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「できない男」


以前、病院で働いていたとき
40歳の男性看護師が病棟にいました。

彼はいわゆる「できない男」

患者さまが急変したり
医師に何か指示を言われると
頭が真っ白になってしまい
部屋持ちさえできず、


お風呂介助や、食事介助
汚物の処理などを
毎日、担当していました。

契約は正社員ではなく、パート。

医療の現場は
とっさの判断ができない人や
メンタル面で弱い人に
とても厳しい…(*´・ω・)
仕方ないのだけれど……


激務の中、ふと見ると
彼が汗を流しながら
汚物の処理を一人でしていました。

次の日も、次の日も。


他の看護師に頼まれたことは
どんなことでも引き受け
何一つ愚痴も言わない彼は、

いつのまにか、
できない男から
頼もしい男、になっていました。


みんなが嫌がる汚物の処理も

「俺に任せてくださいよ!」

無邪気な顔で笑う彼のことを
私は、
本当はすごい人なんじゃないかと
思って見ていました。


彼が病棟7年目になったとき
上司にお願いしてみました。

「彼を正社員にしてあげたいんです。」


そのころ病棟は退職者が続き
かなりの看護師不足だったため

「彼に教えてる暇なんてないよ!」

そんな意見が飛び交いました。

でも私も、かなりの頑固者でしたので、
一歩も引きませんでした(笑)

彼は、絶対にできると信じていました。

時間はかかりましたが
なんとか部屋持ちも出来るようになり
ついに夜勤に入る時が来ました。

夜勤は看護師二人と、助手一人で
50人の患者さまを見ます。
その中には人工呼吸器が付いているような
重症患者さまもおり
急変も多くありました。

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彼は言いました。

「自信がないです。僕は病気で、
精神科に通院しているようなやつです。
もし、夜勤中にパニックになったら、
みんなに迷惑をかけてしまう……」

彼は分かっていました。

みんなが、彼と組むのを嫌がって
いることを。



私は、彼を病気だと思ったことは
一度もありませんでした。

心の病気って、とても難しいと思います。
外からは見えない、
確かに在る、苦しみ。

でも、もし心の病気っていう言葉が
存在しなかったら

それは病気ではなく、
個性かなって思ったんです。

仕事は出来るけど
患者さまと話すのが苦手な看護師もいる。
仕事はゆっくりだけど
患者さまの些細な変化に気づける人もいる。

みんな違う個性が集まって
補い合っているんですよね。

決して完璧な人間はいない。


そのころ私は、病院を辞めることが
すでに決まっていたので

彼が、夜勤が出来るように指導すること。
それが
私の病棟での最後の仕事になりました。

2ヶ月間。

まだ合格点!とは言い難い感じでは
ありましたが、

彼は見事、夜勤が出来るようになり
晴れて正社員になることができたんです。
.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.⭐

そして
私の最後の勤務の日。

彼は私に言いました。

「あなたの助けがあったから頑張れました。
いつか、この病院に戻ってきて、
また一緒に働けたら……、

今度は僕が、あなたを助けたいです!!」


彼はちょっぴり泣いていました。。゚(゚´Д`゚)゚。

なんだか愛が生まれそうな
感動のシチュエーションでしたが、(@_@;)…
愛は生まれませんでした(笑)

でも、彼のことは
私も忘れられない存在です。

ときどき、
風の便りで
彼が大活躍していることを耳にします。



できない男だった彼は
今ではすっかり、
デキル男‼️みたいです‼️(笑)

読んでくださってありがとうございました(*^^*)‼️

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アルなか🎵潜在意識の扉を開く「心のとびら」
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