Apple. Disney. iUで働く。チャンスを引き寄せるマインドセットとは?
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(インタビュー2021年5月)
皆さんはどんな働き方に憧れますか?エンジニアや医師になりたいと思ったり、今の大人とは違う働き方を探したい人もいるかもしれません。
でも、どこで何をしていても通用する、
「チャンスを引き寄せるマインドセット、キャリアチェンジしても結果を出すこと」はとても重要です。
大学教授以外にも様々なジョブをこなしている阿部川教授にインタビューしました!
この記事は8分ぐらいで読めます。
阿部川久広(Hisahiro Go Abekawa)教授プロフィール
"Go"が気になった方、文中のどこかに答えがあります。探してみてください!
情報経営イノベーション専門職大学(iU)教授、ITmedia Inc.シニアバイスプレジデント グローバルビジネス戦略担当、インタビュアー、神戸大学経営学部非常勤講師、立教大学大学院MBAコース非常勤講師、フェローアカデミー翻訳学校講師。英語やコミュニケーション、プレゼンテーションのトレーナーとして講座や講演を行うほか、作家、翻訳家としても活躍中。
現在にいたるまでの経歴としては、外資系PR企業に入社しNTT、FedEx、AppleなどのクライアントをPRコンサルタントとして担当、その後Apple、Disneyでマーケティング業務に携わる。大学在学時より通訳、翻訳も行い、会社員をしながらCNNニュースキャスターを2年間務めた。
阿部川さんの1日や過去から今までどのように繋がって来たのか伺いました!
阿部川さんの1日
阿部川さんの過去〜原点に立ち返る〜
小学校:わんぱく坊主で生傷が絶えない子供でした。祖父が阿部川組という建築会社の社長で、初孫だったこともあり、大事にされました。一人っ子でしたが親戚が沢山いて、そのうちの一人(当時15歳)がグループサウンズにはまっていたので、楽器に興味を持ちました。会社の工場にギター、ベース、ドラム、ピアノが置いてあり、バンド練習に励みました。勉強はあまりせず運動と音楽の小学時代でした。
中学校:変わらず運動と音楽ばかりでした。
中学から剣道に力をいれて、英語に興味を持ちビートルズにハマりました。
興味から色々と本を読みだし、勉強するようになっていきました。家の仕事の都合で転校もしました。
高校:秋田の工業高等専門学校に進学しました。土木工学について学び、いつか阿部川組の三代目になるだろうと思っていましたが、高校に入る前に父が事故で亡くなり、母も2年後に亡くなり、その頃会社の経営がうまくいかなくなり、業務縮小して事実上倒産しました。継ぐ家業がなくなり、どうしようかと考えた時、「果たして自分は本当に建築がしたいのか」と自問自答し高専を中退して、親戚に頼み込んで大学へ行かせてもらいました。
大学では何をしたの?
大学というと東大ぐらいしか知らず、特別な受験勉強もせず現役の時に東大を受けて落ちました。進学先は、法政大学文学部で英米文学科を専攻しました。
図書館に入り浸り大量の読書をこなし、友達と飲みにいって哲学とは何かを議論し合う、一生懸命学びつつ楽しい大学生活を送っていました。
当時、アメリカでSteve JobsとStephen Wozniakが、最初のMacintoshを売り出した様子から、「今後コンピュータの時代がくる!」と思いました。
大学生活を軽くまとめると、文学・ビジネス・コンピュータ・リベラルアーツの4分野を必死に勉強しながら、たまに息抜きにドラムを叩く、という感じです。
阿部川さんがたくさん読んでいた本:
アメリカ・イギリス文学の代表作は全て、会社経営のビジネス書、リベラルアーツは哲学や論理の本を主に読んでいました。実は、言語学と数学は切っても切り離せません。言語の特徴などの解析はコンピュータでやりますし、数学的思考が必要とされます。
なぜ文学を専攻したの?
家族の影響です。皆、よく本を読む人たちでした。本を読むことを、ごく自然なこととして受け入れていました。
言語に興味を持ったのは、中学の国語や英語の先生が素晴らしくて、授業で扱った本を図書館で読み漁りました。それが習慣づいて、読書を積み重ねるようになりました。
大学卒業後の就職はどう選んだの?
