お前の背中に刻む種⑯ 実は

夏休みが明け、高校生活が再び始まった。
男子トイレで、北嶋とふたりきになった。
「アルビン」北嶋が話しかけてきた。
「見たぞ」会館で、という意味だろう。
「気づいてたぞ」北嶋は目を剥いて言った。「実は」面白い顔だ。
私は言い返した。
「俺もだ。実は」

昼休みに弁当をG組で食べる生活が、戻ってきた。
喧嘩して気まずくなっていたのは瀧澤とだけだったし、それに北嶋ら元1年C組のメンバー以外との人間関係も既に出来上がってきていた。
そうこうしていくうちに、元々は馬が合ってつるんでいた仲だ。喧嘩口調なのも以前からのこと。瀧澤との関係も気づけば修復されていた。

この頃、小曾根が1週間ほど学校に来ない時期があった。
理由は誰も聞かされていなかった。
私がその理由を知る機会を得るのは、かなり後のごとになる。

もうじき二度目の文化祭が迫っていた。

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