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Confluenceの一部をSSoT化する取り組み
この記事はコインチェック株式会社のアドベントカレンダー10日目の記事です。
こんにちは。浦邊です。人事関連以外のブログを書くのは久しぶりですが、今回は Confluence の一部を SSoT 化する取り組みについて綴りたいと思います。どうぞお付き合いください。
■ 記事の概要
SSoT 化は大まかに 4 段階のマイルストーンを刻んでおり、今回の記事では前半部分に焦点を当てています。
全社向けの周知事項の SSoT 化
SSoT 化を維持するためのルール設定
※今回の記事はここまでサービス側のドキュメントの SSoT 化
Confluence の全スペース再編成
■ 想定読者
情シス関連の方々
Confluence の検索機能に苦戦している方
社内の情報統制や整理を担当している方
■ SSoT とは
Single Source of Truth(SSoT)とは、組織内で使われるすべてのデータに対して「唯一の信頼できる情報源」を確立することを目指す考え方です。具体的には、あるひとつのデータが異なるシステムや部署間で使われるとき、そのデータが常に最新かつ正確で、どこからでも同じ情報が得られる状態を指します。組織が大きくなるほど、部門間の連携の複雑化やデータの多様化により、データの整合性を保つことが難しくなります。SSoT を軸としてすべての部門が共通の情報源を利用することで、組織全体のデータガバナンスを向上させ、正確なデータに基づく運営が可能となります。この仕組みは、迅速な意思決定や信頼性のある顧客体験を提供し、組織の競争優位性(Moat)を強化する基盤として機能すると考えます。
■ SSoT 化を目指す背景
コインチェック株式会社(以下、コインチェック)ではドキュメント管理システムとして Confluence を使用しており、組織内で重要な情報共有のプラットフォームとなっています。Confluence 内のページ総数は 59,530 件(2024 年 11 月 30 日現在)にも及びます。そして約 6 万件のページが組織ごとに作成したスペースに紐づいて、何階層にも積み重なった状態で運用されていました。この状態で以下の 4 つの問題がありました。
特定の情報にたどり着けない
検索しても該当するページが複数ヒットする
ドキュメントの内容が最新である保証がない
ドキュメントの管理者が分からない
なぜこのような状態になっていたのか?
上記の課題はコインチェックに限らず、多くの企業で発生しています。
会社の創業初期は、チームメンバーが数人しかいないため、会議やSlackを通じて全員に情報を提供することが容易で、組織運営も比較的単純です。しかし、企業が成長するにつれて、データ量や業務プロセスが増加し、物理的にも人的にも組織が大きくなります。これにより、情報の流れや管理が複雑化し、全体像を把握することが困難になります。さらに、各部署が異なる思想で情報管理を行うことでサイロ化が進み、全体の情報共有がより一層困難になります。
■ 具体的になにをしたか
約 6 万ページのドキュメント群を、他の複数ツールや過去の制約を考慮しながら、ビッグバンアプローチで SSoT 化させるのは現実的ではありません。そのため、現時点で具体的な課題が明確で、工数が小さく効果が大きいことから着手しました。具体的には、各部署から全社に周知している社内規程、人事制度、オフィスや IT 環境の使い方などを 1 つのスペースに集約し、そのスペース内だけは SSoT を守るルール運用を始めました。全社員に関係するストック情報を 1 つのスペースに集約することで、管理監督がしやすく、小さく始めたことの効果検証をすぐに行え、後戻りもしやすいため、この方法を選択したことは結果論としても正解であったと感じます。
ページ集約の方法は、各部と連携して1ヶ月かけて地道に移行をしました。
すごい大変でした…
■ どのようなルールを設けたか?
SSoT 化させるスペースでは読み手重視になることを意識し、以下の内容を Readme に定めています。※ルールの詳細は省きます。
1)本スペースの目的
2)本スペースで取り扱う情報・取り扱わない情報
3)ドキュメント管理部門の明記
4)ディレクトリ構造の制限
5)Google ドキュメント・スライドの添付のみは禁止
これから反映させて検証する予定のルール
6)読み手重視のドキュメント構成
7)ページツリーの挿入
8)オブジェクトを指し示す URL は 1 つ
9)レビューを受けた内容を公開する
なぜ読み手重視か?
少人数のスタートアップでない限り、読み手が信頼でき理解しやすいドキュメントがあることによって、以下の数式が成り立ちます。
ドキュメントを読むのにかかる時間×読み手の人数 > ドキュメント作成に係る時間×書き手の人数
特に何度も読み返されるストック情報は、読み手の人数が計り知れないため、正確性、網羅性、読みやすさなどの品質を確保することが大切です。分かりにくいドキュメントは、むしろ読み手を混乱させ、読む前よりも読む後の方が知りたい対象について解像度が下がりかねないため、読み手重視である必要性を強く打ち出していきます。
■ 実際の効果はどの程度か
2024年9月1日からConfuluence の様々な情報を取得するようになったため、測定期間不足の参考程度の数字になりますが、月間検索回数が集約前の73%にまで削減することできました。
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オウケイウェイヴ総研が実施した『社内業務に関する調査(2019年4月)』において、一般的な会社員は1日に平均1.6時間、年間にすると384時間を「調べもの」に割いているそうです。
全ての調べものをConfuluence 内でしているわけではないですが、本プロジェクトの取り組みで年間数十時間は調べものをする時間を削減できたと考えています。
■ 参考にした書籍
本件を進めるための知識を有していたわけではなかったため、多くの本を読み漁りました。その中で特に参考になったのは以下の 3 冊です。
[GitLabに学ぶ 世界最先端のリモート組織のつくりかた ドキュメントの活用でオフィスなしでも最大の成果を出すグローバル企業のしくみ]
本件を始動する際に一番初めに読んだ本です。リモートでの組織運営について肉厚にまとめられた本で、リモートだからこそ、非同期でも伝わるドキュメント設計を思想レベルから解説しています。
[情報アーキテクチャ 第4版]
ディレクトリ構造の最適解を考える際に読みました。情報アーキテクチャの基本原則から実際のプロジェクトへの応用までを包括的に解説しており、多くの情報を見つけやすくし、効率的に活用するための理論や方法が記載されています。
[「超」整理法:情報検索と発想の新システム]
情報整理のアンチパターンを探していて出会った本です。時間を節約しつつ、ストレスなく情報を管理する方法を解説しています。検索性やシンプルさを優先する発想が多く、整理は分類することだと考えていた僕には学びが多い本でした。
■今後
確実にこのスペース内の情報が最新であると断言できるようになりましたので、次は作成したスペースと連携した RAG(Retrieval-Augmented Generation)を構築し、Slack で精緻な回答を受けとるbotを作成したいと思います。
■ 最後に
今回は大きいプロジェクトの一部をブログにさせていただきました。
後半戦の内容もいずれブログにしたいと思います。
今回はお付き合いいただきありがとうございました。
明日は津布久さんが素敵なブログを公開してくれます。楽しみにしてください!
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