当時は起業すると失敗する、失敗すると夜逃げ、借金に追われるというイメージがあったので起業するというと全世界に反対されるような気がしました。
しかし、自分は天邪鬼で人の正反対をいく性格なので、みんなが大きな安定した会社に就職するというと、「自分は違う方向へ」という思いが強くなりました。
大学院に行ったり、研究職に就くことも考えましたが、文学では稼げないと聞いていたので、結局諦めました。正直、就職しようと思った時に何をするか全くわかっていませんでした。
しかし、「こんな仕事は嫌だ」というものは明確にわかっていました。配布されたリクルートブックを見ながら、向かないと思う業界、職種に斜線を引いていきました。例えば、銀行、証券会社など金融系は向かないと思っていましたし、営業して売ることも無理だと思っていました。
マーケティングとセールスの違い
マーケティング (Marketing) のゴールはeliminating the sales (セールスをなくすこと) です。セールス (sales) は、人に働きかけて商品を買ってもらいますが、マーケティングは人に「この商品を是非買わせてください」と言わせることです。よく、Marketing & Sales などとひとくくりにされていますが、反対の意味があります。しかし、マーケティングの上にセールスをやるコンビネーションは最強です。
順番に消して行った結果、テレビ局、出版や広告といった業界が残ったので、そこで採用面接を受けました。NHK、TBSなどの採用通知をもらいましたが、それを蹴って別の会社にいきました!
外資系PR会社、Shandwickに入社しPRコンサルタントになりました。
PRのお仕事って?
一番最初の大きなクライアントはNTT (Nippon Telegraph and Telephone) の国際調達部門でした。当時、電電公社が民営化されNTTとなり、海外から商品や部品を買うための研究・市場を広げるお手伝いをしました。
具体的には、NTTの国際調達活動を海外の記者に知らせたり(プレリリリースや記者会見、イベントの実施など)、欧米政府高官へのロビーイング活動を通じて、NTTが世界中からオープンに調達をしていることアピールをしたり、世界各国を飛び回っていました。
次はFedExが日本市場に参入するマーケティングのお手伝いをしました。その後、日本に来て2、3年後のAppleがクライアントとなりました。
大学の専攻は役に立った?
米英文学が直接、仕事に役立つことはなかったですが、仕事の後、取引先の人と飲みに行った時、自分の得意分野の本や音楽の話に持っていって、興味を持ってもらうことに集中しました。
また、「得意なことの話ならできるのに、仕事の話ができないのは意味がない」と感じて、必死で勉強しました。
AppleやDisneyへの転職エピソードは?
Apple、DisneyはPRコンサルタントで担当したお客さんでした。「一緒に仕事しないか?」と誘われました。Appleでは新サービスを売りだすためのマーケティングの仕組みを作り、Mac Worldの開催企画に関わったのもその一環です。
Disney Interactive のマーケティングをしないか、とオファーが来たのもラッキーが積み重なった結果です。Educainment (Education + Entertainment) という新しい分野を作ろう!と言われて入りました。デジタルを通して0から新しいものを作っていったので、Apple、Disneyでやっていたことは変わらないと思います。
Appleにいたからこそ、ソフトウェア、ハードウェア、ITの仕事に現場で関わることができましたし、Disneyでは後にPixarとなる映画関係の人とも仕事ができました。その2社でとても貴重な経験をさせてもらえたことに感謝しています。
なぜたくさんの人に誘われるのだろう?
今、目の前の仕事を一生懸命やって結果を出していると、「こいつはすごいな」と誰かが見てくれています。自分も、周りの人に気付いていなかった自分の強みを見い出してもらって、ここまで来ました。運も味方してくれラッキーな出来事が繋がった結果だと思います。
もし誘われていなかったら?
きっと起業していました。PRコンサルタントは、アドバイスはできても最後、結果を出すのはその会社の人たちです。きっとそれをもどかしく思って自分から起業していたと思います。
サンマイクロシステムズ創業者
スコット・マクネリーさんとのインタビューの様子
なぜCNNニュースキャスターになったの?
成り行きでなぜかなっていました。笑
大学時代からバイトをしていた通訳翻訳会社に名前だけ置いていました。サラリーマンをしながら、依頼があれば翻訳していました。今でいう「副業」です。
依頼されたニュース原稿の翻訳を渡して終わるはずでした。が、なぜか会いたいと言われ、指定場所にいくと撮影スタジオでした。
何が何だかわからないまま、言われるがままに座って、日本語と英語で原稿を読んで、コメントしました。その後「来週の土曜日、朝3時からこれる?」と言われてAppleの仕事とキャスターの2足のわらじを履くことになりました。笑。
それからはものすごく忙しかったです。月〜金はAppleの社員、土曜朝2:30に迎えに来てもらって、3時にスタジオに入って、翻訳やチェック作業、6時半からOn Airという生活でした。
面白かったのは、CNNのニュースキャスターとしてAppleメンバーをインタビューする機会があったことです。AppleのCEO、ジョンスカリーをインタビューしたこともあります。
25年前、Appleの記者会見で。中央がスカリー氏、右が阿部川さんです。
阿部川さんのターニングポイント
超多忙かつ不健康な生活で、体を壊して入院しました。このままだと死ぬぞと医師に言われました。最年少で部長になった当時はチームで成長することより「俺が」という意識が強かったかもしれません。
上司に新しい仕事を指示されたとき、彼に突っかかったことがあります。「仕事が多すぎて、忙しすぎて、もう新しい仕事はもう無理です!」と言ったら、「よし、お前が抱えている仕事を全部書き出せ」、「お前がやらなくてよい仕事を消してやる」と言われました。
当時、人に頼むより自分の方が早く出来る、正確にできる、と自惚れて「自分にしかできないと思っている仕事」を巻き取ってどんどん増やしていました。
「一体マネージメントとは何か?」と30代後半に考え始め、ここでも知識を増やし、ドラッガーから学ぶなど一生懸命勉強しました。
今の阿部川さんが考える、マネージメントとは?
