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#同じテーマで小説を書こう 悪夢の休日

「くそ、、、、酷い頭痛だな。」

酷い二日酔いだった。
男は重い身体を引きずるようにベッドから這い出し辺りを見廻す。

自分の部屋ではなかった。
昨日の晩、BARで隣に座っていた女の部屋だろうか。
それにしてもこの酷い頭痛はなんなんだ。
それほど飲んだつもりもないんだが、、、

そこでふと思いつく。

話しかけてきたのは女の方からだった。
二言三言の会話のあと、「少し、聞いてもらってもいいかしら。良ければ一杯ご馳走するわ。」

快諾した男の前に、カクテルが差し出された。

『エル・ディアブロ』

カシスの赤が毒々しい血の色を連想させる。

「乾杯」

そう言って、口をつけたその後の記憶がまるでなかった。

なにかがおかしい。

今まで、酒を飲んで記憶を失くすことなど一切なかった。ましてや、多くの量を飲んだ訳でもない。

ぼんやり考えていると、男の右手側から昨日の女だと思われる声が聞こえてきた。
キッチンだろうか。

「シュピナートヌィ・サラー、、、、、、、、」

何を言っているのか聞き取れなかった男は耳をすませてその声に集中した。

「シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム」

今度ははっきりと聞き取れた。
しかし、どこの国の言葉だろう。今までに聞いたことのない言葉だった。
少なくとも、女は日本人だった。はずだ。
呪文のように繰り返される言葉に畏れを覚えた男は
その声に向かって動き出した。

引き戸を開けた途端、甘ったるい、むせ返るような匂いに吐き気を覚える。

女は大きな鍋を火にかけ、ぐるぐるとかき混ぜながら「シュピナートヌィ、、、、、、、、シュピナートヌィ、、、、、」
何度も何度も繰り返し唱えていた。

突然振り向いた女は男に向かって

「シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム!!」力強く言い放った。

男は身体の力が入らなくなり、その場に崩れ落ちてしまった。

包丁を握った女が男に近づく。

声にならない悲鳴を上げた男の目に入ったのは
血にまみれた包丁に映る自分の姿だった。

                            

                             🍸🍸🍸🍸🍸






「........てよ。ねえ、起きてよ!」

その声に目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。

「昨日すっごく酔って帰ってきたから、これ作ったんだから!」

「えーと、なんとか、ス・ヨーグルタムとかいうやつなんだけど二日酔いに効くらしいから。」

夢でよかったと安堵する男の目の前には
トマトや鶏肉をヨーグルトで和えた、可愛らしい

シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム

なるものが置かれていた。


「早く食べて、一緒に映画観よっ!」















キッチンには火にかけられた大きな鍋と、

赤く染まった包丁が置いてある。

(了)

飛び入りで参加させていただきました。

シュピナートヌィ・サラート・ス・ヨーグルタム

めちゃくちゃ難しいお題でした、、、、

シュピ、、、、

舌、噛むわ、、、、