香港のスタートアップでみた景色
どうもこんにちは。
Arumon のおかでぃーこと、岡田です。
私は2018年の8月から2020年の3月まで、出向という形で香港のスタートアップでエンジニアをやっていました。
今回は、その時の経験をご紹介させていただきます。
香港ってどんなところ?
香港は、中華人民共和国特別行政区として、広東省(有名な地名でいうと深圳)の南部に位置する都市です。
同じ特別行政区としては澳門(マカオ)があります。
香港は、香港島、九龍半島、新界(ニューテリトリー)と、周囲の島々を含む東京23区の約2倍の面積を持つ行政区です。
日本人も2.5万人ほど住んでおり、日本からも3.5~4.5時間ほどで行けるため、かなり便利な立地にあると思えます。
公用語は広東語(香港語)と英語で、イギリス領だった時代の名残が伺えます。英語が通じるため、世界各地からの労働移住者が多数います。
街を見ていても、日本人や韓国人、欧米人、東南アジア、インド系の人など、本当に色々な国の人と出会える環境です。
消費税がないので、買い物天国としても知られています。
レストランはチップ文化ではなく、最初からサービス料が10%含まれているケースが多いです。
ローカルのお店だとサービス料はなかったりしますが、観光客には少しハードルが高いかもしれません。(英語が通じないし、日本ほど接客が良くない)
私はそんな香港の中環(セントラル)という金融街の近くで働いていました。
仕事の仲間たちと職場環境
職場はスタートアップ企業だったので、他の日本人駐在員のような大きなオフィスではありません。
あるビルの1フロアが私の職場でした。
全員で40~50名ほどの職場ですが、証券会社だったのでカスタマーサービス(CS)と呼ばれる、オペレーター・顧客サポートをするチームがかなりの割合を占めています。
私の所属した DEV チームは、CTO が1名、UX/UI エンジニアが1名、エンジニアが6名のチームです。
国籍もバラバラで、イギリス人、フランス人、ポルトガル人、スウェーデン人、香港人、中国人、日本人(私)で構成された環境です。
途中、メンバーの入れ替わり(CTO やリードエンジニアが転職)もあり、大企業の環境との違いを感じました。
開発環境と技術スタック
開発支援ツール
・社内のコミュニケーションツール:Slack
・エンジニアチームのタスク管理:JIRA
・ソースコード管理:GitHub
・CI/CD:GitHub Actions と TravisCI
・エディタ:VSCode (チームで統一)
→ ワークスペースの設定を合わせてメンバー間の差異を極力減らす
コーディング支援ツール
・ソースコード整形:prettier
・コードチェッカー:eslint (tslint が廃止となることから移行)
→ チーム内のコーディングルールを機械的に統一
技術スタック
フロントエンド:React Native + TypeScript(Ionic + Cordova から移行)
バックエンド:Node.js + TypeScript(C# から移行)
ミドルレイヤー:GraphQL
特に GraphQL については、 Facebook の推奨するアーキテクチャを踏襲し、自分たちの形に落とし込んで使っていたのが印象的です。
クラウドリソース
・AWS
・Firebase
・Alibaba cloud
上記に記載した以外にも、いくつかの SaaS を利用してサービスを展開していました。
印象として、メンバーの技術キャッチアップ力が非常に高く、モダンな開発手法をうまく使いこなしている、ということです。
メンバー全員(私を除く😅)が英語が達者なため、カンファレンスの動画やフレームワークのブログをチェックして、積極的に自分たちのサービスに取り入れるという活動をおこなっています。
技術的には、多少なりと個々人の能力差はあります。
ですが、チームとして強くなれるように取り組みが行われていました。
タスクのアサインは強制的ではなく、手の空いた人が自発的にタスクを引き受けます。
自分があまり経験したことがない領域のタスクを引き受けたいと言うと、非常に快く受け入れられます。
おかげで私自身も、技術的にだいぶ成長できたと感じます。
そして、メンバー間には上下関係は存在せず、フラットな関係です。
途中でメンバーが入れ替わり、ジュニアレベルのエンジニアを採用したときも関係は対等です。
そのため、自分の意見が非常に言いやすいです。
チームメンバーに恵まれ、扱う技術や環境も学びが多く、本当に働いていて楽しく、また働きやすい環境でした。
スタートアップの泥臭さ
出向してきたゲストではなくメンバーの一員として認めてもらえたことで、現地採用の社員と同じように働けたと感じます。
そのため、スタートアップ特有の、外には見えない部分での泥臭さも多く経験しました。
細かい内容は語れませんが、大企業が羨望するスタートアップのキラキラとした部分は、その裏にある泥臭い活動に支えられている、ということを肌身で感じました。
大企業にいながらこのような経験ができたことは、本当に幸運だと思います。
大企業とスタートアップを経験して
大企業とスタートアップの両方の世界を見て、考えさせられることが多くあります。
大企業には、今を稼ぐためのビジネススキームやソリューションがあり、安定的に収益を上げています。
マラソンランナーのように、走り続ける体力があります。
一方で、スタートアップにはコアな(尖った)ソリューションがあり、その領域でなんとか収益を見出そうというパワーがあります。
スプリンターのように、瞬発力・爆発力があります。
両者は同じ陸上選手のように見えて、性質は全然違います。
特に大企業側が、スタートアップのような新規ビジネスを生み出したいと考える場合に、社内の制度をそのままにやろうとする例を見かけます。
これは、「マラソンランナーでありながら、ウサイン・ボルトに短距離走で勝ちたい」と言っているように感じます。
マラソンにはマラソンの、短距離走には短距離走の走り方があります。
もし短距離ランナーとしてトレーニングを積んでもウサイン・ボルトに確実に勝てる方法はありません。
そんな状況で、マラソンランナーとしての走り方を変えずに、短距離走で勝利するのにはかなり厳しいのではないでしょうか?
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