!
• 途上国✖ビジネスの現場の声を聴きたい
• 将来はソーシャルビジネスや起業をしたい
• 途上国支援に関わる人とつながりたい
• ESG投資やインパクト投資に興味がある
など、少しでもピンときた方におすすめです。
今回のイベント概要
【名称】認定NPO法人ARUN Seed 起業家シリーズ
「アフリカ14億人市場、草の根MBAでビジネススキルをレベルアップ」
【日時】2022年4月23日(土) 17:00~19:00
【実施媒体】Zoom
【参加者】20名
金融にアクセスできないアフリカのインフォーマルセクターは数億人に
ーーイベント前半部では、クリスCEOよりモサビの事業概要をプレゼンしていただきました。
クリス 世界には銀行に口座を持っていない人や十分な金融サービスを享受できない人が数十億人います。そのうち数億人がサハラ以南のアフリカにいると言われています。
彼らのほとんどはインフォーマルセクター(公式統計に含まれない経済活動)に従事しています。アフリカのGDPのおよそ9割はインフォーマルセクターから生まれているにも関わらず、働き手の多くは金融にアクセスできず最低限の所得しか得られない状況にあるのです。
課題は労働者の信用力不足に
クリス なぜインフォーマルセクターで働く草の根労働者たちは金融サービスを受けられないのでしょうか。
それは彼らに正規の教育や金融リテラシーが不足しており、金融機関からの信用を得られないからです。また彼らを適正に評価する仕組みを持たない金融機関側にも問題があります。
革新的な学習を通じ、経済成長の可能性を切り開く
クリス 私たちはアフリカ経済の生命線である草の根労働者を支援するために、モサビを設立しました。モサビは西アフリカ・シエラレオネを拠点とする社会的企業です。
私たちはフィンテックとエドテックを組み合わせた学習プラットフォームを展開し、アフリカの草の根労働者の金融アクセス向上を支援しています。
仕組みは簡単です。
ユーザー(労働者)はモバイル学習アプリを通じて経営や金融に関する知識を身につけます。ユーザーの理解度はクイズによって数値化し、独自のアルゴリズムを用いて信用スコアを生成します。金融機関はこの信用スコアを活用することでユーザーを評価し融資を実行できます。私たちのモットーである「革新的な学習を通じ、経済成長の可能性を切り開く」ことができるのです。
これまでも様々な国際組織がアフリカのインフォーマルセクター向けの能力開発をおこなってきました。しかしそれらは金融機関と連携しておらず、学習をビジネスにつなげる仕組みが欠けていました。
私たちは金融機関とパートナーシップを組み、最終受益者を労働者に据えたBtoBtoCのビジネスモデルを展開しています。パートナーはサブスクリプション料金を支払うことで労働者の信用データを分析し適切な金融商品を提案できる一方、労働者は無料で学習アプリを利用することで実践的なスキルを身につけられる仕組みを構築することで、信用力の高い労働者を着実に金融サービスに繋げられるのです。
参加者も積極的に意見交換
ーークリスCEOのプレゼン後に行われたブレイクアウトセッションでは、二つのグループに分かれ、参加者の皆さまどうしで意見交換していただきました。
話が尽きないあっという間の10分間でした!
多彩なカリキュラムで効果的な学習を
ーーイベント後半には、クリスCEOとARUN代表功能のトークセッションが行われました。また同社Creative DirectorのVerity氏にも参加いただきました。
功能 皆さま、ブレイクアウトセッションお疲れ様でした!鋭い疑問・質問をたくさんお寄せいただき、ありがとうございました。クリスCEOに訊いていきたいと思います。
モサビの学習プラットフォームには、どのようなカリキュラムがあるのでしょうか。
クリス 利子と借入の理解、貯蓄の仕方など初歩的なプログラムはもちろん、アントレプレナーシップ、金融リテラシー、デジタルリテラシー、データプライバシーなども用意しています。
ゲーミフィケーション(ゲーム要素を加えた学習方法)を導入することで、ユーザーは楽しみながらスキルや知識を身につけることができます。英語だけでなく、現地の言語にも対応しています。
またユーザーの理解度やビジネス状況に応じて、学ぶべき時に適切なカリキュラムが提供されるシステムも構築しています。
功能 なるほど。多彩なカリキュラムを効果的に提供しているのですね。
クリス その通りです。数日で修了するものもあれば、オフラインでの学習を併用しより深く学べるカリキュラムも揃えるなど様々なユーザーの進捗に対応できます。
ユーザー・ジャーニーから信用スコアを計測
功能 信用スコアの測定の仕方を詳しく教えて下さい。
クリス 学習プラットフォームから得られるユーザーの行動データ(ユーザー・ジャーニー)を活用しています。
すなわち、ユーザーの学習状況(学習時間、受講カリキュラム、理解度)や経歴(どのような事業をどれくらいの期間おこなってきたか)、スキルを学んだことで得られた成果(学習内容をどのようにビジネスに活用し収益が向上したか)を私たちのプラットフォームで可視化するのです。
こうしたユーザーのデータに独自のアルゴリズムを適用することで、信用スコアを算出したり適切な金融商品を提供することが可能になります。
世界中のインフォーマルセクターに金融アクセスを
功能 最後に、今後の展望について訊きたいと思います。これからモサビが目指すものは何でしょうか?
クリス 私たちはこれまで、東西アフリカの7ヶ国で4.5万人以上のユーザーと20のパートナーにサービスを提供してきました。その成果として70%のユーザーは所得が向上し、債務不履行率は25%減少し、金融取引頻度・金額は倍増するなど多くの社会的インパクトを生んできました。
私たちが取り組む金融包摂の課題は、アフリカだけでなく南アジアや南米諸国にも当てはまります。
今後は事業を拡大し、2024年には世界30ヶ国、300万人のユーザーにサービスを届けたいと考えています。また、コロナ禍で世界で増加したギグワーカー(単発の仕事を請け負う労働者)に対してもサービスを提供する予定です。
ーークリスCEO、そしてイベントにご参加いただいた皆さま、誠にありがとうございました!
登壇者プロフィール
Chris Czerwonka(クリス・チェルウォンカ)
CEO兼共同創業者 - モサビ
新興国における草の根起業家を対象にした、ビジネス・金融のスキルアップを実現するためのAIプラットフォーム、モサビのCEO兼共同創業者。モサビのゲーミフィケーションを活用したレッスンやユニークな物語を通し、ユーザーは社会人としての心構え、インフォーマル・スモールビジネスの管理、お金やデジタルリソースに関する知識を学ぶことができる。また、ユーザーが財務状態を改善するにつれ、必要に応じてパートナーである金融業者やプラットフォームとのマッチングを行っている。
クリスはサハラ以南のアフリカで10年間、金融包摂、フィンテック、小規模事業者の能力開発に携わる経験を持つ。銀行、政府、開発機関、世界銀行などの関係者に対して、デジタル金融サービス、顧客体験、経済的エンパワーメント、金融の健全性に関するコンサルティングを実施。Financial Inclusion Forum AfricaおよびAccion's Fintech Protectsワーキンググループの運営委員を務める。
参加者のご感想
ーーイベント終了後、ご参加の皆さまから感想をいただきました。
とても勉強になるイベントだった。
登壇者の講演内容が大変良かったです。小グループでの議論を進めましたが進行役の方が上手くリードしてくださり、またグループでの議論内容についても的確にまとめていただき非常に良かったです。
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次回起業家シリーズ
ARUN起業家シリーズは、今後も定期的に開催の予定です!