見る予定は無かった「竜とそばかすの姫」
何を隠そう
オールタイムベストであり、ランニングタイムの都合上
最も通しで繰り返し見ている映画である
「ぼくらのウォーゲーム」がとてつもなく大好きが故に
どうしても劣化コピーというか、原液を薄めた形になっている
「サマーウォーズ」以降
どんどんポスト宮崎駿になろうと、なるように押し上げられていく様が
どこか無理をしているが故の歪さや
補助輪外したは良いものの、助けを固辞(奥寺さんに限らず)して血みどろになりながらも進まない自転車…
といったような痛々しさから見てられず、もう試しに見てみるか。というような気にもさせないまで心離れていたのですが
今回、知り合いで映画を見る流れで「竜とそばかすの姫」が選ばれてしまい、これも何かの縁かと
出来るだけバイアスを抑えて、ウォーゲーム級とはいかずとも期待したんですが…
問題は細田守の幼稚性
とにかくテーマばかりせっついて、ルサンチマンや自分の暗い感情を
肯定して昇華出来てるの?まだ乗り越えられてないんじゃない?
というようなものが特に「バケモノの子」辺りから今回の「竜とそばかすの姫」まで臆面もなく溢れているだけに留まらず
それを補強するような細田守自身がカンヌでのインタビューで
「日本社会で若い女性がいかに見くびられまともに受け止めてもらえないか、日本のアニメを見るだけで分かります。日本アニメでは若い女性がよく神聖視されますが、現実の彼女たちとは全く関係がなく、腹立たしい限り」
「若い女性を常にヒロインにするアニメ界の巨匠がいます。率直に言うと、彼がそれをするのは、男として自分に自信がないからなのだと私は思っています。若い女性への崇拝は私をいらつかさせ、それに関わりたいとも思いません」
こんなことを臆面もなく言うほどに、もう抑えきれなくなってしまっている部分からして
いかに細田守という人間が、宮崎駿ファンからアンチとなったか。ということを如実に語っている。
そんな人間が
SNSに蔓延する悪辣な意見、過去のトラウマ、繋がりからくる強さ、他者への共感と救済。
それらを描いても、本人がそこを本当に信じているのか?
”良き事”として着地させているだけ、胃の腑に落ちてないんじゃないの?
あからさますぎて、あからさまですよ。って効果にもなっていない「ディズニー引用」ってもしかして当てつけ!?とか
いつもなら「まさか違うと思いますが」みたいな予防線を張るんですが
十中八九それなんだろうな…と思わざるを得ない細田守の”作家性”が溢れていて
ガキじゃないんだから…..
テーマや脚本について
当時?話題になっていた、主人公が野獣の正体の元に単身、周囲の大人たちが未成年を一人、異常な大人の元へ送り出すことへの違和感というか飲み込みづらさは
それ以前に核となる
主人公が野獣に惹かれる理由と、母へのトラウマ、野獣の真実
この三つが本来背骨として繋がっていなければ、主人公の成長物語として機能していないせいで、主人公や周囲の人間の判断の是非を問う土台に上がれていないし
そもそも主人公が現実では歌えない、父と会話できない一連の
”発すること”に関することと
母が川に飲み込まれるシーンが絡んでいないのも本当に脚本が不細工だし
さらに言えばSNSでの”発すること”との対比にもなっていないのは致命的
延々と厭味ったらしく描写されるSNSの誹謗中傷も
そりゃこれまで何年もかかって、何作も作ってそれでもまだ宮崎駿への怒りを抑え込めない、昇華できないような人が
SNSに触れれば、そういった暗い部分ばかりしか見えないだろうし
最後に純真なものを目の前にすれば掌を返すだけの奴ら。というような描き方しかできないのも頷ける…
掌を返して、みんなが肯定的、ポジティブな共鳴をするシーンもやはり
「ぼくらのウォーゲーム」では言葉通り”一体に”なって奇跡さえ起こすまでの力強さに溢れていたけど
既に憎しみに囚われて、脚本も覚束なくなってしまった細田守には
そこまでの力強さや心震わす波及と肯定は描けなくなってしまったのだろうか….
SNSや掲示板に限らず、世界の声ってもっと他愛ないことや、ポジティブな自己アピール、関わり合いに溢れてますよ細田さん…
あれで現代の病理を描けてるとは微塵も思えないし、それに対して良い面も悪い面もある。というフェアさもなければ
そこにいくらでも自己批評性を込めることもしない。
野獣の正体関して
あそこまでのネグレクトを受けている子の深層心理的なものが野獣…っていうのもなんだか整合性とは言わないけど、真剣にネグレクトについて思い悩んで作ってるのかと言われると…
あれだけ異常で暴力的な男がひるむだけの説得力が積み重ねられていないし
顔を見合わせ、その利他性や献身や共感によって父親の精神が崩壊するようなそんな神めいた….あれ…神聖?…
そんなこと言ってる人がいたような….
「日本アニメでは若い女性がよく神聖視されますが、現実の彼女たちとは全く関係がなく、腹立たしい限り」
栄光を汚した
自警団的なあの集団とスポンサー。あれの画一的な描き方も本当にしょうもないんだけど
野獣が現れるシーンでの球体状の舞台に鉄筋が縦に浮いているところは、もちろん「ぼくらのウォーゲーム」のセルフパロディで、それ時代はファンとしてくすぐられるけど
自警団のリーダーが片手に装備しているキャノンを撃つシーンのカットの切り替えも もちろんあのシーン
あのさぁ….自分の一番良かった作品のシーンを
しょうもない、いわば悪役キャラクターにセルフパロディさせて何がしたいの?
意固地なのか、出来てると思い込んでるのかわかんないけど
吉田玲子脚本、泊社長の鶴の一声、いろんな東映アニメーションスタッフの集合知で生まれた
「ぼくらのウォーゲーム」って決して細田守単独で傑作になったわけじゃないんで
それを一人で、それも愛のない、ただの底の浅いセルフパロディで汚すのは本当にやめて欲しかったし
だから見たくなかったんですよ…
ライムスター宇多丸の批評も、細田守作品となると
どういうわけか否定派に対して異様に攻撃的、排他的になったり、これまでだったら憤慨してツッコみ入れるようなところも謎の理屈で問題ないことにしたりと論調の豹変っぷりが異様で怖いし…
ほんと、今後は細田守が大人になったという噂が流れてくるまでは出来るだけ、今度からは意識的に距離を置きたいと思います。
もうこりごりだよ~~~
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