【統合と解釈の全体文】【大腿骨頸部転子部骨折】【雛形】
整形分野における臨床実習で最も担当することが多い大腿骨頸部・転子部骨折についての統合と解釈の一例です。統合と解釈,考察についての記事は以下を参照頂き全体像を理解した上で実際の症例を診ていくと理解力が向上するかと思います。
改めて,統合と解釈についての私の定義は,「退院計画を達成するために初期評価から治療プログラムを立案するまでの思考過程」です.
①情報収集,
②理学療法初期評価,
③予後予測,
④目標設定,
⑤問題点の抽出,
⑥治療プログラムの立案,
①〜⑥の手順での思考を,常に螺旋階段を登っていくように何度も行ったり来たりしながら考えていきます。実際の臨床場面でもこの順番の過程で思考し,何をするかを決めます。レジュメやレポートを作成するにあたり重要なことは,この思考過程を文章化し,自身の思考の曖昧さや矛盾をメタ認知することだと考えています。
さて,統合と解釈を文章化する際の注意点は,
・「因果関係を述べない」
・「記述レベルを揃える」
・「ごちゃ混ぜにしない」
ことです。
今回は大腿骨頚部骨折を例に記載します。運動器疾患のうち,外傷性疾患について考えをまとめていくにはいくつかのポイントがあります。
①受傷起点と受傷前ADL・基本動作能力と,認知機能
②家族構成や介護力,社会背景
③手術侵襲と手術の内容の理解
④創傷治癒を中心とした軟部組織の生理学・術後回復についての理解
⑤術後リハビリテーションの経過
以上のことをポイントにして,統合と解釈の文章を書き進めていきます。外傷性疾患については,創傷治癒,軟部組織の炎症所見からの回復,疼痛に関する理解の3点が必要であると考えますので,そこをしっかりと押さえた知識と診療・評価を行い文章にできるようになると良いと思います。
ちなみに,余談ですが,THAやTKAを予定手術にて行う場合,機能や動作能力,ADL能力は少なくとも維持,基本的には向上することを目標として行いますので退院時や退院後3〜6ヶ月時点で立案されている目標は,外傷性疾患である大腿骨骨折とは異なる考え方で思考されなければならないことも覚えておいてください。
統合と解釈の文章:予後予測と目標設定
本症例は,元々買い物まで自身で行われ,独居生活を送られていた○歳の女性である。○月○日の台風の際,雨戸を閉めようとして強風により転倒受傷となった。本人の主訴は痛みが強い,希望は入院前と同じ生活を送りたい,娘さまの希望は本人の希望を叶えたいだった。
本症例は術後翌日の時点で認知機能は良好であり,また自宅も生活に支障をきたすようなバリアもないことから,入院前の生活を送ることは可能であると考えられた。しかし,十分なリハビリテーションを送る必要があることから,回復期リハビリテーション病院への転院を経て自宅への退院を目指す方が望ましいと考えられた。
例えば,本症例の場合,認知機能は良好で,入院前の生活遂行能力も高かったことを考えると,退院計画は楽になります。ここで例えば年齢が80代になると少し慎重に考える必要がある場合が多いですし,70代前半だと楽勝だな!と考えることができると思います。
では,やや認知機能が低下している症例だとどうなるか?恐らく臨床実習で担当する症例は下記のケースのような場合が多いかと思います。
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