クレーの天使
パウル・クレー展を年明けから愛知でやるらしい。関西でもやってくれよ、と思いながら行くか迷っている。
クレーは比較的、日本で人気のある近現代アーティストだと思う。どこかで欧米含めてこんなにクレー展をやってる国は珍しい、という文章を見たことがある。
クレーで特徴的なのはその色彩と幾何学的なパターンの組み合わせの作風で、抽象絵画の部類に入るのかなと思う。ここら辺はあんまり詳しくないから適当だけど。
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周りにクレー好きが多いのは、音楽をやっていたことと関係してるかもしれない。音を視覚化しようとした一連の作品を、いわゆる「ポリフォニー絵画」と本人が読んでいた。色彩もポップで、感覚的に理解しやすい、受け入れやすい、というのはある。
以前テート美術館展で、難解な近現代美術が並ぶ中カンディンスキーが出てきた時、友人と一緒に実家のような安心感を覚えたが、それとほぼ同じだとおもう。(何そのキショいエピソード)
クレーの晩年の作品に天使シリーズがある。おそらくクレーで1番有名な絵の一つがそれだ。
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クレーといえばこの天使、くらいには有名だ。簡素な線のみの絵で、どこか優しげででも寂しげな感じが、確かに日本人が好きそうではある。
このほかにも鈴のついた天使とか泣いている天使とかがいるが、どれもキャラクター的でかわいらしさがある。ミニキャラみたいな感じかもしれない。
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この絵の解釈が、私はあんまりわからないでいる。
制作当時の経緯(亡命後、亡くなる前に皮膚硬化症に悩まされながら描かれたもの)なんかは知識として知ってるけど、どう解釈するものなのかずっとわからず置いている。クレーはほかにも天使のモチーフを描いてるけど、それともまた少し違う感じはする。
昨日もなんとなくこの絵たちぼんやりと眺めてて、将来家に飾るならどれかななんて思った。忘れっぽい天使かなやっぱり。
そう思うのに、ちゃんとクレー研究を追ったことがないので、適当なことが言えないなと思うとなんか感想も言いにくくなってしまうのが悪い癖だ。勝手に消費することへの後ろめたさみたいなのがあることに気がついた。そんなのなんだって一緒なのに。
なんにせよいつか、自分なりの解釈をしたいなとも思っている。クレー展があるたびにそう思い出すので、今回もわざわざ愛知くんだりまで行くかを迷っている。
どうせクレーの天使モチーフについては研究し尽くされてることだろうから、1冊くらい読んでみるかと思って邦人の書いた本を注文した。
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これが高かった。美術史書ってそんなに売れないから重版しないため、結果やたら古本屋で高音がついている。あるとき読みたい!と思ったら定価以上の値段で買うことのほうが多いから困る。
こういう時、平安神宮の近くのあの美術本屋や近くの古本屋を巡ればいい出会いに巡り会えるのかもしれないけど、残念ながら今そこまでの体力はない。
便利さ代、と思って定価の1.5倍で落札した。年末までに届くといいけど。積読しないようにしないと。
音楽という表現の世界から離れて久しいけど、たまにその経験が絵画とマッチする瞬間は嬉しくなったりする。あの時はずいぶん感覚でしかやっていなかったものだが、本当は絵画も音楽もきちんとした理論に裏打ちされた土台の上に成り立っている。今だったらまた世界が違って見えるのかもしれない。
またはじめようとは今は思わないけど、別のところでその感覚が広がっていくことが、ほんの少しのワクワクする。