オンセンリョコウ
「ネエネエ ハルクン!オンセンリョコウ ダッテ!」
カグヤが触手でパンフレットを持ち、ヒラヒラさせている。
「行きたいの?カグヤ」
「ウン!」
「そっか、カグヤはずっとカプセルの中でお仕事してるものね。行こうか、良い気晴らしになるといいね」
「ヤッタア!」
「でも、カグヤは大きいし、コードに繋がって歩けないね。どうやって連れて行こう…」
「ダイジョウブ!」
モニモニ… 細胞分裂で、カグヤの体から、片腕で抱えられるサイズの小さなカグヤが生まれた。
「コノ ワタシヲ、ツレテイッテ!」
「うん…?けど、それだと…」
「カエッテキタラ、マタ ヒトツニナッテ、チイサイワタシノ キオクヲ トリコムカラ… ソレマデ マッテル」
「そっか、じゃあ、楽しい思い出をいっぱい作ってきてあげるね。ちっちゃなカグヤ、おいで」
「ウン!」(また取り込まれるのは嫌だけど… ハル君と楽しい時間いっぱい過ごすんだ)
「イッテラッシャ~イ。オンセンニ ハイルトキハ、チャント コシニ タオルヲ マイテネ!」
そういうことに無頓着そうなハルにひとこと言い、触手をふりふり見送る。暗い部屋に一人残されるカグヤ。
「………」(やっぱり小さな私のことが羨ましい… ハル君が帰ってくるまで寂しいな…)
触手がからっぽの空間を掴むように、うにうにとうごめいた。
カグヤの移動方法を考えるために書いた文。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?