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トレイルランニング×キネシオロジー(身体運動学)
現代には様々なメソッドや体験談が溢れかえっていますが、それらが本当に正しいのかを学術的に考え、皆さまが改めて自身のトレーニングやレースプランを組み立ていくヒントになればと思います。
うわべだけのメソッドに騙されないように一緒に学んでいきましょう!
初回の今回は走動作において身体運動学の観点から、身体で何が起こっているかを掘り下げていこうと思います。
ランニングのメカニクス
運動学(kinematics)
一般に運動の種類は➀並進運動と②回転運動がありますが、ランニングに関しては股関節や肩関節、距腿関節などが回転することによって並進運動が生まれます。
ランニングは脚や腕が曲がったり伸びたりすることで力を発揮しているよう見た目上見えてしまいますが、実際には身体の内部を見てみると股関節や肩関節、距腿関節などが上手く”回転”することで推進力を生むことが出来ています。
イメージが付きづらいかと思いますがただ曲げ伸ばししているだけだと関節面にはストレス(摩擦やずれ,詰まりなど)が生まれてしまいます。
車をイメージしてもらうと分かりやすいかと思いますが、タイヤがスムーズに回転するからこそ車体は並進運動を行うことが出来ます。
ランニングのパフォーマンスアップのためには運動学の観点からは、いかに関節の回転運動を適切に行えるかが鍵となっていくでしょう。
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関節運動学(arthrokinematics)
関節面=関節と関節が接している面には3つの運動が起こっています。
➀転がり(roll)
②滑り(slide)
③軸回転(spin)
主に屈曲伸展、外転内転動作では、「転がり-滑り」が起こり、回旋動作では「軸回旋」が起きています。
これらは上手くいっていないと、関節にはずれるようなストレスがかかってしまい、脱臼やインピンジメント(骨同士の衝突や筋肉の挟み込み)が起き、可動域制限や痛みを生んでしまいます。
股関節・肩関節・距腿関節が回転運動時に、どちらの方向に骨が滑る必要があるか、を理解できていることが非常に重要となります。
トレイルランナーの皆さまで腕や脚の上げづらさやつまり感を感じている方はもしかしたらこの関節運動が上手くいっていない可能性があります。
改善方法としては、徒手療法だと関節モビライゼーション、運動療法だとピラティスなどがありますが、私自身は運動療法で調整することがほとんどです。
自身の経験として、ピラティスで関節正しい動作学習を行うことで股関節や肩の動きが油を刺したようにスムーズになることを実感し、関節痛も無くなりランニングのパフォーマンスも向上しています。
正しい関節運動を学習するためにピラティス以上に素晴らしいメソッドは現時点ではないと感じています。
ぜひ皆さまも試してみてください!
運動力学(kinetics)
前述したように関節の回転運動=トルクによって推進力を得てランニングを行うことができます。
※トルク=「力」×「モーメントアームの長さ」
そこで重要となってくるのが「てこ」(生体力学的てこ)。
てこは第1種てこ~第3種てこまでありますが、運動の多くは第3種てこが使われていると言われています。
詳しくは以下を参考にしてみてください。
第3のてこにおいて、トレイルランナーが身体にかかる負担を減らしたいと考えた場合(=力点を減らしたい)いかに荷重点を少なくできるかが鍵となります。
つまり大雑把に言うと、身体の中心に近い部位ほど重く、身体から遠くなる部位ほど軽くすれば第3のてこを有利に使うことが出来ます。
私が以前参加したトレーニング科学学会で、「体力テストの結果」と「体型」の相関関係を見た研究を拝見しましたが、簡単に結果をお伝えすると、”体力テストの結果が良い人は身体の末端にかけて細い人が多い”という結果が出ていました。
(=すんどう体型の人は運動能力が低い)
このことからもやはり身体の末端は力まずに、中心部分がしっかりと使えているかが、運動パフォーマンスを決める大きな要素になってくるかと考えられます。
一方で通常この第3のてこを鍛えるために用いられているのが「ウエイトトレーニング」になります。
ウエイトトレーニングは第3のてこを利用して末端に強い負荷(重さ)かけることで筋肉を効率よく強化していく方法です。
私自身ウエイトトレーニングにも取り組んでおり絶対にやるべきトレーニングだと考えていますが、ひとつ弊害があると感じています。
前述したように運動パフォーマンスは身体の中心をメイン使い、末端にかけて力まないように動けることが重要だとお話ししましたが、ウエイトトレーニングでは身体から離れたとこで重りを持つことが多いため、身体の末端部分への意識が強くなりすぎて力みを生んでしまう身体の使い方を習得してしまう可能性もあります。
これは完全に個人の身体感覚に依存しますが、とにかく重たいものを一生懸命に持つ意識だけでウエイトトレーニングを行ってしまうと末端を力ませる運動パターンを学習してしまい、自体重での運動に戻った際にもその運動パターンが出現してしまう原因にもなってしまうかと思います。
(ただし末端部に関しては"感覚"や"操作性"は大切)
この弊害を無くす対策は2点。
➀ウエイトトレーニングでは末端(首肩、腕、膝下)を力みすぎない意識をし、その状態で最大限持てる重さで行う
②ピラティスでコアを中心に身体を動かす動作学習を行う
これが出来ればランナーにとって最大限ウエイトトレーニングがランニング動作に活かせるトレーニングになると考えています。
またこの身体感覚、身体の使い方は実際の走る動作としても重要だと考えています。
”末端(首肩、腕、膝下)の力はできるだけ抜く”
これまで述べてきた身体運動学をベースに走動作を考察すると、これが出来れば効率の良い走りができるはずです。
ぜひ皆さまも試してみてください!!
参考図書[エッセンシャルキネシオロジー 機能的運動学の基礎と臨床]