東京テレポーテーション⑮ 伊妻が来た

競馬場の現場に、伊妻が来た。近藤が誘ったらしい。
伊妻は我々とは違い大学生となっていた。
大学では映研(映画研究会)に入ったという。伊妻が映画に関心があるとは知らなかった。
「『みんな~やってるか』観たか?」伊妻は聞いてきた。ビートたけし監督の映画だ。観ていない。そもそも私はこの頃、映画とは人並み以上に無縁であった。
「カーセックスしてぇ~で始まるんだよ」ニヤニヤしながら私に聞いてくる。
伊妻は童貞ではないのだろうか。
私は彼の男前とは言い難い顔面を眺めなら思った。

少なくとも、私には猛烈に好きでいてくれる人はいた。私はそう思って心をほんの僅かだけ慰めた。

警備員の仕事をする為には本来は研修が必要だった。
私も一応、研修を受けた。
研修と言っても、お爺さんの世間話を椅子に座って聞いていただけだったが…。
どうも伊妻は研修を受けていないようだ。いい加減な会社だな。兎に角若い人が少ないらしい。

アルバイトの帰りには、近藤たちとパチンコに行くこともあった。
パチンコはストレスの発散には多少はなった。ゲームセンターに入り浸っていた私は、ギャンブルへの嗜好が多少はあったのだろう。

私は、パチンコでも負けっぱなしだった。

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