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風花

彼女はいつも海を眺めていた。
毎日同じ場所で。


私は人混みが苦手だったから、この、夏が終わって
冬が始まる前の海がとても好きだった。

彼女はいつも海を眺めていた。
毎日同じ場所で。

とても不思議な感じがした。
彼女はおばあさんのようにも見えたし、
少女のようでもあった。

いつもだったら絶対に他人に話しかけることなんてないのに。
何故か、彼女のことがとても気になって。

「あの、いつもここから眺めてますよね。海。」

どうしてだろう?

いつもだったら絶対しないのに。

「あなたもね。これ、よかったら。」

彼女はそう言って、右のポッケから飴玉を私に差し出した。

「ありがとうございます。いただきますね。」

いちごミルク。

とても懐かしくって、とてもやわらかい味がした。


そのまましばらく、二人黙ったまま海を眺めた。



それから、彼女と話すことは私のルーティンになった。


「おはようございます。」

名前も知らないけれど。

「おはよう。」

彼女はなんだか、暖かくて。



「その写真の方って、大切な人なんですか?」

失礼なこと言っちゃったかな。


それでも彼女は言ってくれた。

「彼ね、初めてトモダチになってくれた人なのよ。」

「なんだか、とても素敵だなぁ。」

「そうね。素敵な人だった。」


きっと、綺麗な思い出なんだろうなぁ。

私もそんな人と出会えるかな?

なんて考えていたら。



びゅう。

強い風が吹いた。



「あ、雪。」

そう言う彼女のコトバに空を見上げる。

「ホントだ。雪。ですね。」

風がやんだ空には
季節外れの雪が舞っていた。

手のひらで掬ってみる。

冷たいと感じることなく溶けていく儚さが

私に勇気をくれた。








思い切って言ってみよう。



「あの、私とトモダチになってもらえませんか?」







追記

五輪さん、ありがとうございました。
正直、泣いちゃいました。
なんだか、とても感動して、胸がいっぱいになって。
改札の向こう
その何年も後を想像して書いてみました。

エイエンノコイ。


たまには真面目になって書いてみようかな。

そんな風に思いました。

ありがとうございました。

五輪さん。