小さなお店に灯かりが燈る日
歴史の幕が下りるその日に
たくさんの人の思い出が、ぎっしりと詰まったビルが、老朽化により取り壊されることになりました。
ビルの1階には、ゆっくりと穏やかに時間が流れる小さなお店がありました。
ぼくたちは、そのお店が大好きでした。
店主である友人が育児休暇にはいり、お店は変わっていましたが、歴代の店主とともに、素敵な空間はすんと時間を刻みつづけていました。
どんなお店になっても、ただその場所に存在してくれているだけで、心のよりどころになっていました。
ある日、初代店主の友人から、ビルの取り壊しまでの約5か月間、お店を営業してみないかと相談されました。
ぼくたちは二つ返事でひきうけることにしました。
2019年7月から11月までの短い時間でしたが、焼き菓子の販売と喫茶のお店を出張営業させていただきました。
日々、本当に充実した時間を過ごしました。
営業最終日には、お店で出会った素晴らしい時間と人たちに感謝を込めて、小冊子を作成しました。
用意した小冊子をお渡しできたらいいのですが。
お渡しできない方や、はじめましての方にも読んでいただきたく、noteにて一部を掲載しておきます。(一部変更あります)
お時間良ければ、おつきあいください。
小さなお店に灯かりが燈る日
いしごはんが、神崎郡市川町の工房で、産声をあげたころ。
姫路市にある小さなお店が、ゆっくりと終わりの準備に入っていた。なくなってしまうのは寂しいねと、よく二人で話をしていた。
ある日、小さなお店の初代店主である友人から、最後にお店を使ってくれないかと声をかけていただいた。わたしたちの思い出がつまった場所。歴代の店主の汗と涙がつまった場所。時間が思い出になる前に、わたしたちにできることはないか。
わたしたちは、もう一度、小さなお店に灯かりを燈すことにした。
急ピッチで、準備をした。必死だった。産まれたばかりの子をおんぶしながら、ヨチヨチ歩きの子が転ばないように、ずっと気を張っているような感覚だった。とても疲れたが、とても楽しかった。
たくさんの時間がたくさんの人と共に動き始めた。一度止まった時間が再び動き出して喜ぶ人。新しい時間と出会って手をつないで帰っていく人。止まった時間に色を重ねて懐かしむ人。色んな時間や人と触れあいながら、わたしたちも、とても楽しく過ごすことができた。
そして。
すべての時間が、すこしずつ思い出になっていった。
暑すぎる夏がすぎて、短すぎる秋に手を振った。冬将軍が家を出る前に、小さなお店の灯かりが消える日になった。どうやら終わりの日は、遠慮というものを知らないらしい。
寂しい気持ちをぬぐうことはできない。でも、小さなお店で過ごした時間が、これからもずっと、未来を燈してくれているはずである。いつかくる明日や明後日が、いつもある今日の続きであるように。
小さなお店の灯かりが消えた後
2019年11月30日。
小さなお店での最後の営業でした。
次の日から、荷物の運び出しがはじまりました。
あっという間にがらんとしてしまった空間は、色のない時間が流れているようでした。
ぼくたちは、市川町の工房で、週に一度の焼き菓子の販売と喫茶営業を続けながら、イベントに出店したり、新しい出張先での活動をはじめています。
あの日あの時の時間は戻ってこないけれど、あの日あの時の時間がこれからも、ぼくたちを支えていってくれると信じています。
目を閉じて。
小さなお店の灯かりを感じるとき。
新しい永遠が。
そこからはじまる。
ARIGATO.
※小冊子の在庫があと数冊ございます。興味が方がいらっしゃいましたら、営業日やイベント出店時にお渡ししますので、気軽に声をかけてください。
→在庫がなくなりました。ありがとうございました。
※営業日等の詳細は、ホームページやインスタグラムでご確認ください。
□いしごはん□
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@arudenaidee(アルデナイデ農園いしごはんヒゲ担当よこはたほくと)