アイスとリリーのおはなし
リリーは青い血を持つ女の子。
重い病気を患い、死のふちにいたところを、青い血しか飲むことのできない吸血鬼、アイスに救われました。
アイスはリリーの体の時間を止めて、かりそめの不死を与え、森にある自分の城へ連れていきました。
二人は数年間そこで仲よく静かに暮らしていました。
ある日、城の前で倒れている少年をリリーが見つけ、城へ連れてきました。
アイスはすぐに彼がダンピールだと見抜きましたが、迎え入れました。
少年は、名をゴートといいました。
アイス達は彼に食事と寝床を与え、元気になるまで城に滞在させることにしました。
食事は、葡萄酒をグラスに一杯と、リリーが普段食べているジビエでした。
ゴートは美味しい料理と温かい寝床は初めてでした。
親切にしてくれる二人に、ゴートも徐々に心を開いていきます。
ある日、ゴートは意を決して二人に秘密を打ち明けました。
それは、アイスの友人キースが、珍しい血を持つリリーを手に入れる為、アイスを狩るようゴートに依頼したというものでした。
キースはとても執念深く、自分が退いたとしても、リリーはずっと狙われ続けるだろう、とゴートは言いました。
その夜、アイスはリリーに願い出ました。
それは、リリーがずっと待っていた言葉でした。
『僕と一緒になってくれ』
リリーは頷き、彼に首筋から血を吸われます。
止められていた時間は動きだし、リリーは美しい娘の姿の吸血鬼となりました。
偵察のコウモリが、キースの元へ戻っていきます。
キースは報告を聞いて落胆し、ゴートへの依頼を取り下げました。
コウモリから連絡を受け取ったゴートは、かあさまに怒られるだろうなあと苦笑いし、手を振りながら帰っていきました。
アイスとリリーは今でも仲良く暮らしています。
アイスは変わらずリリーから少しだけ血をもらい、リリーは森の獣の血をもらいます。
その獣は晩餐にのぼり、時にはゴートをもてなしたのでした。
~おしまい~