「これをやりたい、これが好き」という想いに勝るものはありません。その原動力、モチベージョションに見合うスキル、お金・予算、支援を与えて、あとは当事者たちに任せることにしています。
スキルも自分のモチベーションに見合えば自信もつきます。総合的にモチベーションを高めるのが上司の仕事だと思います。
後は、内心ヒヤヒヤしていても、部下には「なんとかなる!」とどっしり構えていることです。
iUで教える際にも、生徒に何かを任せたら手を出さず、失敗から学べるように見守るようにしています。ですが、その失敗がリカバリーできる範囲、いわば回復する傷で済むようにするのは難しいです。ついつい口を出しすぎてしまって、その線引きに悩んでいます。
なぜiUの講師になろうと思ったんですか?
iUに来る前も、今も「先生になりたい」と思ったことはありません。周りの人は、「私には"先生"がピッタリ」と言ってくださいますが、自分自身はしっくり来ていません。しかし、周りの人が私も知らなかった才能を引き出してくれた、周りの人が私の先生魂を発掘してくれたんだと思っています。
講義やインタビューの前はどんなことを考えているの?
人の前に立つときはいつでも「自分のためのでっかいコンサートが始まる」と思うようにしています。
最高のパフォーマンスをお客さんに届けることを意識して、ドラムを叩きに舞台に上がるような感じです。
自分の舞台で「今日も盛大にかますぞ!」と思って出て行くとうまくいきます。
誘われたことを断ったことはありますか?
基本、ないです。正直、自分は今まで自分のキャリアパスについて考えたことがありません。誘われたチャンスには乗り、頼まれた仕事は誰よりも懸命にやりました。野球で言えば、投げられたボールを打ち返すことを必ずやっていました。
良くも悪くも、自分の能力を評価してくれるのは周りの人です。
周りの人が、自分に投げてくれるボール(チャンス)が、自分にあっているものかもしれません。その時々で一生懸命やっていると、次のチャンスにつながります。今やることを、誰よりを早く、うまく、結果を残すことを大事にしています。
阿部川さんの今とこれからのチャレンジ
1) データサイエンティストの勉強
2) 音楽、毎朝ドラムの練習と音楽理論の理解
3) チェロを弾けるようになりたい。
4) COVID-19のため今は好きなダイビングが出来ませんが、水泳やランニングで身体を鍛えています。
5) イタリア語・中国語・フランス語の勉強を始めました。
6) 最年長直木賞をとるので小説を書こうと思います。
中高生へのメッセージ
"今、やれることを一生懸命にやる”
失敗を恐れないでください。よく考えると、基本的に何をやっても失敗は存在しない、ということに気づきます。
とりあえず始める、全力でやる、うまく行かなければ方法を変える、冷却期間をおく、得意な人を巻き込んでみるなど取れる策を探しましょう。
親に心配をかけることを気にしている人もいるでしょう。生まれた瞬間から、子供のことを心配するのは親の仕事です。親の心配は、失敗に入りませんよ。笑
”絶対諦めない”
諦めたら全部終わりですが、粘り続けて、時に休んでもよいので続けたら必ず前に進みます。その頑張りを影から見ている人もいます。
”本を読む”
本をたくさん読んでください。100万冊読んでください。漫画、小説だけでなく、映画、絵画を含めた作品から学べるものは無限大です。
まとめ
阿部川さんは、1つに決められないので、特定のモットーをわざと持たないようにしているとおっしゃっていました。私が今回のインタビューで、”今、やれることを全力でやる、継続すると途方も無いことができる”という教訓を得ました。もちろん、不安や怖い気持ちはあります。その場で、その瞬間、何事でも、誰よりも全力になることが大事なんだと学びました。
Goのヒミツ
阿部川さんがAbekawa "Go" Hisahiroと呼ばれているのは"Let's Go!" "Go for it!" といつも言っていたからだそうです。「この瞬間を全力で」という阿部川さんの姿勢が現れているんだと思います。
興味のある方はこちらもご覧ください
iUのホームページ:https://www.i-u.ac.jp
「海外」「AI」「エンジニアリング」「プログラミング」
これらのワードに興味がある方はこちらの連載もぜひチェックしてみてください。
https://www.atmarkit.co.jp/ait/kw/gogogo.html
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