【就活講座】グローバル人材のマインドセット①「ありのままに現実をとらえる」
今回は、グローバルキャリア形成において、もっとも重要だと思われる考え方=マインドセットについて、国際共創塾の考え方を5回にわたって紹介する。
まず、なぜ「考え方」としたのか。実は、このような重要事項について「資質」や「素質」と表記している先行研究があるのは事実である。しかし、資質や素質としてしまうことに、わたしは抵抗感がある。例えば、グローバル人材になるには、かくかくしかじかの「素質」や「資質」が必要であると、上から目線でいわれたときに、あなたはどう思うであろうか。
少なくとも、いい気持ちはしないであろう。「素質」や「資質」がない「わたし」はグローバル人材になれないのかとか、きっと反感と絶望を感じることであろう。たとえ、「素質」や「資質」が自己啓発によって変えられるものだとしても、普通は、そのようにいわれた時点で、簡単には変えられない「天性の素質や資質」だと考えてしまう。
したがって、本稿では、「考え方」あるいは「マインドセット」という心構え的なものとして話をすすめたい。
■マインドセットその1: ありのままに現実をとらえる
今、国際共創塾で、すべての方にお伝えしているのが開発援助業界の構図、あるいは宇宙船地球号の国民国家体制の模式図である。ここでは、その詳細を説明することはできないが、そのときに伝えているのが、「世界は全然平等でもないし、いい人ばかりではない不平等で不合理なものである」というメッセージである。
開発コンサルタントは、わたしなりに一言でいれば、「国家元首からこじきまであらゆる階層の人にあって話して仕事をする」人である。海外には、映画やドラマで断片的に伝えられるよりはるかに不条理なひどいことが存在する。わたしも、そのような「現場」に好むと好まざるとかかわらざるをえないことがあった。
その悲惨な先進国のわれわれの想像を絶する場面に接した時に、憤りや社会正義をさけびたくなることは当然のこととしてある。スーパーパワーを持つヒーローとなって正義の鉄槌を下したくなることもあるだろう。確かに、政府の仕事をしていれば、開発コンサルタントに限らず、青年海外協力隊(現JICA協力隊)であっても、相手国の政府や現場の住民にとって、「スーパーパワー」であることは事実である。
しかし、わたしは、それはそれとして「ありのままに現実をとらえ」たうえで、自分に何ができるのか、今は何もできなくても、次にはどうしたらよいのかを考えるために一旦「引き取る」ことをみなさんにお勧めしている。
クールに熱くという言葉がある。緒方貞子さんの言葉だという若い人がいたが、わたしは信じない。実は、これは現場ではある意味当たり前の言葉であり、どこで誰から聞くのかのほうが重要であるからだ。本に書かれた言葉を引用しているだけでは、本当に身についたものとならない。
わたしは、ある国で政府の仕事で日本政府と相手国政府の交渉過程で考え方の違いによって、事業が硬直してしまった現場に調査団の業務調整団員として立ち会ったことがある。そのとき、隣国に別の仕事できていた営業部長の取締役が急遽、予定を変更して乗り込んできて、実に見事に問題を解決したことがあった。そのときに、ふたりで祝杯をあげたときに、その取締役から、「あたまがちんちんしていたら(仕事が)うまくいかないだろう。(あたまを指して)クールに(胸をさして)熱くだ」とビールを飲みながらジェスチャーをしながら語られたことを思い出す。
実は、この取締役は東京における直属の上司だったので、他の調査団員とは別に、ふたりでさしで、この一件の振り返りと祝杯をあげていたのだが、海外においては、いくら自分で騒いでバタバタしても「どうしようもない」ことが実に多い。
だからこそ、せめて自分の目の前の現実を「ありのままにとらえる」冷静さと、その経験を一過性のものとしてではなく、次に生かしていくだけのしぶとさというか執念が必要となってくるのである。
この項 了
初出:国際共創塾―ともにつくる未来 2020年4月27日
http://www.arukunakama.net/worldJinzai/2020/04/post-ce8e5b.html